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[G-P-4]Carbonate nodules in the Seto Formation of the Sagamiko Group in the Shimanto Belt distributed in the Sagamiko area, Kanagawa Prefecture, central Japan

*Kiyokazu KAWAJIRI1 (1. Sagamihara City Museum)
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Keywords:

Shimanto Belt,Sagamiko Group,Seto Formation,carbonate nodule,Kanagawa Prefecture

神奈川県北部に分布する四万十帯相模湖層群瀬戸層中からは石灰質ノジュールが(河尻,2012),また,相模川水系では「へそ石」と呼ばれる黒色ノジュール(球状コンクリーション)の転石が報告されている(濱松,2015,2017;河尻,2023).相模川水系の「へそ石」はいずれも転石としてのみ見つかっており,その産状は明らかとなっていない.演者は「へそ石」の産状を明らかにするために,神奈川県北西部相模湖地域において野外調査を行っているが,これまでに報告されたノジュールや「へそ石」とは異なる炭酸塩ノジュールを見出したので報告する.
炭酸塩ノジュールを見出したのは神奈川県北西部相模湖東岸と相模川支流の道志川下流で,いずれも相模湖層群瀬戸層の分布域である.この地域の相模湖層群瀬戸層は砂岩頁岩互層よりなるが,変形・変成作用により,破断砂岩頁岩互層や千枚岩となっている.今回見出した炭酸塩ノジュールを産状や形状からタイプA〜Dの4つに分類した.
タイプA:相模湖東岸の小さな沢の転石として1個だけ見つかった.この地域には破断砂岩頁岩互層が分布している.転石のため一部分しか残されておらず,全体の形状や産状は不明である.外形の曲率から推定すると紡錘形をしていたと考えられる.外形は30.0 cm × 16.5 cm × 14.5 cmである.外殻部と中心部からなり,外殻部は厚さ5 〜 7 cmである.中心部はスパーライト質および隠微晶質の炭酸塩鉱物,石英や斜長石などの砕屑粒子からなり,片理が発達している.外殻部は珪質頁岩で片理は発達していない
タイプB:道志川下流部右岸の破断砂岩頁岩互層中に1個だけ見つかった.露頭面(横断面)では径15.5 cm × 9.5 cmの楕円形を呈する.ほぼ垂直に立った層理面(片理面)に沿って鉛直方向に伸び,下方に向かって次第に細くなる.先端は確認できなかったが,少なくとも長さは21.5 cm以上で先の細くなった棒状をしていると考えられる.横断面で観察すると中心部から外縁部に向けて放射状の構造が見られる.外殻部と中心部からなるが,外殻部と中心部の境界は不規則な形状をしている.外殻部は厚さ0.3 〜 3.0 cmであるが,外殻部が薄くなり,ほとんど見られない部分もある.中心部はスパーライト質の炭酸塩鉱物からなり,放射状構造の方向に伸長している.石英や斜長石などの砕屑粒子を含む.外殻部は伸長したスパーライト質および隠微晶質の炭酸塩鉱物,珪質頁岩からなる.先端部に近い部分ではスパーライト質の炭酸塩鉱物,珪質頁岩,頁岩,石英脈が混在している.
タイプC:道志川下流部右岸の頁岩中に4個見つかった.露頭面(横断面)では径30 〜 60 cm × 12 〜 20 cmの楕円形を呈する.露頭面で破断されているが,残された部分から推定すると中央が膨らんだ円盤状をしていると考えられる.長軸ないし中間軸の方向は層理面に調和的である.端部は丸みを帯びている部分と尾のように細長く伸びている部分とがある.外殻部と中心部からなり,外殻部は厚さ0.3 〜 8.0 cmであるが,端部ほど厚くなる.中心部はスパーライト質および隠微晶質の炭酸塩鉱物からなり,石英や斜長石などの砕屑粒子を含むが,ほとんど砕屑粒子を含まない部分もある.片理が発達しており,片理に沿って頁岩の薄層を挟在する場合がある.外殻部は珪質頁岩からなる.尾状の部分は外殻部と中心部が不規則な形状となっている.
タイプD:道志川下流部左岸の破断砂岩頁岩互層中に2個見つかった.露頭面(横断面)では径40 〜 80 cm × 5 〜 6 cmで細長く伸びたレンズ状を呈し,層理面に調和的である.全体の形状は不明である.隠微晶質の炭酸塩鉱物からなり,石英,斜長石などの砕屑粒子を含む.片理が発達している.有孔虫などの炭酸塩鉱物からなる生物遺骸を含み,層理面に調和的な産状を示すことから炭酸塩岩の薄層と考えられる.同程度の層厚の砂岩と比べると連続性に乏しく,また,片理が発達していることから,元々レンズ状に堆積したものが変形作用によりさらに引き延ばされた可能性がある.
今回見つかった炭酸塩ノジュールは比較的狭い範囲から見つかっているが,これら4つのタイプのノジュールはそれぞれ異なる地点から産出している.このことから,これらの炭酸塩ノジュールの形成には,ごく局所的な環境が影響していた可能性がある.

濱松喜八郎, 2015. 神奈川地学 , no.80, 16-20.
濱松喜八郎, 2017. 神奈川地学, no.81, 35-40.
河尻清和, 2012. 神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学), no.14, 163-174.
河尻清和, 2023. 相模原市立博物館研究報告,no.31,25-28.

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