Presentation Information
[G-P-8]Study of weathering classification of weathered sandstone in the Shimanto belt,Okinawa-jima,Southwest Japan
*Seiji OSAJIMA1, Kohki YOSHIDA2, Tokia YAMAGUCHI3 (1. Graduate Scool of Medicine,Science and Technology,Shinshu University, 2. Faculty of Science,Shinshu University, 3. Graduate Scool of Science and Technology,Shinshu University)
Keywords:
Okinawa Island,Shimanto Belt,Nago Formation,Kunigami Mahji,rock weathering
はじめに
沖縄島の北部には,国頭マージと呼ばれる赤色から黄色を呈する風化土壌が分布する.国頭マージの母材は,国頭礫層と呼ばれる段丘堆積物のほか,砂岩,千枚岩,緑色岩等の基盤岩類など多岐にわたる.黒島ほか(1981)は国頭マージの赤色土を古土壌と位置づけ,その生成時期を0.38±0.03Maと推定している.国頭マージについては,赤土砂流出防止対策の見地からの工学的な研究は多数報告されているが,母材から赤色土が生成する過程についての理学的な研究は少ない.今回沖縄島北部において国頭マージの形成プロセスを探るために,母材のうち四万十帯相当層である名護層砂岩露頭を対象に風化の特徴を整理し,風化区分の作成を試みた.
地質概要
四万十帯は相当層も含めると、関東から南西諸島まで分布する付加体である.沖縄島の北部には,北帯に属する上部白亜系の名護層と南帯に属する古第三系の嘉陽層が分布している.名護層の分布や名称は研究者によって異なるものの(宮城ほか,2013),岩相は千枚岩,緑色岩,砂岩などからなる.名護層からは,堆積年代を示す化石の報告はないが,再結晶白雲母のK-Ar年代として,77.0~61.1Maおよび54.7~37.1Maの変成年代が報告されている(小島ほか,1999).この変成年代より,名護層の堆積時代は後期白亜紀とみなされている(中江ほか,2010).名護層の泥質片岩や砂岩は新鮮部では暗灰色を呈するが,地表近くでは厚い風化殻を形成する.筆者らは沖縄島北部の大宜味村南部で確認された強風化砂岩露頭を名護層に属するものと考え,研究対象とした.研究手法 研究対象の露頭は,標高約160mの丘陵地帯に位置する比高約10mの切土斜面であり,強風化した中粒砂岩が露出する(添付写真).現地では肉眼観察により,地質構造や粒度,色調,割れ目の状態等を記載した.また,風化の程度を硬さとして定量的に評価するために,斜面長1m毎に山中式土壌硬度計を用いて土壌硬度を計測した.さらに,この露頭より室内試験に供する試料を採取した.室内では,岩石薄片の鏡下観察とX線回析分析による鉱物の同定を行った.なお,新鮮な岩石試料を沖縄島北部の国頭村より,中風化の試料を大分県佐伯市(白亜系佐伯亜層群堅田層)より採取し,新鮮部から残留土壌に至る風化進行過程を整理した.
調査結果
調査対象の露頭では,ほぼ南北の走向と約20°で西側へ傾斜する層理面が認められ,この構造は一般的な名護層の構造(北東-南西走向,北西傾斜)と調和的である.砂岩を構成する砂粒子は中粒であり,所々に珪長質凝灰岩の薄層を挟在する.露頭の頂部では原岩の組織をとどめず残留土壌となる.調査対象の露頭では,風化作用は低標高部から高標高部へ向けて強くなる.風化砂岩の色調は,頂部より約3.5m(斜面長,以下同じ)までは,オレンジを基調とし黄色の斑状模様を含み,黄色の斑状構造には直径数mmのスポット状の白色の粘土を伴うことがある.3.5m以深は次第に赤褐色へ変化する.割れ目は,9.5m以下は黒色の鉱物で充填されるが,9.4~2.0mでは割れ目沿いに岩片が黄色に変色し,2.0m以上では赤褐色の鉱物によって充填される.土壌硬度は風化が進行する高標高部では約25mmであるが,標高を下げるにつれ次第に増加し最終的には約30mmに達する. 薄片の鏡下観察では,大宜味村露頭では石英を主体とし,一部が粘土した岩片や基質の粘土鉱物がみられるものの,国頭村露頭や佐伯市露頭で確認される長石類は消失している.粘土鉱物の量比は浅部へ向かって増加する傾向にある.また,地表より6.5mまでは植物の根痕が認められる.X線回析分析では,4.1m以深において確認されるイライト/スメクタイト混合層は1.3mでは消失し,代わって針鉄鉱が現れる.
考 察
大宜味村露頭における名護層砂岩は,風化の進行に伴い長石類及び岩片が粘土鉱物に変化することで,岩石の組織や組成が大きく変化し,最終的に国頭マージと呼ばれる風化土壌へと進行する.粘土鉱物への変化は土壌硬度の減少として現れる.露頭観察,薄片鏡下観察およびX線回析分析の結果から,砂岩の風化を新鮮部から風化残留土壌までFR,SW,MW,HW,SWl,CWh,RSの7段階に区分した.今後は薄片鏡下観察,X線回析分析,蛍光X線分析,物理試験等を追加し,砂岩風化の進行過程の整理を進める.
引用文献
小島ほか,1999,沖縄諸島, 名護層の変成作用とK–Ar 年代,日本地質学会関西支部会報No.125・西日本支部会報No. 113 合併号.黒島ほか,1981,沖縄の主要な森林土壌の生成と分類について.林業試験場研究報告,316,47-90.宮城ほか,2013,沖縄島および周辺諸島に分布する先新第三系基盤岩類の全岩化学組成と砕屑性ザクロ石化学組成.地質学雑誌,119,665-678.中江ほか,2010,20万分の1地質図幅「与論島及び那覇」,産総研地質調査総合センター.
