Presentation Information
[T15-O-4]Geological and Paleontological research on the fossiliferous Kurotaki Formation of the Cretaceous Izumi Group at Dogo-Himeduka, Ehime, Japan
*Rie S. HORI1, Takashi OKAMOTO1, Nao KUSUHASHI1, Takehisa TSUBAMOTO1, Kazuya SHIMOOKA2, Sera Takuma 4, Daito Toyo4, Motohiro Sumi3, Minoru Tsukagoshi5, Tamaki Sato6, Project Team Dogo-Himezuka Research (1. Department of Earth Science, Faculty of Science, Ehime University, 2. Kannsei Gakuinn University, 3. Geology course, Faculty of Science, Ehime University, 4. Department of Earth Science, Graduate School of Engineering and Science, Ehime University , 5. Osaka Museum of Natural History, 6. Faculty of Science, Kanagawa University)
Keywords:
Late Cretaceous,Campanian,Izumi Group,Kurotaki Formation,fossil
道後姫塚には、領家花崗岩類を不整合で覆う和泉層群基底礫岩層とその上位に化石を豊富に含有する泥岩・シルト岩層を含む砂泥互層からなる黒滝層(高橋1986改称)が分布する。この地は、昔から保存のよい化石が多産する事で有名であったが、多くの化石標本は散逸し、殆どが愛媛県や松山市に残っていない。そこで愛媛大学理学部地学コースでは、2020年より2024年3月まで地権者の許可及び関係各所の協力を得て、道後姫塚における地質学的・古生物学的総合学術調査を行った。調査には、多くの理学部地学コース・理工学研究科の学生・院生や教員、および関係分野の研究者が参加した。その成果の一部は、堀ほか(2021, 2024)や, 首長竜遊離歯化石については佐賀ほか(2022)で報告している。また、先行研究による報告化石一覧については、黒田・鍔本(2023)によってとりまとめられ、これまでに道後姫塚から動物化石39種・植物化石2種の産出記録がある事が報告されている。本発表では、さらに道後姫塚の黒滝層における地質堆積学的特徴や新たに確認された産出化石の検討結果について報告する。
【調査方法】道後姫塚の露頭においては、現在、基底礫岩層の直上の礫層をBed1とし、全13層の単層からなる礫層を含む砂泥互層が観察される。標本・試料は研究室に持ち帰り、実体顕微鏡下で観察、または薄片を作成し観察した。球果化石や遊離歯については、高知大学の高知コアセンター分析装置群共用システムを利用し、マイクロフォーカスX線CTスキャナにて内部構造解析を行った。
【結果】 基底礫岩層の直上のBed 1-Bed 3までは、化石を殆ど産しない。 Bed 4- Bed 8は、中粒から粗粒砂岩層を挟む黒色泥岩から、シルト・極細粒砂岩層を基質の主体とし、まれに礫を基質支持で含有する砕屑岩層であり、化石を多産する。特に、Bed8は特徴的な岩相を示し、基質支持で小さな円礫を散点的に含む黒色シルト岩から極細粒砂岩からなる。円礫は黒色チャートや花崗岩などが多い。また、特徴的な青緑色酸性火山岩角礫や角張った石英・長石片を含む。本層からは、植物球果化石と共に、海棲生物化石(多種多様な二枚貝、巻貝、アンモナイト類、魚類遊離歯等)が産出した。周辺の転石から、首長竜の遊離歯化石も発見されている(佐賀ほか, 2022)。二枚貝やアンモナイト化石には、幼体から成体まで多様な成長段階の個体が含まれ、合弁二枚貝もみられる。また、基質は淘汰が悪く、角張った火山岩片、長石などの結晶片、火山灰片が含まれ、稀に壊れた有孔虫化石殻が含まれているのが確認される。 直上のBed9は、均質で淘汰のよいシルト岩からなり、底質に生息するウニ (Hemiasteridae gen. et sp. indet.) やサメの遊離歯、大型平板状のイノセラムス類Sphenoceramus schmidti type Aが多産し、Bed 8 までの化石相とは異なる化石群が産する。また、Bed 9以降の層準は、化石を殆ど含まない砂岩・泥岩からなるタービダイト層となる。 Bed 9に多産するS. aff. schmidti type A of 田代ほか(2008)や、Bed 8から得られた異常巻きアンモナイト(Ainoceras kamuy ? 現在検討中)から判断すると、道後姫塚の黒滝層は、上部白亜系下部カンパニアン階上部〜カンパニアン階中部に対比され、これまでの先行研究の時代論と矛盾しない。 以上のことから、道後姫塚に分布する和泉層群黒滝層の化石多産層は、後期白亜紀のカンパニアン期に陸上植物も巻き込むなんらかのイベントによって形成され、その後、堆積場の急激な沈降が起こり定常的なタービダイトが流れ込むような堆積環境で形成される岩相へと変化した可能性が高いと考えられる。
堀 利栄・岡本 隆・楠橋 直・鍔本武久・佐藤たまき・下岡和也・町田悠輔・朝永悠斗・脇山涼輔・佐賀省吾・向井一勝 (2021) 第21回日本地質学会四国支部総会・講演会.
