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[T13-O-16]Formation mechanism of double-layered spherical concretions from the Atsuta Formation, Ishikari, Hokkaido★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*Alvin Loran Yamaguchi PRAET1, Hidekazu YOSHIDA2, Yusuke MURAMIYA3, Akihiro KANO1, Taro KIDO1, Nagayoshi KATSUTA4 (1. The University of Tokyo, 2. Nagoya University Museum, 3. Fukada Geological Institute, 4. Gifu University)
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Keywords:

carbonate concretion,double-layered spherical concretion,early diagenesis,methanogenesis,stable carbon isotope

【はじめに】
 炭酸塩コンクリーションは、海底堆積物中に埋没した生物遺骸が分解され拡散した重炭酸イオンと海水中の金属イオンとの過飽和・沈澱反応によって形成される岩塊を指す (e.g., Yoshida et al., 2015)。球状コンクリーションは中心部から外縁部にかけて連続的に形成されるため、間隙水中の化学的な時間発展を記録していると考えられている (e.g., Raiswell, 1971)。特にゾーニングを示すコンクリーション(以後二重層球状コンクリーション)は、コンクリーションの形成環境を制約する情報に富む試料だと考えられる。しかし、二重層球状コンクリーションの詳細な成因の検討例は少ない (e.g., Gautier & Claypool, 1984)。本研究では、北海道石狩市に分布する新生界新第三系中新統の深海成層である厚田層から産出した二重層球状コンクリーションの分析を行い、その形成メカニズムを明らかにすることを目的とした。

【産状】
 厚田層の二重層球状コンクリーションは球状の核(Inner Concretion)とそれを覆う外殻(Outer-Concretion)の2つの領域に大別される(図a, c)。その産出は厚田層の中でも生物擾乱の著しい青灰色塊状泥岩〜シルト岩層の一部の層準に限定されている(図d)。現地調査で採取したコンクリーションの直径は70 ~ 180 mmで、その形状は僅かな圧密を受けているものの概ね球状である。また、コンクリーションの中心には、スナモグリの爪と体の一部の化石が含まれていることが多く、コプロライトの化石も見つかった。

【結果・考察】
 XRD分析から、核および外殻は主にカルサイトからなることが分かった。炭酸塩含有率は核および外殻において概ね80%を超えることに加え、圧密による化石の変形は核および外殻共にわずかである。この観察事実は、コンクリーション全体が浅い埋没深度で急速に形成されたことを示唆し、核と外殻の形成に地質学的時間スケールで時間差はないとみなせる。また、コプロライトも底生生物に分解されずに保存されていたことから、堆積後速やかに還元的な環境に遷移したと考えられる。
 炭素安定同位体比(δ13C)は領域ごとに特徴的な値を示し、核と外殻の境界の前後で急激に変化した。核のδ13Cは-5 ~ +15‰程度と硫酸還元とメタン生成の中間的な値とみなすことができ、中でも核の外縁部のδ13Cは正の値(+10 ~ +15‰)でメタン生成帯起源の炭酸塩に典型的な値だった。外殻のδ13Cは負の値(-15 ~ -5‰程度)で生物遺骸起源の炭酸塩を示唆する。外殻にはフランボイダルパイライトのハロが観察できることも考慮すると、外殻は硫酸還元帯で形成されたと考えることができる。これらを総合すると、硫酸還元帯中で局所的にメタン生成が起こり、硫酸還元とメタン生成の2つの反応のバランスが時間的に変化したと考えられる。
 SXAMによる元素マッピング及びEDS分析の結果、カルサイト中の鉄とマンガンの含有量は領域間で異なることが分かった(核 > 外殻)。これは初期続成作用における各還元帯・メタン生成帯ごとに鉄やマンガンなどの金属イオンの取り込みの傾向が異なることに起因する可能性がある(Loyd et al., 2012)。また、隆起に伴う除荷によって核と外殻の境界における鉱物の違いによる物性差によって球状に割れ目が形成されたと考えられる。
 以上より、厚田層の多重層球状コンクリーションは初期続成過程における生物遺骸の分解過程の変化を記録していることに加え、境界部の鉱物学的な差が後天的な割れ目の形成によって強調された結果だと考えられる。

【引用文献】
Yoshida et al., 2015, Scientific reports, 5(1), 14123.
Raiswell, 1971, Sedimentology, 17(3‐4), 147-171.
Gautier and Claypool, 1984, Clastic Diagenesis, 37, 111-123.
Loyd et al., 2012, Geochimica et Cosmochimica Acta, 78, 77-98.

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