Presentation Information
[T7-P-4]Study of Paleogene to Neogene kinematic history of the Median Tectonic Line of western Shikoku, south-west Japan.
*Yasu'uchi KUBOTA1, Toru TAKESHITA2 (1. OYO Corp., 2. Pacific Consultants Co., Ltd.)
Keywords:
Median Tectonic Line,kinematic history,Paleogene,Neogene
1. 研究経緯
中央構造線(Median Tectonic Line; MTL)の古第三紀の運動像について、市之川フェーズ(59 Ma)はMTLが大規模な正断層運動を行う運動時相であること、その後の先砥部フェーズ(47-46 Ma)は、MTLに平行~雁行配列する内帯の断層群が左横ずれ逆断層運動により形成された運動時相であることが示されている(Kubota and Takeshita 2008; Kubota et al. 2020)。ここではMTLの破砕帯の一部に認められた市之川フェーズの北フェルゲンツ褶曲に重複するN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲を形成する断層運動については今後の課題として挙げられている。この断層運動の解明に向けて、筆者らは四国西部の愛媛県西条市丹原町中山川河岸に位置するMTLの湯谷口露頭において、先第四紀のtop-to-the-Eastのcataclasiteを記載し、形成時期が45~16Maに限定されると報告した(窪田・竹下, 2023)。本論では、四国西部のMTL沿いにおける同様の変形構造の調査結果を報告する。
2. 調査結果
松山市久谷町の久谷川露頭久谷川の東側河岸において露頭観察、試料採取、研磨片・薄片観察による構造地質学的な手法による変形構造の解析を行った(本露頭は松山市指定天然記念物に近接する箇所であるため、松山市に連絡の上、許可を得て試料採取した)。本露頭は、南側の下部中新統の久万層群(砂岩礫岩層)と北側の上部白亜系の和泉層群(砂岩泥岩層)が断層接触しており、約3.3km西方に位置する砥部衝上断層から連続するMTLである。断層面の走向傾斜はEW 35°Nであり、露頭観察により、北から次の通り区分した。A帯:和泉層群の砂岩泥岩互層が著しく変形したcataclasite zone(幅5m程度)、B帯:gouge zone(幅2~3cm)、C帯:久万層群のcataclasite zone(幅0.4~1.0m程度)、D帯:久万層群が断層引きずりによる向斜構造を形成しており、断層から幅5m程度の範囲で北傾斜の層理面からなる逆転層が分布する。このうち、B帯は和泉層群および久万層群が破砕されたgouge からなり、条線(Rake10-50°W)や複合面構造が発達しており、C帯を切る。研磨片観察によりtop-to-the NW~WNWの変形センスが確認された。C帯は礫岩が細礫状に破砕されて配列したり、弱い複合面構造が形成されており、研磨片観察により、top-to-the SEの変形センスが確認された。
3. 考察
松山市久谷川露頭で記載したC帯および後変形のD帯は、久万層群堆積後の変形であることから、久万層群堆積期の南北伸張18~16Ma(新正・折橋, 2021など)以降のMTLの運動であると考えられる。このうち、C帯のtop-to-the SEの変位センスは、和泉層群が久万層群に衝上して、久万層群側に転倒褶曲が形成される断層運動に整合するものであるため、砥部フェーズ(15Ma)の変位と考えられる。これまでに、Shigematsu et al. (2017)のStage2;top-to-the-East(dextral-reverse)や窪田・竹下(2023)のtop-to-the-Eastの変形が報告されており、同時期の変位である可能性がある。また、B帯のtop-to-the NW~WNWは、C帯の後変形であり、砥部衝上断層露頭における高木他(1992)の観察に極めて類似する。この変形について高木他(1992)は、年代測定にもとづいて正断層性の石鎚フェーズ(14-10Ma)の変位であると報告している。また、Shigematsu et al. (2017)はStage3;top-to-the-West(sinistral-normal)とStage4;Normalの変位センスを記載しており、同時期に形成されたと考えられる。MTLのtop-to-the SEの運動は、課題として上述したN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲(Kubota and Takeshita, 2008)と関連する可能性がある。また、top-to-the NW~WNWも合わせた新第三紀の変形が広域的に分布する可能性があるが、今後、年代測定等の追加調査が必要と考えられる。
(文献)Kubota & Takeshita, 2008, Isl. Arc, 17, 129-151.; Kubota et al., 2020, Tectonics, 39.; 窪田・竹下, 2023 日本地質学会学術大会講演要旨.; 高木他, 1992, 地雑, 98, 1069-1072.; Shigematsu et al., 2017, Tectono., 696-697, 52-69.; 新正・折橋, 2021, 地雑, 127, 595-603.
