Presentation Information
[T7-P-15]Evaluation of mechanical fault activity: Slip Tendency (ST) as an indicator of potential activity in geological faults
under modern stress field.
A case study of geological faults in Shimane Prefecture, SW Japan
*Masaya SHIMADA1, Hideki MUKOYOSHI1 (1. Shimane Univ)
Keywords:
fault activity,slip-tendency,modern stress
はじめに
島根県には宍道断層(中田・後藤,1998)を含め,複数の活断層の存在が報告されている.しかし,実際に発生している内陸型歴史地震の多くは,これら活断層の報告が無い場所で発生している.例えば,2000年の鳥取県西部地震(M=7.3)は活断層の存在が従来知られていなかった地域で発生した.また,山陰地域の活断層の特徴として,断層地形に乏しい未成熟な活断層が多く存在するという指摘がある(岡田,2002).これは断層地形判読のみでは抽出することができていない活断層が存在している可能性が高く,地質断層(非活断層)とされる断層の中に,地形的に見落とされるが,実際は活動的な断層が存在している可能性を示している.そこで,本研究では地質断層の中に見落とされている活動性の高い断層が,どの程度存在しているか確認することを目的とし,島根県に存在する断層に対して「力学的な断層活動性評価手法」であるslip tendency(以下STとする)(Morris et al.,1996)を用いて活動性の評価を行った.また,ST値が高い地質断層に関して露頭調査を行った.
力学的な活断層評価手法STについて
STは断層に作用する応力下において断層の姿勢に対する動きやすさを表す.断層面に働く剪断応力τと垂直応力σの比で計算され,主応力軸の方向と応力比から計算することができる.値は0≦ST<1で規格化される(大坪,2016).
結果
島根県内の断層115条に対して計算し,半数の57条でST値が0.7以上と高い値を示すことが明らかになった.これは,地質断層とされる多くの断層が,現世応力場での活動性が高い可能性を示している.また先行研究で計算された東北の断層のST値 (Miyakawa and Otsubo,2017)と島根県内の断層のST値を比較した.東北では活断層と地質断層でST値に明瞭な違いがみられる.一方で,島根県では断層115条のうち,半数の57条でST値が0.7以上と高い値を持つことが明らかとなり,活断層に加え地質断層においても高いST値を持つ特徴がみられた.また,高いST値を示した地質断層の露頭調査を行ったところ,複合面構造や条線の関係から現世応力場で動いた可能性を示す痕跡が認められた.
考察
断層がST 値の高いものから順に活動していくとすると,東北における ST値の高い断層は,既に繰り返し活動し,断層地形が発達した状態であるため,活断層として成熟した状態であると考えられる.そのため,ST 値の高い断層は既に地形判読等により活断層として認識されている断層である.一方で,島根県における ST 値の高い断層は,先行研究で未熟な断層と指摘されている(岡田,2002)ように,活動回数が少なく,累積変位量も小さいために,断層地形が不明瞭である可能性がある.そのため地形判読等による断層の評価が難しく,活動性が見落とされている可能性がある.島根県のST 値の高い断層は,今後更に活動することにより活断層として成熟していくものと考えられる.
まとめ
島根県内の断層に対してSTによる活動性の評価を行った.結果,活断層に加え地質断層においてもST値が高い断層が多く存在することが明らかになった.また実際に高いST値を持つ,地質断層の露頭調査を行ったところ,現世応力場で動いた可能性を示す痕跡が見られた.本研究では,「力学的な断層活動性評価手法」である ST を用いて評価を行い,加えて結果をもとに露頭調査を行った.山陰地域のような断層地形に乏しい地域では,地形判読のみではなく,STを用いて,現世応力場で動いた可能性のある断層を抽出し,現地調査と合わせて評価を行うことが有効であると考えられる.
引用文献
Miyakawa A, Otsubo M., 2017, Evolution of crustal deformation in the northeast–central Japanese island arc: Insights from fault activity. Island Arc, 26:e12179. https://doi.org/10.1111/iar.12179.
Morris, A., Ferrill, D. A., & Henderson, D. B., 1996,Slip-tendency analysis and fault reactivation, Geology, 24, 275-278.
中田 高・後藤秀昭,1998,活断層はどこまで割れるのか?-横ずれ断層の分岐形態と横ずれ分布に着目したセグメント区分モデルー.活断層研究,17,43-53.
岡田篤正,2002,山陰地方の活断層の諸特徴,活断層研究, 22, 17-32.
