Presentation Information
[G1-O-2]Underwater Topography and Subsurface Structure of Okama Lake, Zao Volcano, Revealed by Acoustic Technology and Underwater Drones
*Shintaro YAMASAKI1, Akio GOTO2, Nobuo HIRANO3, Noriyoshi TSUCHIYA3,5, Tetsuya MATSUNAKA4 (1. Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University, 2. Center of Northeast Asian Studies, Tohoku University, 3. Graduate school of Environmental Studies, Tohoku University, 4. Institute of Nature and Environmental Technology, Kanazawa University, 5. National Institute of Technology, Hachinohe College)
Keywords:
Crater lake,side-scan sonar,sub-bottom profiler,sonar,sonar,subaquatic landslide,Zao volcano
蔵王火山は丸山沢噴気地熱地帯での小規模水蒸気爆発を伴った1939年からの明瞭な活動期以降、1960年代の群発地震や噴気の増大、2013年からの微動および地震の発生といった活動の高まりはあったものの、比較的低い活動レベルが続いている。直径約300 mの御釜火口湖に関しては1939年からの活動でガス噴出や温度増加が見られたが、以後、火山活動が疑われる異常は長期間観察されていなかった。しかし2014年に突如水面の部分的な白濁が観察され、同様の現象は2019年にも確認された。活動度の上がっていた時期だったこともあり、火山活動との関連が疑われたが、発生源の解明には至っていない。
ところで、2018年山崎ほかにより、魚群探知機を搭載した無人船を利用した地形調査によって、湖底中央湖盆上に火砕丘によく似た小丘が発見された。走査された魚群探知機のイメージにはガス噴出の疑いがある反射も検出されたが、これはノイズの疑いがある。この小丘は水深23 m(2022年9月7日時点での水深)の平坦な湖盆の中央に存在し、その周辺に火口壁起源の落石、土石流起源の転石など大粒径の物質が認められないことから、なおも火山活動と関係する地形である可能性が残された。筆者らは2022年9月、200 kHz音波を利用したソナーによる底質分析、サイドスキャンソナー(SSS)による水底地形のイメージング、サブボトムプロファイラ(SBP)による湖底下地質構造のイメージング、水中ドローンと呼ばれる小型ROVを用いた湖底面上の観察を実施した。以下、その調査結果と考察を記述する。
御釜火口湖の地形と地下構造の全体像
200 kHz音波を利用したソナーによる底質分析では、前述した小丘を除いて湖盆上は平坦であり、比較的低い荒さ値(ソナー信号から得られるE1値)と硬さ値(E2値、PeakSV値)をもつ底質で覆われていた。SBPで判別できる湖盆下の地層は所々変形しているが後述の不整合面まで少なくとも10層以上の地層が分離できた。湖盆西側では概ね水平成層した堆積物の下に湖底中心に向かって約20度で傾斜する傾斜不整合が認められた。これは堆積の様式が、斜面を形成するステージから、現在も続く水平面を形成するステージに急速に変化したことを示唆している。特筆すべき点として、湖の南西に明瞭な地すべり地形と堆積物が認められた。この地すべり地形は幅が80 m以上あり、最大厚さ2.5 mである。
小丘地形とその地下構造
SSSによる水底地形のイメージに投影された小丘地形は長さ6 m、幅が2 m程度であり、北西ー南東に長い形状をしていることが判明した。南北に走査した高解像度の鉛直方向の音響イメージを観察すると、小丘は高さ1 m、北側が傾斜35度の比較的急傾斜になっており、南側が8度の比較的緩傾斜になっていた。そして、小丘を挟んで北側の湖盆が低く、南側の湖盆がそれにくらべて0.3 m程度高いことが判明した。つまり小丘は異なる地形面の境界になっている。この小丘上を走査して得た底質の荒さ値は周辺の湖盆に比べて高い値もあるが、硬さ値に関しては湖盆上とほとんど変わらない。
水中ドローンによって小丘表面に幅20 cm以下の溝状構造、表層の剥離、ネットワーク状の亀裂が観察できた。溝状構造の一部は地層の横断が差別侵食によって凹凸を形成したために現れたものである。つまり、これが湖底面上で観察できることは地層が転倒していることを示している。小丘を南西から北東に横断するSBPイメージでは小丘西側平坦部の直下2.5 mからみかけ傾斜13度をもって地表面に伸びるスラストが認められた。このスラストによる隆起域が小丘となっている。また、小丘東側の湖底下1 mにある反射層は、水平短縮を受けるように鉛直方向に褶曲変形をしており、所々に不連続が認められた。
