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[T13-O-11]Process change from shallow marine to slope: the Miocene Chichibumachi Formation, Chichibu Bonchi Group, central Japan

*Naohisa NISHIDA1 (1. Tokyo Gakugei University)
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Keywords:

depositional processes,shallow-marine deposits

沿岸域から陸棚,深海域にいたる堆積物の輸送プロセスは,堆積盆の発達や物質循環の理解のために重要である.従来,その制約要因として,河川流,静穏時・ストーム時の波浪,潮流,陸棚外縁における斜面崩壊が挙げられている (Pratson et al., 2007; Gan et al., 2022).またこのような物理プロセスに加えて,陸棚の幅や傾斜も重要な条件である (Walsh and Nittrouer, 2009).これらが具体的にどのように相互作用して堆積物を形成するかを理解するためには,地域ごとの事例の蓄積が必要不可欠である.
 埼玉県西部に分布する中新統秩父盆地層群の地層は,日本海拡大に伴って発達した堆積盆を埋積する深海-浅海環境で形成された地層である (Arai and Kanno, 1960; Latt, 1989; 高橋ほか,2006).従来,地質・古生物学的検討が行われてきた一方で,堆積学的な特徴は必ずしも十分に検討されていない.本研究の主な目的は,秩父盆地層群上部を構成する秩父町層下部(牧本・竹内,1992)を主な対象として岩相の特徴を再検討し,堆積プロセスの層位変化とその制約条件を明らかにすることである.
 秩父町層は,現在の秩父盆地の中央部から南東端に広く分布する地層で,下部の最大層厚は 500–600 m である(牧本・竹内,1992).産出化石や岩相の特徴から,従来,内湾や陸棚など浅海の堆積環境が考えられている (Arai and Kanno, 1960; Latt, 1989). 本研究では,赤平川沿いに連続的に露出する秩父町層下部のうち,下位の小鹿野町層との境界付近から上位に厚さおよそ 250 m の範囲を対象として,詳細な岩相観察を行なった.
 検討対象区間の最下部には,厚さが最大 2.5 m のスランプ状に変形した礫質砂岩層が発達する.これより上位は,砂質シルト岩,シルト質砂岩,極細粒-細粒砂岩によって主に構成され,全体として上方粗粒化傾向を示す.顕著な生物擾乱のため堆積構造が認められない場合が多いが,シルト岩層の一部に弱いラミナが認められる.また砂岩層には,ハンモック状斜交層理,平行層理,およびウェーブリップル葉理が認められる場合がある.一部の砂岩層は植物片を含む.最上部の細粒砂岩層には,オフセットが 7–40 cm の堆積同時性断層が発達し,内部は未固結変形構造や塊状であることで特徴づけられる.
 岩相の特徴に基づくと,最下部の礫質砂岩層は斜面崩壊に伴う塊状運搬堆積物 (mass-transport deposits) と解釈される.またこの上位は,全体として上方粗粒化傾向を示すことに加えて,植物片の濃集により河川からの間欠的な堆積物供給が示されること,最上部で未固結変形構造を伴う堆積同時性断層が発達することから,デルタ堆積物と解釈される.特に,生物擾乱が卓越することや産出化石の特徴から,内湾環境に発達したデルタと考えられる.すなわち,秩父町層の下位の小鹿野町層がタービダイトやスランプを伴う砂岩泥岩互層で構成されることをふまえると,陸棚斜面上部から内湾性のデルタに浅海化したと解釈される.したがって,このような堆積環境の変化に伴って,堆積物輸送プロセスは,土砂重力流,塊状運搬,波浪,河川流へと遷移したことが理解される.また,陸棚斜面から浅海の環境下で形成された地層の厚さが 250 m 以上に達することは,堆積盆の沈降,河川からの活発な土砂供給,さらに当時の陸棚の幅が狭い条件であった可能性が考えられる.したがって,これらの条件を反映した岩相の特徴は,他地域の地層解析にも有用と考えられる.
<文献> Arai, J. & Kanno, S. 1960, The Japan Society for the Promotion of Science, 396pp. Gan, Y. et al., 2022, Jour. Sedi. Res., 92, 570–590. Latt, K.M. 1989, In: Taira, A. & Masuda, F., eds., Sedimentary facies in the active plate margin, 421–438. 牧本 博・竹内圭史,1992, 地域地質研究報告5万分の1地質図幅,地質調査所,136pp. 高橋雅紀ほか, 2006, 地質雑,112, 33–52. Pratson et al., 2007, IAS Sp. Pub. 37, 339–380. Walsh, J.P. & Nittrouer, C.A., 2009, Mar. Geol., 263, 34–45.

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