大坪誠,2016,長期の断層活動性を評価する手法の開発を目指して:手法の紹介とその適用事例,GSJ 地質ニュース,5- ,235-239
島根県には宍道断層(中田・後藤,1998)を含め,複数の活断層の存在が報告されている.しかし,実際に発生している内陸型歴史地震の多くは,これら活断層の報告が無い場所で発生している.例えば,2000年の鳥取県西部地震(M=7.3)は活断層の存在が従来知られていなかった地域で発生した.また,山陰地域の活断層の特徴として,断層地形に乏しい未成熟な活断層が多く存在するという指摘がある(岡田,2002).これは断層地形判読のみでは抽出することができていない活断層が存在している可能性が高く,地質断層(非活断層)とされる断層の中に,地形的に見落とされるが,実際は活動的な断層が存在している可能性を示している.そこで,本研究では地質断層の中に見落とされている活動性の高い断層が,どの程度存在しているか確認することを目的とし,島根県に存在する断層に対して「力学的な断層活動性評価手法」であるslip tendency(以下STとする)(Morris et al.,1996)を用いて活動性の評価を行った.また,ST値が高い地質断層に関して露頭調査を行った.
力学的な活断層評価手法STについて
STは断層に作用する応力下において断層の姿勢に対する動きやすさを表す.断層面に働く剪断応力τと垂直応力σの比で計算され,主応力軸の方向と応力比から計算することができる.値は0≦ST<1で規格化される(大坪,2016).
結果
島根県内の断層115条に対して計算し,半数の57条でST値が0.7以上と高い値を示すことが明らかになった.これは,地質断層とされる多くの断層が,現世応力場での活動性が高い可能性を示している.また先行研究で計算された東北の断層のST値 (Miyakawa and Otsubo,2017)と島根県内の断層のST値を比較した.東北では活断層と地質断層でST値に明瞭な違いがみられる.一方で,島根県では断層115条のうち,半数の57条でST値が0.7以上と高い値を持つことが明らかとなり,活断層に加え地質断層においても高いST値を持つ特徴がみられた.また,高いST値を示した地質断層の露頭調査を行ったところ,複合面構造や条線の関係から現世応力場で動いた可能性を示す痕跡が認められた.
考察
断層がST 値の高いものから順に活動していくとすると,東北における ST値の高い断層は,既に繰り返し活動し,断層地形が発達した状態であるため,活断層として成熟した状態であると考えられる.そのため,ST 値の高い断層は既に地形判読等により活断層として認識されている断層である.一方で,島根県における ST 値の高い断層は,先行研究で未熟な断層と指摘されている(岡田,2002)ように,活動回数が少なく,累積変位量も小さいために,断層地形が不明瞭である可能性がある.そのため地形判読等による断層の評価が難しく,活動性が見落とされている可能性がある.島根県のST 値の高い断層は,今後更に活動することにより活断層として成熟していくものと考えられる.
まとめ
島根県内の断層に対してSTによる活動性の評価を行った.結果,活断層に加え地質断層においてもST値が高い断層が多く存在することが明らかになった.また実際に高いST値を持つ,地質断層の露頭調査を行ったところ,現世応力場で動いた可能性を示す痕跡が見られた.本研究では,「力学的な断層活動性評価手法」である ST を用いて評価を行い,加えて結果をもとに露頭調査を行った.山陰地域のような断層地形に乏しい地域では,地形判読のみではなく,STを用いて,現世応力場で動いた可能性のある断層を抽出し,現地調査と合わせて評価を行うことが有効であると考えられる.
引用文献
Miyakawa A, Otsubo M., 2017, Evolution of crustal deformation in the northeast–central Japanese island arc: Insights from fault activity. Island Arc, 26:e12179. https://doi.org/10.1111/iar.12179.
Morris, A., Ferrill, D. A., & Henderson, D. B., 1996,Slip-tendency analysis and fault reactivation, Geology, 24, 275-278.
中田 高・後藤秀昭,1998,活断層はどこまで割れるのか?-横ずれ断層の分岐形態と横ずれ分布に着目したセグメント区分モデルー.活断層研究,17,43-53.
岡田篤正,2002,山陰地方の活断層の諸特徴,活断層研究, 22, 17-32.
大坪誠,2016,長期の断層活動性を評価する手法の開発を目指して:手法の紹介とその適用事例,GSJ 地質ニュース,5- ,235-239
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