調査結果から考えられる小丘の起源
以上の観察結果を総合すると、小丘を構成しているのは地質体同士が衝突して隆起・傾斜した湖底堆積物で、火山活動に由来するものではないと考えられる。前述のスラストをもたらした変動は、小丘南西側の地質体がほぼ水平に移動して小丘付近で北東側に衝突し、小丘付近の地層の一部が上方向に屈曲して生じたものである。SBPで観察できる地質構造から、小丘直下のスラストの発生位置は、前述した地すべりのすべり面に連続している。つまりは湖南西側の地すべりが滑動して北東方の湖底の地質体にその圧力が伝搬していると思われる。水中ドローンで観察できた小丘表面にはネットワーク状の亀裂が観察できたが、これは水平短縮に伴う曲隆によって表面が展張して形成された可能性がある。また、この亀裂はほとんど堆積物に覆われていない。この地すべりは現在でも活動しているか、または最近まで活動していたことが疑われる。
ところで、2018年山崎ほかにより、魚群探知機を搭載した無人船を利用した地形調査によって、湖底中央湖盆上に火砕丘によく似た小丘が発見された。走査された魚群探知機のイメージにはガス噴出の疑いがある反射も検出されたが、これはノイズの疑いがある。この小丘は水深23 m(2022年9月7日時点での水深)の平坦な湖盆の中央に存在し、その周辺に火口壁起源の落石、土石流起源の転石など大粒径の物質が認められないことから、なおも火山活動と関係する地形である可能性が残された。筆者らは2022年9月、200 kHz音波を利用したソナーによる底質分析、サイドスキャンソナー(SSS)による水底地形のイメージング、サブボトムプロファイラ(SBP)による湖底下地質構造のイメージング、水中ドローンと呼ばれる小型ROVを用いた湖底面上の観察を実施した。以下、その調査結果と考察を記述する。
御釜火口湖の地形と地下構造の全体像
200 kHz音波を利用したソナーによる底質分析では、前述した小丘を除いて湖盆上は平坦であり、比較的低い荒さ値(ソナー信号から得られるE1値)と硬さ値(E2値、PeakSV値)をもつ底質で覆われていた。SBPで判別できる湖盆下の地層は所々変形しているが後述の不整合面まで少なくとも10層以上の地層が分離できた。湖盆西側では概ね水平成層した堆積物の下に湖底中心に向かって約20度で傾斜する傾斜不整合が認められた。これは堆積の様式が、斜面を形成するステージから、現在も続く水平面を形成するステージに急速に変化したことを示唆している。特筆すべき点として、湖の南西に明瞭な地すべり地形と堆積物が認められた。この地すべり地形は幅が80 m以上あり、最大厚さ2.5 mである。
小丘地形とその地下構造
SSSによる水底地形のイメージに投影された小丘地形は長さ6 m、幅が2 m程度であり、北西ー南東に長い形状をしていることが判明した。南北に走査した高解像度の鉛直方向の音響イメージを観察すると、小丘は高さ1 m、北側が傾斜35度の比較的急傾斜になっており、南側が8度の比較的緩傾斜になっていた。そして、小丘を挟んで北側の湖盆が低く、南側の湖盆がそれにくらべて0.3 m程度高いことが判明した。つまり小丘は異なる地形面の境界になっている。この小丘上を走査して得た底質の荒さ値は周辺の湖盆に比べて高い値もあるが、硬さ値に関しては湖盆上とほとんど変わらない。
水中ドローンによって小丘表面に幅20 cm以下の溝状構造、表層の剥離、ネットワーク状の亀裂が観察できた。溝状構造の一部は地層の横断が差別侵食によって凹凸を形成したために現れたものである。つまり、これが湖底面上で観察できることは地層が転倒していることを示している。小丘を南西から北東に横断するSBPイメージでは小丘西側平坦部の直下2.5 mからみかけ傾斜13度をもって地表面に伸びるスラストが認められた。このスラストによる隆起域が小丘となっている。また、小丘東側の湖底下1 mにある反射層は、水平短縮を受けるように鉛直方向に褶曲変形をしており、所々に不連続が認められた。
調査結果から考えられる小丘の起源
以上の観察結果を総合すると、小丘を構成しているのは地質体同士が衝突して隆起・傾斜した湖底堆積物で、火山活動に由来するものではないと考えられる。前述のスラストをもたらした変動は、小丘南西側の地質体がほぼ水平に移動して小丘付近で北東側に衝突し、小丘付近の地層の一部が上方向に屈曲して生じたものである。SBPで観察できる地質構造から、小丘直下のスラストの発生位置は、前述した地すべりのすべり面に連続している。つまりは湖南西側の地すべりが滑動して北東方の湖底の地質体にその圧力が伝搬していると思われる。水中ドローンで観察できた小丘表面にはネットワーク状の亀裂が観察できたが、これは水平短縮に伴う曲隆によって表面が展張して形成された可能性がある。また、この亀裂はほとんど堆積物に覆われていない。この地すべりは現在でも活動しているか、または最近まで活動していたことが疑われる。
Comment
To browse or post comments, you must log in.Log in