中央構造線(Median Tectonic Line; MTL)の古第三紀の運動像について、市之川フェーズ(59 Ma)はMTLが大規模な正断層運動を行う運動時相であること、その後の先砥部フェーズ(47-46 Ma)は、MTLに平行~雁行配列する内帯の断層群が左横ずれ逆断層運動により形成された運動時相であることが示されている(Kubota and Takeshita 2008; Kubota et al. 2020)。ここではMTLの破砕帯の一部に認められた市之川フェーズの北フェルゲンツ褶曲に重複するN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲を形成する断層運動については今後の課題として挙げられている。この断層運動の解明に向けて、筆者らは四国西部の愛媛県西条市丹原町中山川河岸に位置するMTLの湯谷口露頭において、先第四紀のtop-to-the-Eastのcataclasiteを記載し、形成時期が45~16Maに限定されると報告した(窪田・竹下, 2023)。本論では、四国西部のMTL沿いにおける同様の変形構造の調査結果を報告する。
2. 調査結果
松山市久谷町の久谷川露頭久谷川の東側河岸において露頭観察、試料採取、研磨片・薄片観察による構造地質学的な手法による変形構造の解析を行った(本露頭は松山市指定天然記念物に近接する箇所であるため、松山市に連絡の上、許可を得て試料採取した)。本露頭は、南側の下部中新統の久万層群(砂岩礫岩層)と北側の上部白亜系の和泉層群(砂岩泥岩層)が断層接触しており、約3.3km西方に位置する砥部衝上断層から連続するMTLである。断層面の走向傾斜はEW 35°Nであり、露頭観察により、北から次の通り区分した。A帯:和泉層群の砂岩泥岩互層が著しく変形したcataclasite zone(幅5m程度)、B帯:gouge zone(幅2~3cm)、C帯:久万層群のcataclasite zone(幅0.4~1.0m程度)、D帯:久万層群が断層引きずりによる向斜構造を形成しており、断層から幅5m程度の範囲で北傾斜の層理面からなる逆転層が分布する。このうち、B帯は和泉層群および久万層群が破砕されたgouge からなり、条線(Rake10-50°W)や複合面構造が発達しており、C帯を切る。研磨片観察によりtop-to-the NW~WNWの変形センスが確認された。C帯は礫岩が細礫状に破砕されて配列したり、弱い複合面構造が形成されており、研磨片観察により、top-to-the SEの変形センスが確認された。
3. 考察
松山市久谷川露頭で記載したC帯および後変形のD帯は、久万層群堆積後の変形であることから、久万層群堆積期の南北伸張18~16Ma(新正・折橋, 2021など)以降のMTLの運動であると考えられる。このうち、C帯のtop-to-the SEの変位センスは、和泉層群が久万層群に衝上して、久万層群側に転倒褶曲が形成される断層運動に整合するものであるため、砥部フェーズ(15Ma)の変位と考えられる。これまでに、Shigematsu et al. (2017)のStage2;top-to-the-East(dextral-reverse)や窪田・竹下(2023)のtop-to-the-Eastの変形が報告されており、同時期の変位である可能性がある。また、B帯のtop-to-the NW~WNWは、C帯の後変形であり、砥部衝上断層露頭における高木他(1992)の観察に極めて類似する。この変形について高木他(1992)は、年代測定にもとづいて正断層性の石鎚フェーズ(14-10Ma)の変位であると報告している。また、Shigematsu et al. (2017)はStage3;top-to-the-West(sinistral-normal)とStage4;Normalの変位センスを記載しており、同時期に形成されたと考えられる。MTLのtop-to-the SEの運動は、課題として上述したN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲(Kubota and Takeshita, 2008)と関連する可能性がある。また、top-to-the NW~WNWも合わせた新第三紀の変形が広域的に分布する可能性があるが、今後、年代測定等の追加調査が必要と考えられる。
(文献)Kubota & Takeshita, 2008, Isl. Arc, 17, 129-151.; Kubota et al., 2020, Tectonics, 39.; 窪田・竹下, 2023 日本地質学会学術大会講演要旨.; 高木他, 1992, 地雑, 98, 1069-1072.; Shigematsu et al., 2017, Tectono., 696-697, 52-69.; 新正・折橋, 2021, 地雑, 127, 595-603.
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