Presentation Information
[T15-P-21]Formation ages of the Oligocene to Middle Miocene strata in the Toyama basin, SW Japan
*Raiki YAMADA1 (1. Japan Atomic Energy Agency)
Keywords:
Zircon U-Pb dating,Toyama basin,Japan Sea opening,Oligocene,Miocene
日本列島の背弧側には日本海拡大(44–15 or 13.5 Ma1–2)の時期に形成された,秋田堆積区,新潟堆積区,北陸堆積区そして山陰堆積区という大きく4つの堆積区(積成区とも;sedimentary province)が存在する3–4.日本海拡大に伴う地質イベントを陸域で理解するためには,これらの堆積区の詳細な形成プロセスを明らかにすることが大きな鍵となるだろう.特に北陸堆積区には日本海拡大初期~末期の地層が広く分布するため,日本海拡大を議論する上で重要な地域と言える5.
北陸堆積区の中軸部には日本海拡大期の23–15 Maごろに大きく沈降した領域があり,それを富山堆積盆と呼ぶ(富山積成盆地とも6).下位から南砺層群(23–18 Ma),八尾層群(18–15 Ma),砺波層群(15–2 Ma)が堆積盆を埋積しており7–8,特に前者2つの層群が日本海拡大期に形成されたと考えられる.南砺層群は,河川~暴風時波浪限界水深(SWB)以浅の堆積物と火砕流堆積物からなる.八尾層群は下部が安山岩を主体とする陸成層から,中部が安山岩~流紋岩を含むSWB以浅の陸~浅海成層から,上部はSWB以深の海成層からなる.本研究では,南砺層群と八尾層群から試料を採取し,日本原子力研究開発機構東濃地科学センター設置の高速多点フェムト秒レーザーを接続した多重検出型誘導結合プラズマ質量分析装置(msfsLA-MC-ICP-MS)を用いてジルコンU–Pb年代測定を行った.
南砺層群の城端層(溶結凝灰岩)からは22.8 ± 0.2 Ma(±2σ;以下同様)の,楡原層(流紋岩礫)からは18.0 ± 0.1 MaのジルコンU–Pb年代が得られた.また,八尾層群の岩稲層(軽石質火山礫凝灰岩)からは17.0 ± 0.1 Maの,医王山層(流紋岩溶岩)からは16.9 ± 0.1 MaのジルコンU–Pb年代が得られた.なお,測定結果により楡原層のみTera-Wasserburgコンコーディア図上のlower intercept年代を算出し,それ以外は全て238U–206Pb加重平均年代を算出した.
これらのジルコンU–Pb年代の結果は,富山堆積盆の発達史に関して以下のような新たな視点を与えている.1つ目は,南砺層群の形成年代は約5 Myrの大きな幅を持つという点である.城端層と楡原層はその岩相と上位の地層との関係から,同じ地層として扱われたり9,異なる同層準の地層と考えられたりしてきたこともある8.今回の結果は,両層間に時間間隙の大きい不整合が存在する可能性も否定できないことを示しており,堆積盆形成初期の地史と岩相層序対比に対して再考を迫るものである.2つ目は,岩稲層と医王山層は古地磁気層序10も加味すると,<0.5 Myrという地質学的にごく短期間で形成されたという点である.両層はそれぞれ層厚が1000 mを超え分布域も非常に広い火山岩からなるため(岩稲層相当層だけで>5000 km3の体積がある),富山堆積盆の最も重要な構成要素である.このような火成活動が非常に短期間で発生したことは,現在の日本列島の火山活動と比較しても異常に高い噴出率の巨大な火成活動が起きたことを意味する.以上のように,本研究によるmsfsLA-MC-ICP-MSを用いた高精度なジルコンU–Pb年代測定の結果に基づいて,富山堆積盆の発達史を先行研究よりも詳細に議論することが可能となった.
本研究は,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性総合評価技術開発)(JPJ007597)」の成果の一部である.
引用文献
1鹿野,2018.地質雑,124,781–803.
2中嶋,2018.地質雑,124,693–722.
3松本・池辺,1958.地球科学,37,17–28.
4鈴木,1989.地質学論集,32,143–183.
