Presentation Information
[T14-O-4][Invited] Crustal thinning without magmatic activity in the Okinawa Trough: Cold rifting in the back arc
*Makoto Otsubo1, KH-21-3 Shipboard Scientists, KH-23-11 Shipboard Scientists (1. Geological Survey of Japan/AIST)
【ハイライト講演】背弧海盆形成メカニズムは現在も議論がなされている最中で、リフティングを引き起こすメカニズムに関しては未だに結論が得られていない。発表者である大坪氏は断続的なリフティング状態にある沖縄トラフ南部に着目し、琉球弧の陸上・海域の地質調査及び研究を主導している。本講演では、大坪氏が主席研究員を務めた学術研究船「白鳳丸」で実施した2研究航海での成果をご発表頂く。(ハイライト講演とは...)
Keywords:
Ryukyu arc,Backarc basin,Normal fault,East China Sea,Island arc
背弧海盆の形成と進化を支配するメカニズムは地球規模のテクトニクスにおける長年の課題である.背弧海盆は,基本的に厚い大陸地殻の海洋底リフティングから始まり,拡大軸で薄い海洋地殻が形成されていく[1].背弧で拡大開始すると,上昇するマグマによって地殻に伸長変形を起こしていくといわれている[2].海盆形成のプロセスには主に「ロールバックモデル」と「コーナーフローモデル」がある[3,4]が,背弧海盆内のマグマの影響が小さい初期段階における地殻が薄化する過程はまだ明らかにされていない.リフティングの開始は地殻を伸長変形させる正断層の存在と地殻の岩石強度を弱める熱の影響にかかっていると思われる.しなしながら,古典的なMcKenzie[3]やWernicke[4]の2つの地溝発達モデルを示す決定的な地質学的証拠はないのが現状である.その重要性は認識されているものの,リフティングの発生に寄与する根本的なメカニズムの明確な理解は現在も継続中の課題である.西南日本弧の沖縄トラフは,大陸縁辺における背弧リフティングの初期段階を研究するのに最適な地域である.沖縄トラフ[5]は,海洋底拡大によって海洋地殻を形成していない,地球上でほぼ唯一の活動的でアクセス可能な大陸縁辺の背弧海盆である.測地学的な観測によると,沖縄トラフの南部では,5~10 cm/年の速度でリフティングが進行している[6,7].沖縄トラフ南部での八重山海底地溝の海底面は沖縄トラフ全体で最も深く,水深2,200m以上に達する.この地溝の南西側には,現在沈降が進行している与那国海底地溝がある.八重山海底地溝での地殻熱流量[8,9]は,他の世界の地溝帯のそれよりも明らかに低い(例えば,紅海では約300 mW/m2[10]).これらの結果は冷たい地殻によるリフティングを示唆している.しかし,乏しいマグマ活動と直接結びついた冷たい地殻に関する証拠は限られている.したがって,これらのプロセスに関する包括的な理解はまだ手つかずのままである.沖縄トラフの発達プロセスを深く理解するために,我々は学術調査船「白鳳丸」による2回の調査航海(KH-21-3およびKH-23-11)において,リフティングの異なる段階にある2つの海底地溝(八重山海底地溝および与那国海底地溝)を調査した.本発表ではその調査航海結果を中心に紹介する.それらの調査では,地殻浅部の地下の正断層群や貫入構造をイメージングすることに成功した.さらに,地殻熱流量測定と地磁気測定を行った結果,冷たいリフティングでの発達が始まる2つのステージを示すことができた.沖縄トラフ南部での,これら熱を含む構造的な特徴はこの地域における将来のリフティングと地震の空間的範囲を評価するための重要な情報を提供するだろう.
引用文献:[1] Martínez, F. et al. 2002, Nature, 416, 417–420; [2] Karig, D. E. et al., 1970, J. Geophys. Res. 75, 239–254; [3] McKenzie, D, 1978, Earth Planet. Sci. Lett. 40, 25–32; [4] Wernicke, B, 1985, Can. J. Earth Sci. 22, 108–125; [5] Sibuet, J.-C. et al., 1995, in Backarc Basins: Tectonics and Magmatism (ed. Taylor, B.) 343–379; [6] Sagiya, T. et al., 2000, Pure Appl.Geophys. 157, 2303–2322; [7] Nishimura, T. et al., 2004, Geophys. J. Int. 157, 901–916; [8] Yamano, M. et al., 1988, in Exploration and Development of Geothermal Resources / International Symposium on Geothermal Energy 313–316; [9]Kinoshita, M. et al., 2021, JpGU 2021 meeting Abstract SCG45-09; [10]Martínez, F. et al., 1989, J. Geophys. Res. Solid Earth 94, 12239–12265.
引用文献:[1] Martínez, F. et al. 2002, Nature, 416, 417–420; [2] Karig, D. E. et al., 1970, J. Geophys. Res. 75, 239–254; [3] McKenzie, D, 1978, Earth Planet. Sci. Lett. 40, 25–32; [4] Wernicke, B, 1985, Can. J. Earth Sci. 22, 108–125; [5] Sibuet, J.-C. et al., 1995, in Backarc Basins: Tectonics and Magmatism (ed. Taylor, B.) 343–379; [6] Sagiya, T. et al., 2000, Pure Appl.Geophys. 157, 2303–2322; [7] Nishimura, T. et al., 2004, Geophys. J. Int. 157, 901–916; [8] Yamano, M. et al., 1988, in Exploration and Development of Geothermal Resources / International Symposium on Geothermal Energy 313–316; [9]Kinoshita, M. et al., 2021, JpGU 2021 meeting Abstract SCG45-09; [10]Martínez, F. et al., 1989, J. Geophys. Res. Solid Earth 94, 12239–12265.
Comment
To browse or post comments, you must log in.Log in