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[T7-P-5]Emplacement age of the serpentinite intruded within Northern Chichibu Belt and Kurosegawa Belt, western Shikoku Island

Kengo NISHIKAWA2, *Tomohiro TSUJI1, Tohru DANHARA3, Hideki IWANO3, Takafumi HIRATA4 (1. Yamaguchi University, 2. Former Yamaguchi University, 3. Kyoto Fission-Track Co., Ltd., 4. Tokyo University)
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※Change presenter:Kengo NISHIKAWA→Tomohiro TSUJI

Keywords:

Serpentinite,Chichibu Belt,Chromium spinel,Vitrinite reflectance,Zircon U-Pb dating

【はじめに】超苦鉄質岩が地下深部で水と反応して変質・変成した岩石である蛇紋岩は、年代の情報が限りなく少ない岩石である.また,蛇紋岩は地質学的に重要な構造境界に産する(磯崎ほか, 2010)ことから,地質構造形成史を解明するうえで蛇紋岩の定置時期の年代値は欠かせない.しかし,秩父帯や黒瀬川帯に産する蛇紋岩の定置時期に関しては多様な見解(平野ほか, 1973; 土谷, 1982など)があり,その統一性はない.そのため本研究では,秩父帯・黒瀬川帯に産する蛇紋岩の定置年代を制約することを目的とする.その手法として,高知県梼原町で発見した蛇紋岩片を含む砕屑岩に対して,①露頭・鏡下観察,②クロムスピネルの化学組成分析,③ビトリナイト反射率の測定,そして④砕屑性ジルコンの年代測定を行った.
【地質概説】対象地域は四国カルストの南麓である高知県梼原町越知面地域である.当地域は北部秩父帯に分布しており,そのユニット区分は北域より大野ヶ原ユニット(ペルム紀付加体),四万川ユニット(トリアス紀変成岩類),そして白亜紀堆積岩類である.その内,蛇紋岩体は各ユニットの境界付近に主に分布する.
【結果】本研究で得られた結果(①~④)を以下に示す。
①砕屑岩の分布域は白亜紀堆積岩類(太田戸層)中であり,その走向傾斜はN50˚ W, 68˚ NEであった.また,その特徴は,全体的に黒色を呈し,礫は淘汰が悪く,円礫から亜円礫を含む.さらに,その礫サイズは2~4 mmほどの細礫が中心であり,泥質から極細粒砂ある基質に支持されている.また,岩片として泥岩,砂岩,火山岩とともに蛇紋岩や緑泥石を多く含む.
②クロムスピネルの化学組成分析より,砕屑岩中のクロムスピネルと当地域の蛇紋岩体のクロムスピネルの類似性を検討した.使用した分析機器は,山口大学機器分析センタ―JXA-8230型EPMAである.砕屑岩中クロムスピネルは,組成像観察よりリム部または全体が変質している.多少のばらつきは認められるが,明瞭なコア部は高いXCrかつ低いXMg,低いTiO2含有量であり,変質部やリム部ではクロムスピネルがフェリットクロマイト化している.また,砕屑岩中のクロムスピネルには火山岩由来と推定される粒子が含まれる.これらのコア部の組成やリム部のフェリットクロマイト化の傾向は,当地域の蛇紋岩中のクロムスピネルとの類似性している.
③砕屑岩中のビトリナイト反射率を測定することにより,周囲の地質体との熱的影響度の対比を行った.使用した機器はISO(7404-5)に準じたオリンパス社製偏光顕微鏡BX-51である.試料から重液分離した炭質物を用いて反射率を100点測定した.その結果,得られた平均反射率は1.00%であった.
④詳細な砕屑岩の年代値を得るために,砕屑岩中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定を実施した.ジルコンの分離は,北野ほか(2014)の手法を基に行った.測定は東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設のLA-ICP-MSシステムにて行った.測定したジルコンの粒子数は45粒子である.得られたコンコーダント粒子のうち最若粒子集団(n = 5)の206Pb/238U年代は129.3±2.2 Maであった.
【考察】砕屑岩中のクロムスピネルは,コア部の化学組成の特徴や蛇紋岩体との類似性から,その多くが蛇紋岩などの超塩基性岩由来であり,その供給源は当地域にみられる蛇紋岩と推察される.また,砕屑岩は,その分布域と砕屑岩中のビトリナイト反射率がSakaguchi(1999)で得られた測定値と調和的であることより,白亜紀堆積岩(太田戸層)に帰属すると考えられる.その堆積年代は前期白亜紀上部オーデリビアン~下部バレミアン(約124~129 Ma)(田中ほか, 1984;香西ほか, 1991)であるため,その堆積時期以前には蛇紋岩が地表に定置していたと考えられる.また,この堆積年代は,砕屑岩中の砕屑性ジルコンの年代値と一部重複するため,確度の高い情報であるといえる.つまり,当調査地を含む秩父帯・黒瀬川帯の蛇紋岩は,前期白亜紀下部バレミアン以前には地表に定置していたと考えられる.
【引用文献】平野ほか(1973) 岩鉱, 68, 132-137. 磯崎ほか(2010)地学雑誌, 119, 999-1053.北野ほか(2014)比較社会文化. 20, 1-10. 香西ほか(1991)高知大学学術研究報告, 40, 223-236. Sakaguchi(1999)The Island Arc, 8, 359-372. 田中ほか(1984)高知大学学術研究報告, 32, 215-223. 土谷(1982)地質調査所月報, 33, 381-387.

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