Presentation Information
[T15-P-15]Petrological characteristics of serpentinite-derived chloritite in contact with rodingite from the Nukabira complex and/or Sarugawa complex in the Kamuikotan Zone, Hokkaido, Japan.
*Toyoto AZUMA1,5, Takayuki KATOH2,5, Satoshi OKAMURA3,5, Jun TAKAKURA4 (1. Hidaka Mountains Museum, 2. Earth Science Co., Ltd, 3. Hokkaido Soil Research Cooperative Association, 4. Archaeological Research Centre, Hokkaido University, 5. Hokkaido Research Center of Geology)
Keywords:
serpentinite-origin,rodingite,metasomatism,chloritite,Nukabira complex,Sarugawa complex
はじめに 神居古潭帯を流れる沙流川流域で,ロジン岩と接する蛇紋岩中に透明度の高い緑泥石濃集部のある試料を発見した.岡村ほか(2018,日本地質学会学術大会講演要旨)の北海道内の縄文時代遺跡の遺物として発見される透明度が高い緑泥石岩の産地とは異なるため,今回発見した試料の岩石学的特徴の検討を行なった.
産状・肉眼記載 本研究で検討する試料は3つ(Saru001,Saru002,Saru003:以下S1,S2,S3)で,上流部に沙流川岩体(新井田・加藤,1978,地団研専報)および糠平岩体(加藤・中川,1986,地団研専報)の2つの超苦鉄質岩体が分布する三号の沢を含む沙流川上流域で発見された.いずれも白色のロジン岩と接している部分で透明度の高い緑泥石部が形成され,ロジン岩部は変形を蒙っている.S1の緑泥石部は淡緑色で透明度が極めて高く,緑泥石とクロムスピネルが確認できる.S2の緑泥石部は緑色~暗緑色でブロック状に散在し,構造的変形を蒙っている.緑泥石部にもロジン岩脈が生成している.S3の緑泥石部はロジン岩部周辺のみで,全体としては構造的変形を蒙った蛇紋岩である.結晶度の高い白色の脈が,蛇紋岩部の構造的破砕面を伝い,試料全体を横断して緑泥石部にも侵入している.
偏光顕微鏡記載 ロジン岩部は,原岩組織が不明瞭である.S1では,原岩組織である斜長石および石基の仮像が認められ,緑泥石部境界付近ではアパタイト,カルセドナイト,チタン石が形成され,緑泥石(干渉色暗緑灰色)+カルセドナイト+Tiザクロ石の細脈が緑泥石部まで貫いている.S2・3では,細脈中にTiザクロ石,アパタイト,緑泥石(干渉色帯黄茶色)が認められる.S3では単斜輝石からなる脈が試料全体を横断している.緑泥石部は,スピネル+緑泥石+Tiザクロ石からなる.スピネルは自形~他形で赤褐色を示す.Tiザクロ石は赤色細粒でロジン岩部境界付近に認められる.緑泥石は,一部はインクブルーや帯黄茶色の異常干渉色を示し,脈状またはプール状で散在している.S1では,炭酸塩鉱物+緑泥石脈(干渉色暗緑灰色)が認められる.S2・3では,リザルダイト-クリソタイルの蛇紋岩組織がわずかに残存しており,それらを置換して緑泥石が形成されている.
化学分析 エネルギー分散型EPMA(EDS)装置搭載走査型電子顕微鏡JSM-IT200(LA) による鉱物化学分析を行なった.ロジン岩部では,透輝石,緑泥石,ペクトライト,透閃石,アパタイト,Ti-Caザクロ石,チタン石などが確認された.緑泥石部のスピネルはTiO2wt%=0.04~0.22,Cr#=0.54~0.80,Mg#=0.33~0.61である.緑泥石は,Si=5.55~6.51,Fe=0.25~1.96, 3.83~4.00,形成温度はCathelineau (1988,Clay Miner)では170~330℃ほどの範囲で,Siに乏しいものは>280℃である.また,未検討だがCeを多量に含む鉱物がS1で確認された.
考察 ロジン岩の原岩については,Ti含有鉱物の形成や鉱物組み合わせ,斜長石仮像から,とくにS1では,アルカリ玄武岩と推察される.アルカリ岩は,糠平岩体・沙流川岩体に接する岩清水層群で緑色岩として見出されており(例えば,植田,2006,地質雑),本試料は上記岩体に岩清水層群のアルカリ岩起源の緑色岩が取り込まれ,ロジン岩化作用を蒙ったと考えられる.糠平岩体ロジン岩中のTiザクロ石脈のU-Pb年代(50.6±4Ma,木村ほか,2021,日本鉱物科学会年会講演要旨;仁木ほか,2020,日本地球化学会年会)を考慮すると,この年代に緑色岩がロジン岩化作用を蒙った可能性もある.緑泥石部については,緑泥石部に含まれるスピネルの組成や残存する蛇紋岩の組織と仮像から,沙流川岩体および糠平岩体のダナイト~ハルツバージャイト源蛇紋岩から形成されたと考えられる.神居古潭帯ニセウ川周辺の透明度の高い緑泥石岩は,超苦鉄質岩と貫入した微閃緑岩とのAl交代作用で形成したと考えられた(岡村ほか,2018,前出).本研究では,透明度の高い緑泥石部は,磁鉄鉱ダストをほとんど生産しない蛇紋岩化作用で形成されたメッシュ組織がそのまま緑泥石化作用(Al交代作用)を蒙っており,形成には低温下のAl交代作用が必要である.このAl供給源については,取り込んだ緑色岩化したアルカリ玄武岩のAl含有量が多いことを考えると,近傍で蛇紋岩化作用が起こっていれば,緑色岩のロジン岩化の過程でAlが蛇紋岩側へ移動・濃集することも可能である.このことは,岡村ほか(2018,前出)の場合にも,Al供給源を冷却した貫入岩に求めることが可能であることを意味する.
