Presentation Information
[T15-P-19]A Chichibu upland is a flexure basin, reverse fault and compounding crustal alteration zone of a way flexure.
*SADAYOSHI NAITO1 (1. None)
Keywords:
Chichibu zone,Chichibu upland,Flexure basin,Layers fault,Way flexure
・秩父盆地に対する記述
埼玉県の秩父盆地を中心に東西13~15㎞、南北10~13㎞の地域に積算層厚が5,000mにたっする新第三系が分布する。二枚貝類・束柱類・ヒゲクジラ類・ハクジラ類・鰭脚類、板鰓類、鳥類・亀類などの化石が多く、古くから多くの研究が進められてきた。(日本の地質3 関東地方110p.1986)
この地域の新第三系は、盆地西部と北東端では走向が南北方向、北部では東西方向で、全体として逆S字型(井尻ほか1950)あるいはZ字型(渡ほか、1950)の構造をしている。(日本の地質3 関東地方110p.1986)
・地球科学に関する地元民の認識
1978年~81年の3年間で「武甲山総合調査会」が秩父市、横瀬町で組織された。当時はまだプレートテクトニクスの考え方は紹介されておらず、秩父湾は温暖な気候でサンゴやウミユリが栄えた秩父古生層があって、サメやクジラが泳いでいたという認識であった。
中学校現場では堀口万吉埼玉大学教授が監修した「関東創生記」が地元銀行から全県の小中学校に提供された。秩父盆地の地層は10㎞の厚さがあっていわゆる「地向斜造山運動論」で物語が進められた。前後半が実写、中間を「アースオデッセイ号の冒険」というアニメの挿入で、時代の流れを進めていた。
現在は秩父盆地の層厚は5㎞、一部では2.5㎞ということになっている。ところが現実には、「大陸移動」の考えさえ、秩父地方には入ってきていないように思える。
秩父盆地は、周辺の山々から土砂の落石があって、地層ができあがったという考えを、つい先頃講演会で耳にした。秩父帯は一部石炭紀を含み、ペルム紀からジュラ紀のメランジュで構成されているということは周知されているが、秩父帯の南帯と北帯が、秩父盆地より先に隆起していたという証拠はこれまで明らかにされてこなかった。ここで初めて秩父盆地より後に北帯、南帯が隆起したと述べる。
秩父盆地や秩父山地(伊豆・小笠原弧の北上による櫛形山山塊、御坂山塊、丹沢山塊とはその形成過程によって、関東山地とは区別している。) の時代と層序を述べてみたいと考えた。中央構造線の北上とハの字構造を説明する材料になれば幸甚である。
・秩父は撓曲盆地
地層が左右に引っ張られると正断層が出来、左右から押されると逆断層ができる。ところが地層が柔らかいと上方に隆起する。この微妙な地層の堅さ、柔らかさが秩父では撓曲盆地となり、三峰口駅の西方200メートルの地点で逆断層を引き起こして秩父山地の隆起をもたらしたと考えている。
・先に述べたように、盆地の東西南北で走向も傾斜も大きく変化しているので、ここでは秩父市南方の秩父鉄道浦山口駅を起点として、西方の三峰口駅までの東西で第三系地層の傾斜を見てみる。浦山口駅付近は標高240m、三峰口駅は標高320mで7,3㎞の距離がある。通常なら国道140号線で10分程度である。
・浦山口近くの巴川付近には広大な第三紀層が広がっている。傾斜は10数度程度。
・140号線を4.4㎞進むと荒川橋を通過する。ここの国道は通常だれもその傾斜に気がつかないが、冬季、対岸に見通しの良い場所があり、30度の傾斜があることが見て取れる。
・ここから1㎞程進むと、国道の右側に露頭があって、傾斜は60度である。
・西に800m進むと数年前に工事した橋の下には露頭が見えて、走向はほぼ南北、70度前後の東傾斜になる。近くの橋の工事の時、橋の土台になった地層は攪乱があり、傾斜は同様だが、走向には乱れがあった。
・この手前の平和橋下では、河床に70~0度程度の地層が見え、ほぼ90度の地層も観測できる。第三紀層が、盆地周辺で大きく上方に撓曲したことが推論できる。
・秩父山地の隆起について
ナウマン博士は明治10年代に日本を訪れ、秩父で数回の調査訪問を行ったようである。大陸移動説が世に受け入れられる遙か昔のことでもあり、その真上に長逗留した博士にも、伊豆・小笠原島弧の北上が原因だったとは思いもかけなかったことであろうと思う。
秩父山地の構造は複雑である。単なる逆断層で説明できるとは考えていない。秩父市大滝・中津川の出合付近には、活撓曲を思わせるデコルマン(滑り面)の連続する地域がある。
層状断層の存在を確実化する状況である。発表で図示したい。
【引用文献】産総研(2018)南部フォッサマグナ(伊豆衝突帯)の歴史を凝縮した身延地域の地質図を刊行、岡野裕一(2018)地球科学72巻143-152、兵頭浩(2008)秩父盆地新第三系の地質と古地磁気、静岡大学学術リポジトリ、高橋雅紀(1992)中部日本の新第三紀テクトニクスにおける中新世秩父盆地の地質学域位置、埼玉県立自然史博物館研究報告第10号、29-45、NHKBS(2024.2.17)体感!グレートネイチャーロマンティック!ライン激動の記憶ドイツ・スイス
