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[T7-O-7]Kinematic and stress history of the Yunodake Fault, southeastern Fukushima Prefecture

*Toru SAKAI1,2, Hideo TAKAGI1 (1. Waseda University, 2. Electric Power Development Co., Ltd.)
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Keywords:

Yunodake Fault,Fukushima-ken Hamadori earthquake,active fault,fault fracture zone,stress inversion analysis

【はじめに】
 東北地方太平洋沖地震から1ヶ月後に発生した福島県浜通りの地震(以下,4.11浜通り地震)により,いわき市に発達する湯ノ岳断層に地表変状が生じた.この地表変状は北西‒南東走向で高角南西傾斜の正断層であり,最大鉛直変位は0.8 m,全長15 kmにおよぶ地表地震断層である(Toda and Tsutsumi, 2013).この地表地震断層の北西端はいわき市官沢地区に位置するが,湯ノ岳断層はさらに西方の入遠野ダム北露頭まで延長される(酒井・高木, 2023a).また,4.11浜通り地震の際の活動部(中野北露頭,官沢露頭)と非活動部(入遠野ダム北露頭)の破砕帯性状には違いが見られ,非活動部に比べて活動部の破砕帯にはより多くの運動履歴の痕跡が記録されている(酒井・高木, 2023b).著者らはこれらの結果に加えて,断層破砕帯に発達した剪断面の断層スリップデータを用いた応力逆解析(酒井ほか, 2024)を行い,複数の有意な応力を検出した.また,解析過程で算出されるミスフィット角を用いて,破砕帯における各応力により形成された構造の主要分布領域を認定し,運動履歴と応力史を推定した.以下に結果を示す.
【中野北露頭】
 断層破砕帯に発達した剪断面から合計57セットの断層スリップデータを取得した.これらを多重逆解法で解析したところ,3つの有意な応力(Stress NA,NB,NC)を検出した.Stress NAは西北西−東南東方向のσ3軸を持つ正断層型,Stress NBは南−北方向のσ3軸を持つ正断層型,Stress NCは西北西−東南東方向のσ1軸を持つ逆断層型である.断層岩類の性状と各応力で形成された構造の主要分布領域から,Stress NA,NB,NC,NAの順に応力の変遷が生じたと推定される.
【官沢露頭】
 断層破砕帯に発達した剪断面から合計54セットの断層スリップデータを取得した.多重逆解法で解析したところ,2つの有意な応力(Stress KA,KB)を検出した.Stress KAは西北西−東南東方向のσ3軸を持つ正断層型,Stress KBは北西−南東方向のσ1軸を持つ逆断層型である.断層岩類の性状と各応力で形成された構造の主要分布領域から,Stress KA,KB,KAの順に応力の変遷が生じたと推定される.
【入遠野ダム北露頭】
 断層破砕帯に発達した剪断面から合計34セットの断層スリップデータを取得した.多重逆解法で解析したところ,2つの有意な応力(Stress IA,IB)を検出した.Stress IAは南−北方向のσ3軸を持つ正断層型,Stress IBは東−西方向のσ1軸を持つ逆断層型である.断層岩類の性状と各応力で形成された構造の主要分布領域から,Stress IA,IBの順に応力の変遷が生じたと推定される.
【まとめ】
 湯ノ岳断層の運動ステージをStage Iの正断層系(Stress NA,NB,KA,IA),Stage IIの逆断層系(Stress NC,KB,IB,TA),Stage IIIの正断層系(Stress NA,KA.4.11浜通り地震を含む)に区分した.Stage Iでは左ずれ南落ちの運動により,左ずれの幾何学的形状を呈する断層の北西端部の断層群が発達するとともに,断層の南西側には中新世の堆積岩類が形成された.Stage IIではテクトニックインバージョンによる北落ちの逆断層運動により,Stage Iの南落ちの変位量が多少戻された.Stage IIIでは官沢地区から南東部が活動し,南落ちの変位が蓄積した.4.11浜通り地震の際の非活動部はStage IIIを経験しておらず,南落ち変位量が相対的に少ないと考えられる.
【引用文献】
酒井 亨・亀高正男・青木和弘・島田耕史・高木秀雄,2024,地質雑,130,89‒109.
酒井 亨・高木秀雄,2023a,JpGU Meeting 2023,SSS13-P10.
酒井 亨・高木秀雄,2023b,日本地質学会第130年学術大会講演要旨,T5-P-9.
Toda, S. and Tsutsumi, H., 2013, Bull. Seismol. Soc. Am., 103, 1584‒1602.

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