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[T7-P-9]Spreading process of the Mariana Trough using geomagnetic anomaly data★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*Seitaro Ono1, Kyoko OKINO1, Nobukazu SEAMA2 (1. Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo, 2. Kobe University)
Keywords:
back-arc spreading,Mariana Trough,magnetic anomaly
地磁気異常データを用いたマリアナトラフの拡大過程Spreading process of the Mariana Trough using geomagnetic anomaly data マリアナトラフは,太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込むことにより形成された,現在でも活動的な背弧海盆である.マリアナトラフは地形の特徴から北部,中部,南部の3つの地域に分けることができる.これまでに3つのそれぞれの地域で地磁気異常データの解析を元に拡大開始年代や拡大速度が考察されてきたが,マリアナトラフ全体の形成史について総合的な研究はなかった.本研究ではマリアナトラフ全体の地形,地磁気異常を解釈することで,拡大開始から現在までの拡大過程を考察する.世界の背弧海盆の中でも,地形・地磁気異常データが全域で得られている場は稀であり,本研究によって背弧海盆の形成過程に新たな知見を与えることが期待できる.
本研究に用いたデータは,海底地形データ,地磁気異常z成分の2種類である.海底地形データは研究調査船「よこすか」,「かいれい」,「白鳳丸」によるY96-13,YK99-11-Leg2,YK00-13,YK01-11,YK03-09,YK09-08,YK10-10,YK10-15,KR98-12,KR02-14,KR03-13,KR05-17,KR06-12,KH92-1の14航海でのマルチナロービーム測深器で測定された.これらのデータを用いて50mグリッドの地形データを作成し,データが不足している部分はKitada et al(2006)の0.1分グリッドの地形データで補完して,マリアナトラフ全体の地形データを作成した.地磁気データは,研究調査船「よこすか」,「かいれい」,「白鳳丸」による Y96-13,YK99-11-Leg2,YK01-11,YK03-09,YK08-08 Leg1,2,YK09-08,YK10-10,YK10-12,YK10-15,YK12-11,YK14-13,YK15-11,KR97-11,KR98-12,KR00-03,KR02-01,KR02-14, KR03-13,KR05-17,KR16-14,KH92-1の21航海で,船上3成分磁力計によって取得された.マリアナトラフが磁気赤道に近い場所での東西拡大であること,水平ジャイロコンパスの不調により地磁気異常水平成分の精度が悪いデータがあったことから,本研究では地磁気異常z成分を使用した.まずIsezaki(1986)の手法を用いて船体磁化の影響を補正し,Parker and Huestis(1974)のインバージョン手法を用いて,船体磁化補正した地磁気異常z成分を海底下の磁化強度に変換した.
作成した詳細地形図の解釈に基づき,拡大軸,セグメント境界,リフティングと海底拡大の境界を認定した.現在の拡大軸は計18個の2次のセグメントに分かれているが,セグメント長は拡大開始から一定ではなく,セグメントの盛衰や分離・融合があったことが明らかになった.特に中部地域では約3Maに海底地形の線構造の走向が大きく変化している.また,海底下の磁化強度分布からは縞状異常の特徴が明らかになり,地形を考慮した二次元ブロックモデルを仮定した地磁気異常のフォワードモデリングを行うことで,セグメントごとに縞状異常の同定を行った.海盆の西縁は,西マリアナ海嶺(古島弧)に接しており,最も古い磁気縞状異常は,中部でC3An.2n_young(約6.4Ma),北部でC2An.3n_old(約3.6Ma),南部でC2An.1n_young(約2.6Ma)であった.海盆の東縁は西側に比べて磁気縞状異常が出にくく,これは火成活動が重なることで元の海盆部分が隠されてしまっていることが原因であると考えられる.また各セグメントでの拡大速度を比較した結果,拡大軸の西側は東側と比べて約5mm/yr大きく,両側拡大速度は,北部のセグメント1での25mm/yrから,南部のセグメント18では49mm/yrとなっており,北部より南部の方が拡大速度が大きい傾向があった.またKato et al (2003)のGPS観測によって決定されたオイラー極・角速度から推定される海底拡大速度と比較すると,特に北部で本研究の拡大速度と一致しない.これはKato et al(2003)では 21°Nから 23°Nのリフティングの影響を考慮せずにオイラー極を計算していることに起因すると考えられる.また本研究で同定した拡大軸の方向と海底拡大速度を元に,Goudarzi et al(2014)の手法を用いてオイラー極の推定を試みた.その結果,オイラー極はKato et al(2003)のものより北側になり,拡大速度の大きさは観測の結果とよく一致したが,拡大速度の南北差が大きく剛体運動の影響は小さいと解釈できる.
参考文献 :
Mohammad Ali Goudarzi, Marc Cocard, and Rock Santerre, “EPC: Matlab Software to Estimate Euler Pole Parameters,” GPS Solutions 18, no. 1 (January 2014): 153–62, https://doi.org/10.1007/s10291-013-0354-4;
Nobuhiro Isezaki, “A New Shipboard Three‐component Magnetometer,” GEOPHYSICS 51, no. 10 (October 1986): 1992–98, https://doi.org/10.1190/1.1442054;
Teruyuki Kato et al., “Geodetic Evidence of Back-Arc Spreading in the Mariana Trough: GEODETIC EVIDENCE OF BACK-ARC SPREADING IN THE MARIANA TROUGH,” Geophysical Research Letters 30, no. 12 (June 2003), https://doi.org/10.1029/2002GL016757;
Kazuya Kitada et al., “Distinct Regional Differences in Crustal Thickness along the Axis of the Mariana Trough, Inferred from Gravity Anomalies,” Geochemistry, Geophysics, Geosystems 7, no. 4 (April 2006): 2005GC001119, https://doi.org/10.1029/2005GC001119;
L. Parker and S. P. Huestis, “The Inversion of Magnetic Anomalies in the Presence of Topography,” Journal of Geophysical Research 79, no. 11 (April 10, 1974): 1587–93, https://doi.org/10.1029/JB079i011p01587.