5山田・高橋,2021.地質雑,127,507–525.
6坂本ほか,1959.地調月報,10,75–82.
7中嶋ほか,2019.地質雑,125,483–516.
8山田ほか,2023.日本地質学会第130年学術大会,T15-P-19.
9山崎・宮島,1970.岩石鉱物鉱床学会誌,63,22–27.
10Tamaki et al., 2006. Bull. Geol. Surv. Japan, 57, 73–88.
北陸堆積区の中軸部には日本海拡大期の23–15 Maごろに大きく沈降した領域があり,それを富山堆積盆と呼ぶ(富山積成盆地とも6).下位から南砺層群(23–18 Ma),八尾層群(18–15 Ma),砺波層群(15–2 Ma)が堆積盆を埋積しており7–8,特に前者2つの層群が日本海拡大期に形成されたと考えられる.南砺層群は,河川~暴風時波浪限界水深(SWB)以浅の堆積物と火砕流堆積物からなる.八尾層群は下部が安山岩を主体とする陸成層から,中部が安山岩~流紋岩を含むSWB以浅の陸~浅海成層から,上部はSWB以深の海成層からなる.本研究では,南砺層群と八尾層群から試料を採取し,日本原子力研究開発機構東濃地科学センター設置の高速多点フェムト秒レーザーを接続した多重検出型誘導結合プラズマ質量分析装置(msfsLA-MC-ICP-MS)を用いてジルコンU–Pb年代測定を行った.
南砺層群の城端層(溶結凝灰岩)からは22.8 ± 0.2 Ma(±2σ;以下同様)の,楡原層(流紋岩礫)からは18.0 ± 0.1 MaのジルコンU–Pb年代が得られた.また,八尾層群の岩稲層(軽石質火山礫凝灰岩)からは17.0 ± 0.1 Maの,医王山層(流紋岩溶岩)からは16.9 ± 0.1 MaのジルコンU–Pb年代が得られた.なお,測定結果により楡原層のみTera-Wasserburgコンコーディア図上のlower intercept年代を算出し,それ以外は全て238U–206Pb加重平均年代を算出した.
これらのジルコンU–Pb年代の結果は,富山堆積盆の発達史に関して以下のような新たな視点を与えている.1つ目は,南砺層群の形成年代は約5 Myrの大きな幅を持つという点である.城端層と楡原層はその岩相と上位の地層との関係から,同じ地層として扱われたり9,異なる同層準の地層と考えられたりしてきたこともある8.今回の結果は,両層間に時間間隙の大きい不整合が存在する可能性も否定できないことを示しており,堆積盆形成初期の地史と岩相層序対比に対して再考を迫るものである.2つ目は,岩稲層と医王山層は古地磁気層序10も加味すると,<0.5 Myrという地質学的にごく短期間で形成されたという点である.両層はそれぞれ層厚が1000 mを超え分布域も非常に広い火山岩からなるため(岩稲層相当層だけで>5000 km3の体積がある),富山堆積盆の最も重要な構成要素である.このような火成活動が非常に短期間で発生したことは,現在の日本列島の火山活動と比較しても異常に高い噴出率の巨大な火成活動が起きたことを意味する.以上のように,本研究によるmsfsLA-MC-ICP-MSを用いた高精度なジルコンU–Pb年代測定の結果に基づいて,富山堆積盆の発達史を先行研究よりも詳細に議論することが可能となった.
本研究は,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性総合評価技術開発)(JPJ007597)」の成果の一部である.
引用文献
1鹿野,2018.地質雑,124,781–803.
2中嶋,2018.地質雑,124,693–722.
3松本・池辺,1958.地球科学,37,17–28.
4鈴木,1989.地質学論集,32,143–183.
5山田・高橋,2021.地質雑,127,507–525.
6坂本ほか,1959.地調月報,10,75–82.
7中嶋ほか,2019.地質雑,125,483–516.
8山田ほか,2023.日本地質学会第130年学術大会,T15-P-19.
9山崎・宮島,1970.岩石鉱物鉱床学会誌,63,22–27.
10Tamaki et al., 2006. Bull. Geol. Surv. Japan, 57, 73–88.
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