堀 利栄・岡本 隆・楠橋 直・鍔本武久(愛媛大・理工)・下岡和也(関西学院大)・世羅拓真・豊 大翔・炭 元裕(愛媛大)・道後姫塚学術調査プロジェクトチーム (2024) 日本古生物学会 2024 年年会・総会, 高知, 6月.
黒田奈那・鍔本武久(2023) 愛媛大学理学部紀要. 25, 28-34.
佐賀昇吾・堀 利栄・岡本 隆・鍔本武久・楠橋 直・佐藤たまき・向井一勝・朝永悠斗・脇山涼輔 (2022) 日本古生物学会第171回例会.
高橋治朗(1986)愛媛大学教育学部紀要 6, 1–44.
田代正之・大塚雅勇・廣瀬浩司(2008)御所浦資料館報 9, 3–8.
【調査方法】道後姫塚の露頭においては、現在、基底礫岩層の直上の礫層をBed1とし、全13層の単層からなる礫層を含む砂泥互層が観察される。標本・試料は研究室に持ち帰り、実体顕微鏡下で観察、または薄片を作成し観察した。球果化石や遊離歯については、高知大学の高知コアセンター分析装置群共用システムを利用し、マイクロフォーカスX線CTスキャナにて内部構造解析を行った。
【結果】 基底礫岩層の直上のBed 1-Bed 3までは、化石を殆ど産しない。 Bed 4- Bed 8は、中粒から粗粒砂岩層を挟む黒色泥岩から、シルト・極細粒砂岩層を基質の主体とし、まれに礫を基質支持で含有する砕屑岩層であり、化石を多産する。特に、Bed8は特徴的な岩相を示し、基質支持で小さな円礫を散点的に含む黒色シルト岩から極細粒砂岩からなる。円礫は黒色チャートや花崗岩などが多い。また、特徴的な青緑色酸性火山岩角礫や角張った石英・長石片を含む。本層からは、植物球果化石と共に、海棲生物化石(多種多様な二枚貝、巻貝、アンモナイト類、魚類遊離歯等)が産出した。周辺の転石から、首長竜の遊離歯化石も発見されている(佐賀ほか, 2022)。二枚貝やアンモナイト化石には、幼体から成体まで多様な成長段階の個体が含まれ、合弁二枚貝もみられる。また、基質は淘汰が悪く、角張った火山岩片、長石などの結晶片、火山灰片が含まれ、稀に壊れた有孔虫化石殻が含まれているのが確認される。 直上のBed9は、均質で淘汰のよいシルト岩からなり、底質に生息するウニ (Hemiasteridae gen. et sp. indet.) やサメの遊離歯、大型平板状のイノセラムス類Sphenoceramus schmidti type Aが多産し、Bed 8 までの化石相とは異なる化石群が産する。また、Bed 9以降の層準は、化石を殆ど含まない砂岩・泥岩からなるタービダイト層となる。 Bed 9に多産するS. aff. schmidti type A of 田代ほか(2008)や、Bed 8から得られた異常巻きアンモナイト(Ainoceras kamuy ? 現在検討中)から判断すると、道後姫塚の黒滝層は、上部白亜系下部カンパニアン階上部〜カンパニアン階中部に対比され、これまでの先行研究の時代論と矛盾しない。 以上のことから、道後姫塚に分布する和泉層群黒滝層の化石多産層は、後期白亜紀のカンパニアン期に陸上植物も巻き込むなんらかのイベントによって形成され、その後、堆積場の急激な沈降が起こり定常的なタービダイトが流れ込むような堆積環境で形成される岩相へと変化した可能性が高いと考えられる。
堀 利栄・岡本 隆・楠橋 直・鍔本武久・佐藤たまき・下岡和也・町田悠輔・朝永悠斗・脇山涼輔・佐賀省吾・向井一勝 (2021) 第21回日本地質学会四国支部総会・講演会.
堀 利栄・岡本 隆・楠橋 直・鍔本武久(愛媛大・理工)・下岡和也(関西学院大)・世羅拓真・豊 大翔・炭 元裕(愛媛大)・道後姫塚学術調査プロジェクトチーム (2024) 日本古生物学会 2024 年年会・総会, 高知, 6月.
黒田奈那・鍔本武久(2023) 愛媛大学理学部紀要. 25, 28-34.
佐賀昇吾・堀 利栄・岡本 隆・鍔本武久・楠橋 直・佐藤たまき・向井一勝・朝永悠斗・脇山涼輔 (2022) 日本古生物学会第171回例会.
高橋治朗(1986)愛媛大学教育学部紀要 6, 1–44.
田代正之・大塚雅勇・廣瀬浩司(2008)御所浦資料館報 9, 3–8.
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