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[T13-O-19]Holocene temperature and precipitation records of a stalagmite from Kiriana Cave, Mie Prefecture

Akira Murata1, *Akihiro KANO1, Hirokazu Kato2, Fumito Shiraishi3, Kenji Kashiwagi4 (1. The University of Tokyo, 2. Teikyo University of Science, 3. Hiroshima University, 4. Toyama University)
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Keywords:

Paleoclimatology,Holocene,stalagmite

近年,地球温暖化の進行とともに将来の気候予測の精度向上が喫緊の課題となっている。そのためには,気候変動を駆動する要因と実際の気候変動の関係を理解する必要がある。古気候研究では,様々な記録媒体を用いて気候変動のプロセス理解が進められてきたが,定量的な記録は未だ少ない。特に,人類の生活圏が密集する中緯度帯の陸域古気候記録は不十分で,海域と陸域の気候変動の違いやデータソース間の違いについては十分に理解されていない。完新世は比較的安定した気候条件であるとされているが,多くの気候記録には中期に温暖期が認められる。しかし,この完新世温暖期はモデル計算では再現されていない。また,気候記録においても,温暖な時期は海洋記録と陸域記録で異なり,さらに地域差もある。また,日本列島を含めた東アジアでは陸域での連続的な気温記録が少ないという問題もある。そこで,本研究では三重県霧穴から採取した石筍試料を対象に研究を進めた。U-Th放射年代測定(16層準)の結果,三重県霧穴で採集された石筍KA01は完新世にわたる記録を連続して保持していることがわかった。本章では,KA01の酸素同位体比・炭素同位体比(1712試料),炭酸凝集同位体比(18試料),Mg/Ca比(163試料)の分析結果から気温を定量的に復元し,降水量を評価した。霧穴の特徴として,雨水の酸素同位体比が降水現象と相関せず,石筍の酸素同位体比が一義的に温度情報を記録すると解釈できる点がある。酸素同位体比から復元された古気温は,10.3~6.5 kaに最暖期を,3 kaごろには寒冷化イベントを示した。最暖期の気温は(温暖化の)現代よりも3℃ほど高く,寒冷期の気温は2℃ほど低いと見積もられる。この傾向は温度情報を示す炭酸凝集同位体比の分析結果とも整合的であった。この温暖期のタイミングは海の記録と類似しており,太平洋に突出し,黒潮経路にも近い紀伊半島の地域性が現れていると考えられる。一方,炭素同位体比とMg/Ca比からは,Prior Calcite Precipitation (PCP)を計算することで滴下水量(降水量)を推定した。PCPとは滴下水が石筍に到達する前に炭酸カルシウムの割合であり,PCPが高くなると炭素同位体比とMg/Ca比も高くなる。石筍の実測値から算出された2つのPCPには相関が見られ(R = 0.49),温暖な時期だと推定された10.3~6.5 kaは多雨,寒冷化のあった 4~2 kaは少雨であったことが示された。霧穴のある日本列島の大平洋側では,気温と降水量の相関が強く,今後の地球温暖化により降水量も増加すると予想される。

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