本研究に用いたデータは,海底地形データ,地磁気異常z成分の2種類である.海底地形データは研究調査船「よこすか」,「かいれい」,「白鳳丸」によるY96-13,YK99-11-Leg2,YK00-13,YK01-11,YK03-09,YK09-08,YK10-10,YK10-15,KR98-12,KR02-14,KR03-13,KR05-17,KR06-12,KH92-1の14航海でのマルチナロービーム測深器で測定された.これらのデータを用いて50mグリッドの地形データを作成し,データが不足している部分はKitada et al(2006)の0.1分グリッドの地形データで補完して,マリアナトラフ全体の地形データを作成した.地磁気データは,研究調査船「よこすか」,「かいれい」,「白鳳丸」による Y96-13,YK99-11-Leg2,YK01-11,YK03-09,YK08-08 Leg1,2,YK09-08,YK10-10,YK10-12,YK10-15,YK12-11,YK14-13,YK15-11,KR97-11,KR98-12,KR00-03,KR02-01,KR02-14, KR03-13,KR05-17,KR16-14,KH92-1の21航海で,船上3成分磁力計によって取得された.マリアナトラフが磁気赤道に近い場所での東西拡大であること,水平ジャイロコンパスの不調により地磁気異常水平成分の精度が悪いデータがあったことから,本研究では地磁気異常z成分を使用した.まずIsezaki(1986)の手法を用いて船体磁化の影響を補正し,Parker and Huestis(1974)のインバージョン手法を用いて,船体磁化補正した地磁気異常z成分を海底下の磁化強度に変換した.
作成した詳細地形図の解釈に基づき,拡大軸,セグメント境界,リフティングと海底拡大の境界を認定した.現在の拡大軸は計18個の2次のセグメントに分かれているが,セグメント長は拡大開始から一定ではなく,セグメントの盛衰や分離・融合があったことが明らかになった.特に中部地域では約3Maに海底地形の線構造の走向が大きく変化している.また,海底下の磁化強度分布からは縞状異常の特徴が明らかになり,地形を考慮した二次元ブロックモデルを仮定した地磁気異常のフォワードモデリングを行うことで,セグメントごとに縞状異常の同定を行った.海盆の西縁は,西マリアナ海嶺(古島弧)に接しており,最も古い磁気縞状異常は,中部でC3An.2n_young(約6.4Ma),北部でC2An.3n_old(約3.6Ma),南部でC2An.1n_young(約2.6Ma)であった.海盆の東縁は西側に比べて磁気縞状異常が出にくく,これは火成活動が重なることで元の海盆部分が隠されてしまっていることが原因であると考えられる.また各セグメントでの拡大速度を比較した結果,拡大軸の西側は東側と比べて約5mm/yr大きく,両側拡大速度は,北部のセグメント1での25mm/yrから,南部のセグメント18では49mm/yrとなっており,北部より南部の方が拡大速度が大きい傾向があった.またKato et al (2003)のGPS観測によって決定されたオイラー極・角速度から推定される海底拡大速度と比較すると,特に北部で本研究の拡大速度と一致しない.これはKato et al(2003)では 21°Nから 23°Nのリフティングの影響を考慮せずにオイラー極を計算していることに起因すると考えられる.また本研究で同定した拡大軸の方向と海底拡大速度を元に,Goudarzi et al(2014)の手法を用いてオイラー極の推定を試みた.その結果,オイラー極はKato et al(2003)のものより北側になり,拡大速度の大きさは観測の結果とよく一致したが,拡大速度の南北差が大きく剛体運動の影響は小さいと解釈できる.
参考文献 :
Mohammad Ali Goudarzi, Marc Cocard, and Rock Santerre, “EPC: Matlab Software to Estimate Euler Pole Parameters,” GPS Solutions 18, no. 1 (January 2014): 153–62, https://doi.org/10.1007/s10291-013-0354-4;
Nobuhiro Isezaki, “A New Shipboard Three‐component Magnetometer,” GEOPHYSICS 51, no. 10 (October 1986): 1992–98, https://doi.org/10.1190/1.1442054;
Teruyuki Kato et al., “Geodetic Evidence of Back-Arc Spreading in the Mariana Trough: GEODETIC EVIDENCE OF BACK-ARC SPREADING IN THE MARIANA TROUGH,” Geophysical Research Letters 30, no. 12 (June 2003), https://doi.org/10.1029/2002GL016757;
Kazuya Kitada et al., “Distinct Regional Differences in Crustal Thickness along the Axis of the Mariana Trough, Inferred from Gravity Anomalies,” Geochemistry, Geophysics, Geosystems 7, no. 4 (April 2006): 2005GC001119, https://doi.org/10.1029/2005GC001119;
L. Parker and S. P. Huestis, “The Inversion of Magnetic Anomalies in the Presence of Topography,” Journal of Geophysical Research 79, no. 11 (April 10, 1974): 1587–93, https://doi.org/10.1029/JB079i011p01587.
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