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[T7-O-4]Paleomagnetic direction of late Cretaceous basalts intruding into the Inuyama Section of the Mino Belt in central Japan

*Taizo UCHIDA1, Hiroyuki HOSHI2 (1. Kochi University, 2. Aichi University of Education)
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Keywords:

paleomagnetism,accretionary prism,basalt,chert

●はじめに 美濃帯犬山セクションの三畳紀-ジュラ紀チャート・砕屑岩シーケンスには、付加体が発達する沈み込み帯浅部における剥ぎ取り付加からout–of–sequence thrustの発達に特徴付けられる変形構造が記録されている[1]。それらの変形構造の発達後、坂祝向斜と名付けられているマップスケールの向斜が形成された[2]。しかし、これらの構造発達史の年代制約は十分にされておらず、この地域のテクトニクスの解釈は未だ明瞭でない。そこで本研究は、テクトニクスを理解する手掛かりとして、層状チャートに貫入する約90 Maの放射年代が得られている玄武岩[3]の古地磁気方位を得ることを目的とする。

●地質概説 犬山セクションのチャート・砕屑岩シーケンスは、下位がチャートと遠洋性粘土岩からなる層状チャート、上位が半遠洋性泥岩と陸源堆積岩の砕屑岩から構成される。チャート・砕屑岩シーケンスの繰り返しと層状チャートの層内褶曲は、沈み込みに伴う前縁スラストの形成時に発達したと考えられている。坂祝向斜の底線はトレンドがN82 °WでNWに78 °プランジしている。犬山セクションの層状チャートは、古地磁気の研究によって特徴磁化成分と複数の二次磁化成分を持つことが明らかになっている。二次磁化には坂祝向斜の両翼で同じ方位を示す成分と異なる方位を示す成分がある[4]。赤色チャートの残留磁化成分の担い手は、特徴磁化成分が堆積場で生成したヘマタイト、二次磁化成分は沈み込みに伴って生成した単磁区〜擬単磁区マグネタイトと考えられている[5]。玄武岩は坂祝向斜の両翼に板状に複数貫入している。放射年代は約84 Maと90 MaのK–Ar年代[6]のほか、Ar–Ar法で約95 Maの年代が報告されている[7]。

●手法 試料は坂祝向斜の両翼で、玄武岩と母岩のチャートから採取した。チャートは玄武岩からの距離に応じて採取した。玄武岩とチャートの残留磁化を測定し、貫入時の熱的影響を熱接触テストによって制約した。また、玄武岩に対し3成分等温残留磁化の段階熱消磁実験を適用し、残留磁化成分を担う強磁性鉱物の同定を行った。一方、一部の赤色チャートに対しては、玄武岩の貫入面からの距離に応じた磁気特性の変化を調べるために、ヒステリシス測定と等温残留磁化獲得実験を行った。

●結果 ほとんどの玄武岩の特徴磁化成分は坂祝向斜の両翼で共通して北向き偏角の下向き方位を示すことが明らかになった。チャートの残留磁化成分は、貫入面近傍では玄武岩と同じ方位を示す単一成分が分離されたが、玄武岩から遠ざかると複数の磁化成分が分離された。また、玄武岩によって切られている赤色チャートの層内褶曲の両翼で、特徴磁化成分のヘマタイトが担う高温成分は玄武岩と同じ方位を示した。 岩石磁気実験の結果から、玄武岩の残留磁化成分を担う強磁性鉱物は主にチタノマグネタイトと推定された。赤色チャートの磁気特性は、貫入面からの距離が異なってもヒステリシスの特徴に変化が見られなかった。

●議論 熱接触テストから、貫入面近傍の赤色チャートの特徴磁化成分は玄武岩貫入時に獲得されたと考えられる。また、赤色チャートの磁気特性が貫入面からの距離に応じた変化を示さなかったことも踏まえると、玄武岩の特徴磁化成分は初生的な熱残留磁化と考えられる。さらに、玄武岩は両翼で同じ残留磁化方位を示すことから、坂祝向斜は約90 Maまでに形成されたと考えられる。玄武岩の方位は、西南日本の90 Ma頃の古地磁気方位[8]に対して西偏していることから、犬山セクションは玄武岩貫入後に西南日本に対して反時計回りに回転したと考えられる。

●引用文献 [1]Kimura, K. and Hori, R., 1993, J. Struct. Geol., 15(2), 145-161;[2]木村, 1999, 地雑誌, 105(3), 208-226;[3]Safonova, I. et al., 2016, Gondwana Res., 33, 92-114;[4]Shibuya, H. and Sasajima, S., 1986, JGR: Solid Earth, 91(B14), 14105-14116;[5]Oda, H., and Suzuki, H., 2000, JGR: Solid Earth, 105(B11), 25743-2576;[6]木村・貴治, 1993, 地雑誌, 99(3), 205-208;[7]新保ほか, 2022,地質学会講演要旨, p. 126;[8]Otofuji, Y. and Matsuda, T., 1987, Earth and Planet. Sci. Lett., 85(1-3), 289-301

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