産状・肉眼記載 本研究で検討する試料は3つ(Saru001,Saru002,Saru003:以下S1,S2,S3)で,上流部に沙流川岩体(新井田・加藤,1978,地団研専報)および糠平岩体(加藤・中川,1986,地団研専報)の2つの超苦鉄質岩体が分布する三号の沢を含む沙流川上流域で発見された.いずれも白色のロジン岩と接している部分で透明度の高い緑泥石部が形成され,ロジン岩部は変形を蒙っている.S1の緑泥石部は淡緑色で透明度が極めて高く,緑泥石とクロムスピネルが確認できる.S2の緑泥石部は緑色~暗緑色でブロック状に散在し,構造的変形を蒙っている.緑泥石部にもロジン岩脈が生成している.S3の緑泥石部はロジン岩部周辺のみで,全体としては構造的変形を蒙った蛇紋岩である.結晶度の高い白色の脈が,蛇紋岩部の構造的破砕面を伝い,試料全体を横断して緑泥石部にも侵入している.
偏光顕微鏡記載 ロジン岩部は,原岩組織が不明瞭である.S1では,原岩組織である斜長石および石基の仮像が認められ,緑泥石部境界付近ではアパタイト,カルセドナイト,チタン石が形成され,緑泥石(干渉色暗緑灰色)+カルセドナイト+Tiザクロ石の細脈が緑泥石部まで貫いている.S2・3では,細脈中にTiザクロ石,アパタイト,緑泥石(干渉色帯黄茶色)が認められる.S3では単斜輝石からなる脈が試料全体を横断している.緑泥石部は,スピネル+緑泥石+Tiザクロ石からなる.スピネルは自形~他形で赤褐色を示す.Tiザクロ石は赤色細粒でロジン岩部境界付近に認められる.緑泥石は,一部はインクブルーや帯黄茶色の異常干渉色を示し,脈状またはプール状で散在している.S1では,炭酸塩鉱物+緑泥石脈(干渉色暗緑灰色)が認められる.S2・3では,リザルダイト-クリソタイルの蛇紋岩組織がわずかに残存しており,それらを置換して緑泥石が形成されている.
化学分析 エネルギー分散型EPMA(EDS)装置搭載走査型電子顕微鏡JSM-IT200(LA) による鉱物化学分析を行なった.ロジン岩部では,透輝石,緑泥石,ペクトライト,透閃石,アパタイト,Ti-Caザクロ石,チタン石などが確認された.緑泥石部のスピネルはTiO2wt%=0.04~0.22,Cr#=0.54~0.80,Mg#=0.33~0.61である.緑泥石は,Si=5.55~6.51,Fe=0.25~1.96, 3.83~4.00,形成温度はCathelineau (1988,Clay Miner)では170~330℃ほどの範囲で,Siに乏しいものは>280℃である.また,未検討だがCeを多量に含む鉱物がS1で確認された.
考察 ロジン岩の原岩については,Ti含有鉱物の形成や鉱物組み合わせ,斜長石仮像から,とくにS1では,アルカリ玄武岩と推察される.アルカリ岩は,糠平岩体・沙流川岩体に接する岩清水層群で緑色岩として見出されており(例えば,植田,2006,地質雑),本試料は上記岩体に岩清水層群のアルカリ岩起源の緑色岩が取り込まれ,ロジン岩化作用を蒙ったと考えられる.糠平岩体ロジン岩中のTiザクロ石脈のU-Pb年代(50.6±4Ma,木村ほか,2021,日本鉱物科学会年会講演要旨;仁木ほか,2020,日本地球化学会年会)を考慮すると,この年代に緑色岩がロジン岩化作用を蒙った可能性もある.緑泥石部については,緑泥石部に含まれるスピネルの組成や残存する蛇紋岩の組織と仮像から,沙流川岩体および糠平岩体のダナイト~ハルツバージャイト源蛇紋岩から形成されたと考えられる.神居古潭帯ニセウ川周辺の透明度の高い緑泥石岩は,超苦鉄質岩と貫入した微閃緑岩とのAl交代作用で形成したと考えられた(岡村ほか,2018,前出).本研究では,透明度の高い緑泥石部は,磁鉄鉱ダストをほとんど生産しない蛇紋岩化作用で形成されたメッシュ組織がそのまま緑泥石化作用(Al交代作用)を蒙っており,形成には低温下のAl交代作用が必要である.このAl供給源については,取り込んだ緑色岩化したアルカリ玄武岩のAl含有量が多いことを考えると,近傍で蛇紋岩化作用が起こっていれば,緑色岩のロジン岩化の過程でAlが蛇紋岩側へ移動・濃集することも可能である.このことは,岡村ほか(2018,前出)の場合にも,Al供給源を冷却した貫入岩に求めることが可能であることを意味する.
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