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[T6-P-8]Zircon Hf isotopic composition of Cretaceous plutonic rocks distribute in the Takanawa Peninsula and Kajishima, Ehime Prefecture, southwestern Japan.

*Kazuya Shimooka1, Mitsuhiro Nagata2,3, Yasuhiro Ogita3,4, Satoshi Saito5 (1. Kwansei Gakuin Univ., 2. Nihon Univ., 3. JAEA, 4. Yamagata Univ., 5. Ehime Univ.)
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Keywords:

Cretaceous Granitoids,Zircon Hf isotopic composition,Takanawa Peninsula and Kajishima

大陸地殻の成長・成熟過程を解明するためのカギとして,火山弧でのマグマの異常発生期である“フレアアップ期”の大規模珪長質火成活動が注目されている。フレアアップ期火成活動は地殻中に大規模な花崗岩塊を形成し,大陸地殻の成長に関与する。近年の珪長質岩類の同位体岩石学的研究からマントル活動による熱的影響がフレアアップを引き起こすトリガーとして有力視されるとともに(Attia et al., 2020, Geology),西南日本白亜紀の地殻岩石研究からもフレアアップ期のマントルからの熱的影響が指摘されている(Takatsuka et al., 2018, Lithos)。
 西南日本内帯には,東アジア大陸縁辺域の白亜紀フレアアップ期に形成された花崗岩を主体とする深成岩類が広く分布している。同位体岩石学をはじめとした研究から,これらの花崗岩類は斑れい岩類などの苦鉄質下部地殻構成岩類の部分溶融によるものであると考えられている(例えば,Nakajima et al., 2004, Trans. R. Soc. Edinburgh: Earth Sci.)。これまでに西南日本白亜紀深成岩類についてジルコンU-Pb年代をはじめとした数多くの年代データが蓄積され(例えば,Iida et al., 2015, Island Arc),地殻中でのマグマ活動の時間変化が議論されてきた。一方で,これらの深成岩類についてのジルコンHf同位体組成の報告は極めて少なく(Mateen et al., 2019, Geosci. J.),深成岩類の起源物質となった苦鉄質下部地殻のソースマントル物質についてのHf同位体組成の議論は限られている。
 愛媛県高縄半島および梶島には白亜紀の深成岩類が露出する。これらの深成岩類については,これまで,記載岩石学,Sr-Nd同位体組成,ジルコンU-Pb年代に関する研究が行われてきた(例えば,越智, 1982, 地質雑; Kagami et al., 1985, Geochem. J.; 堀内, 1985, 岩石鉱物鉱床学会誌; Shimooka et al., 2019, 2023, JMPS)。Shimooka et al.(2019, 2023)は当地域の花崗岩類および斑れい岩類について記載岩石学研究とジルコンU-Pb年代測定を行い,この地域のマグマ活動が99〜84 Maの期間において,異なる時期にパルス的に生じたことを示した。
 本研究では,愛媛県高縄半島および梶島の斑れい岩類・花崗岩類中のジルコンに対してHf同位体組成分析を実施し,白亜紀ユーラシア大陸東縁におけるフレアアップ期のマントルHf同位体組成の変化を議論した。本研究におけるジルコンHf同位体組成分析では,Shimooka et al.(2019, 2023)でのジルコンU-Pb年代測定に使用した同一粒子の同一スポットを測定点とした。得られた176Hf/177Hf比についてコンドライト組成未分化マントル(CHUR; Iizuka et al., 2015, PNAS)の値を用いて,同一スポットのU-Pb年代をもとにεHf (t)を算出した。当地域の花崗岩類のεHf (t)は-8.9〜1.0の範囲を示し,斑れい岩類のεHf (t)は-7.1〜0.0の範囲を示す。このように,当地域の花崗岩類のジルコンHf同位体組成は斑れい岩類と類似する。このことは,斑れい岩類の部分溶融による花崗岩質マグマの生成とその後の上昇・固結過程において,既存の地殻物質の同化作用が極めて限られていたことを強く示唆する。また,DM線から低εHf (t)側に外れたHf同位体組成は,この地域における白亜紀大規模火成作用を駆動したマントル物質がエンリッチしていたことを示している。
 これまでの白亜紀ユーラシア大陸東縁についてのテクトニクスモデルでは,94〜85 Maにマントルウェッジへアセノスフェリックマントルが流入することに伴い,エンリッチしたマントルがデプリートしたマントルに改変されたと考えられている(Wu et al., 2019, Annu. Rev. Earth Planet. Sci.; Cheong et al., 2023, Geosci. Front.)。一方で,本研究でのややエンリッチした同位体組成の特徴は,Cheong et al.(2023)が示した“ヤングリソスフェリックマントル”(〜110 Ma)の同位体組成(εHf (t) = -5〜0)と類似する.このことは110 Ma以降もマントルウェッジの最も海溝側にヤングリソスフェリックマントルが存在したことを示唆する(Figure 1.)。
 このように,高縄半島および梶島に分布する深成岩類は,白亜紀フレアアップ期の最も海溝側のマグマ生成プロセスを記録しており,西南日本においてエンリッチした苦鉄質下部地殻の形成に始まる花崗岩質マグマ生成プロセスを記録した代表的な地質体であると考えられる。

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