埼玉県の秩父盆地を中心に東西13~15㎞、南北10~13㎞の地域に積算層厚が5,000mにたっする新第三系が分布する。二枚貝類・束柱類・ヒゲクジラ類・ハクジラ類・鰭脚類、板鰓類、鳥類・亀類などの化石が多く、古くから多くの研究が進められてきた。(日本の地質3 関東地方110p.1986)
この地域の新第三系は、盆地西部と北東端では走向が南北方向、北部では東西方向で、全体として逆S字型(井尻ほか1950)あるいはZ字型(渡ほか、1950)の構造をしている。(日本の地質3 関東地方110p.1986)
・地球科学に関する地元民の認識
1978年~81年の3年間で「武甲山総合調査会」が秩父市、横瀬町で組織された。当時はまだプレートテクトニクスの考え方は紹介されておらず、秩父湾は温暖な気候でサンゴやウミユリが栄えた秩父古生層があって、サメやクジラが泳いでいたという認識であった。
中学校現場では堀口万吉埼玉大学教授が監修した「関東創生記」が地元銀行から全県の小中学校に提供された。秩父盆地の地層は10㎞の厚さがあっていわゆる「地向斜造山運動論」で物語が進められた。前後半が実写、中間を「アースオデッセイ号の冒険」というアニメの挿入で、時代の流れを進めていた。
現在は秩父盆地の層厚は5㎞、一部では2.5㎞ということになっている。ところが現実には、「大陸移動」の考えさえ、秩父地方には入ってきていないように思える。
秩父盆地は、周辺の山々から土砂の落石があって、地層ができあがったという考えを、つい先頃講演会で耳にした。秩父帯は一部石炭紀を含み、ペルム紀からジュラ紀のメランジュで構成されているということは周知されているが、秩父帯の南帯と北帯が、秩父盆地より先に隆起していたという証拠はこれまで明らかにされてこなかった。ここで初めて秩父盆地より後に北帯、南帯が隆起したと述べる。
秩父盆地や秩父山地(伊豆・小笠原弧の北上による櫛形山山塊、御坂山塊、丹沢山塊とはその形成過程によって、関東山地とは区別している。) の時代と層序を述べてみたいと考えた。中央構造線の北上とハの字構造を説明する材料になれば幸甚である。
・秩父は撓曲盆地
地層が左右に引っ張られると正断層が出来、左右から押されると逆断層ができる。ところが地層が柔らかいと上方に隆起する。この微妙な地層の堅さ、柔らかさが秩父では撓曲盆地となり、三峰口駅の西方200メートルの地点で逆断層を引き起こして秩父山地の隆起をもたらしたと考えている。
・先に述べたように、盆地の東西南北で走向も傾斜も大きく変化しているので、ここでは秩父市南方の秩父鉄道浦山口駅を起点として、西方の三峰口駅までの東西で第三系地層の傾斜を見てみる。浦山口駅付近は標高240m、三峰口駅は標高320mで7,3㎞の距離がある。通常なら国道140号線で10分程度である。
・浦山口近くの巴川付近には広大な第三紀層が広がっている。傾斜は10数度程度。
・140号線を4.4㎞進むと荒川橋を通過する。ここの国道は通常だれもその傾斜に気がつかないが、冬季、対岸に見通しの良い場所があり、30度の傾斜があることが見て取れる。
・ここから1㎞程進むと、国道の右側に露頭があって、傾斜は60度である。
・西に800m進むと数年前に工事した橋の下には露頭が見えて、走向はほぼ南北、70度前後の東傾斜になる。近くの橋の工事の時、橋の土台になった地層は攪乱があり、傾斜は同様だが、走向には乱れがあった。
・この手前の平和橋下では、河床に70~0度程度の地層が見え、ほぼ90度の地層も観測できる。第三紀層が、盆地周辺で大きく上方に撓曲したことが推論できる。
・秩父山地の隆起について
ナウマン博士は明治10年代に日本を訪れ、秩父で数回の調査訪問を行ったようである。大陸移動説が世に受け入れられる遙か昔のことでもあり、その真上に長逗留した博士にも、伊豆・小笠原島弧の北上が原因だったとは思いもかけなかったことであろうと思う。
秩父山地の構造は複雑である。単なる逆断層で説明できるとは考えていない。秩父市大滝・中津川の出合付近には、活撓曲を思わせるデコルマン(滑り面)の連続する地域がある。
層状断層の存在を確実化する状況である。発表で図示したい。
【引用文献】産総研(2018)南部フォッサマグナ(伊豆衝突帯)の歴史を凝縮した身延地域の地質図を刊行、岡野裕一(2018)地球科学72巻143-152、兵頭浩(2008)秩父盆地新第三系の地質と古地磁気、静岡大学学術リポジトリ、高橋雅紀(1992)中部日本の新第三紀テクトニクスにおける中新世秩父盆地の地質学域位置、埼玉県立自然史博物館研究報告第10号、29-45、NHKBS(2024.2.17)体感!グレートネイチャーロマンティック!ライン激動の記憶ドイツ・スイス
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