沖縄島の北部には,国頭マージと呼ばれる赤色から黄色を呈する風化土壌が分布する.国頭マージの母材は,国頭礫層と呼ばれる段丘堆積物のほか,砂岩,千枚岩,緑色岩等の基盤岩類など多岐にわたる.黒島ほか(1981)は国頭マージの赤色土を古土壌と位置づけ,その生成時期を0.38±0.03Maと推定している.国頭マージについては,赤土砂流出防止対策の見地からの工学的な研究は多数報告されているが,母材から赤色土が生成する過程についての理学的な研究は少ない.今回沖縄島北部において国頭マージの形成プロセスを探るために,母材のうち四万十帯相当層である名護層砂岩露頭を対象に風化の特徴を整理し,風化区分の作成を試みた.
地質概要
四万十帯は相当層も含めると、関東から南西諸島まで分布する付加体である.沖縄島の北部には,北帯に属する上部白亜系の名護層と南帯に属する古第三系の嘉陽層が分布している.名護層の分布や名称は研究者によって異なるものの(宮城ほか,2013),岩相は千枚岩,緑色岩,砂岩などからなる.名護層からは,堆積年代を示す化石の報告はないが,再結晶白雲母のK-Ar年代として,77.0~61.1Maおよび54.7~37.1Maの変成年代が報告されている(小島ほか,1999).この変成年代より,名護層の堆積時代は後期白亜紀とみなされている(中江ほか,2010).名護層の泥質片岩や砂岩は新鮮部では暗灰色を呈するが,地表近くでは厚い風化殻を形成する.筆者らは沖縄島北部の大宜味村南部で確認された強風化砂岩露頭を名護層に属するものと考え,研究対象とした.研究手法 研究対象の露頭は,標高約160mの丘陵地帯に位置する比高約10mの切土斜面であり,強風化した中粒砂岩が露出する(添付写真).現地では肉眼観察により,地質構造や粒度,色調,割れ目の状態等を記載した.また,風化の程度を硬さとして定量的に評価するために,斜面長1m毎に山中式土壌硬度計を用いて土壌硬度を計測した.さらに,この露頭より室内試験に供する試料を採取した.室内では,岩石薄片の鏡下観察とX線回析分析による鉱物の同定を行った.なお,新鮮な岩石試料を沖縄島北部の国頭村より,中風化の試料を大分県佐伯市(白亜系佐伯亜層群堅田層)より採取し,新鮮部から残留土壌に至る風化進行過程を整理した.
調査結果
調査対象の露頭では,ほぼ南北の走向と約20°で西側へ傾斜する層理面が認められ,この構造は一般的な名護層の構造(北東-南西走向,北西傾斜)と調和的である.砂岩を構成する砂粒子は中粒であり,所々に珪長質凝灰岩の薄層を挟在する.露頭の頂部では原岩の組織をとどめず残留土壌となる.調査対象の露頭では,風化作用は低標高部から高標高部へ向けて強くなる.風化砂岩の色調は,頂部より約3.5m(斜面長,以下同じ)までは,オレンジを基調とし黄色の斑状模様を含み,黄色の斑状構造には直径数mmのスポット状の白色の粘土を伴うことがある.3.5m以深は次第に赤褐色へ変化する.割れ目は,9.5m以下は黒色の鉱物で充填されるが,9.4~2.0mでは割れ目沿いに岩片が黄色に変色し,2.0m以上では赤褐色の鉱物によって充填される.土壌硬度は風化が進行する高標高部では約25mmであるが,標高を下げるにつれ次第に増加し最終的には約30mmに達する. 薄片の鏡下観察では,大宜味村露頭では石英を主体とし,一部が粘土した岩片や基質の粘土鉱物がみられるものの,国頭村露頭や佐伯市露頭で確認される長石類は消失している.粘土鉱物の量比は浅部へ向かって増加する傾向にある.また,地表より6.5mまでは植物の根痕が認められる.X線回析分析では,4.1m以深において確認されるイライト/スメクタイト混合層は1.3mでは消失し,代わって針鉄鉱が現れる.
考 察
大宜味村露頭における名護層砂岩は,風化の進行に伴い長石類及び岩片が粘土鉱物に変化することで,岩石の組織や組成が大きく変化し,最終的に国頭マージと呼ばれる風化土壌へと進行する.粘土鉱物への変化は土壌硬度の減少として現れる.露頭観察,薄片鏡下観察およびX線回析分析の結果から,砂岩の風化を新鮮部から風化残留土壌までFR,SW,MW,HW,SWl,CWh,RSの7段階に区分した.今後は薄片鏡下観察,X線回析分析,蛍光X線分析,物理試験等を追加し,砂岩風化の進行過程の整理を進める.
引用文献
小島ほか,1999,沖縄諸島, 名護層の変成作用とK–Ar 年代,日本地質学会関西支部会報No.125・西日本支部会報No. 113 合併号.黒島ほか,1981,沖縄の主要な森林土壌の生成と分類について.林業試験場研究報告,316,47-90.宮城ほか,2013,沖縄島および周辺諸島に分布する先新第三系基盤岩類の全岩化学組成と砕屑性ザクロ石化学組成.地質学雑誌,119,665-678.中江ほか,2010,20万分の1地質図幅「与論島及び那覇」,産総研地質調査総合センター.
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