Presentation Information
[T15-P-25]Correlation of the Middle Miocene ash-flow tuff in the Inner Zone of the Kii Peninsula based on heavy mineral chemistry★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*Daiki TSUJIMOTO1, Reishi TAKASHIMA2, Takaharu SATO3, Azumi KUROYANAGI2 (1. Department of EARTH SCIENCE, Tohoku University, 2. The Center for Academic Resources and Archives Tohoku University Museum, 3. Osaka Museum of Natural History)
Keywords:
Middle Miocene,The Muro Ignimbrite,apatite,biotite,caldera
はじめに
西南日本には現在の火山フロントよりも海溝に極めて近い位置に中期中新世に生成された大規模な珪長質火成岩体が分布している.これらの火成岩体は西南日本形成時の特異なテクトニクスによって形成されたと考えられ,その放射年代や化学組成などが盛んに検討されてきた (Shinjoe et al., 2019など).紀伊半島の外帯には中期中新世に活動したカルデラが複数存在することが知られており,熊野カルデラ,熊野北カルデラ,大台カルデラ,大峯カルデラ等があげられる.また,紀伊半島の内帯には外帯のカルデラに由来すると考えられている凝灰岩が点在しており,室生火砕流堆積物,石仏凝灰岩,玉手山凝灰岩等がある.これら外帯の各カルデラと内帯に分布する凝灰岩は,近年,アパタイト微量元素組成を用いることにより,対比がなされるようになった (Takashima et al., 2021).しかし,凝灰岩の一部にはアパタイトを含まないものもあり,対比に関して未解決な点が多く残されている.本研究では,これら内帯の中新世中期の凝灰岩類に対して,アパタイト微量元素組成と黒雲母の化学組成を用いてより詳細な対比を試みた.
地質概説
室生火砕流堆積物は異質岩片を多く含む火砕流堆積物である基底相,結晶ガラス質溶結凝灰岩である主部相に分けられる (室生団研・八尾,2008).基底相と主部相下部はアパタイトを豊富に含むが,主部相中部~上部は,一部の層準(フローユニット)しかアパタイトを含まない.石仏凝灰岩は基底部でアパタイトを多く産出するが,中部~上部はアパタイトを含まない.室生火砕流堆積物主部相下部および石仏凝灰岩の下部の給源が大台カルデラであることはアパタイト微量元素組成の分析結果から明らかになっている (Takashima et al., 2021).
アパタイト微量元素組成
差杉峠近傍に露出する室生火砕流堆積物基底相のアパタイト微量元素組成を検討したところ,屏風岩セクションの室生火砕流堆積物基底相と一致する.また,室生火砕流堆積物基底相の値は大峯カルデラの火砕岩脈と非常に近い値を示すが,マグネシウムと鉄の含有量でわずかな相違がみられた.
黒雲母元素組成
内帯に分布する中新世中期の凝灰岩のなかには,アパタイトを含まない層準も多く存在する.そこで本研究ではアパタイト含まない層準の凝灰岩の対比を補完するために,黒雲母元素組成を検討した.その結果,石仏凝灰岩上部および玉手山凝灰岩が室生火砕流堆積物の主部相中・上部とほとんど同じ値を示すことが明らかになった.これにより石仏凝灰岩上部および玉手山凝灰岩は室生火砕流堆積物の主部相中・上部相当層にあたると考えられる.
引用文献
室生団体研究グループ・八尾昭,2008,室生火砕流堆積物の給源火山.地球科学,62, 97-108.
Shinjoe, H., Orihashi, Y. and Anma, R., 2019, U-Pb ages of Miocene near-trench granite rocks of the Southwest Japan arc: implications for magmatism related to hot subduction. Geological Magazine, 158, 47-71.
Takashima, R., Hoshi, H., Wada, Y. and Shinjoe, H., 2021, Identification of the source caldera for the Middle Miocene ash-flow tuffs in the Kii Peninsula based on apatite trace-element composition. Island Arc, 30.
西南日本には現在の火山フロントよりも海溝に極めて近い位置に中期中新世に生成された大規模な珪長質火成岩体が分布している.これらの火成岩体は西南日本形成時の特異なテクトニクスによって形成されたと考えられ,その放射年代や化学組成などが盛んに検討されてきた (Shinjoe et al., 2019など).紀伊半島の外帯には中期中新世に活動したカルデラが複数存在することが知られており,熊野カルデラ,熊野北カルデラ,大台カルデラ,大峯カルデラ等があげられる.また,紀伊半島の内帯には外帯のカルデラに由来すると考えられている凝灰岩が点在しており,室生火砕流堆積物,石仏凝灰岩,玉手山凝灰岩等がある.これら外帯の各カルデラと内帯に分布する凝灰岩は,近年,アパタイト微量元素組成を用いることにより,対比がなされるようになった (Takashima et al., 2021).しかし,凝灰岩の一部にはアパタイトを含まないものもあり,対比に関して未解決な点が多く残されている.本研究では,これら内帯の中新世中期の凝灰岩類に対して,アパタイト微量元素組成と黒雲母の化学組成を用いてより詳細な対比を試みた.
地質概説
室生火砕流堆積物は異質岩片を多く含む火砕流堆積物である基底相,結晶ガラス質溶結凝灰岩である主部相に分けられる (室生団研・八尾,2008).基底相と主部相下部はアパタイトを豊富に含むが,主部相中部~上部は,一部の層準(フローユニット)しかアパタイトを含まない.石仏凝灰岩は基底部でアパタイトを多く産出するが,中部~上部はアパタイトを含まない.室生火砕流堆積物主部相下部および石仏凝灰岩の下部の給源が大台カルデラであることはアパタイト微量元素組成の分析結果から明らかになっている (Takashima et al., 2021).
アパタイト微量元素組成
差杉峠近傍に露出する室生火砕流堆積物基底相のアパタイト微量元素組成を検討したところ,屏風岩セクションの室生火砕流堆積物基底相と一致する.また,室生火砕流堆積物基底相の値は大峯カルデラの火砕岩脈と非常に近い値を示すが,マグネシウムと鉄の含有量でわずかな相違がみられた.
黒雲母元素組成
内帯に分布する中新世中期の凝灰岩のなかには,アパタイトを含まない層準も多く存在する.そこで本研究ではアパタイト含まない層準の凝灰岩の対比を補完するために,黒雲母元素組成を検討した.その結果,石仏凝灰岩上部および玉手山凝灰岩が室生火砕流堆積物の主部相中・上部とほとんど同じ値を示すことが明らかになった.これにより石仏凝灰岩上部および玉手山凝灰岩は室生火砕流堆積物の主部相中・上部相当層にあたると考えられる.
引用文献
室生団体研究グループ・八尾昭,2008,室生火砕流堆積物の給源火山.地球科学,62, 97-108.
Shinjoe, H., Orihashi, Y. and Anma, R., 2019, U-Pb ages of Miocene near-trench granite rocks of the Southwest Japan arc: implications for magmatism related to hot subduction. Geological Magazine, 158, 47-71.
Takashima, R., Hoshi, H., Wada, Y. and Shinjoe, H., 2021, Identification of the source caldera for the Middle Miocene ash-flow tuffs in the Kii Peninsula based on apatite trace-element composition. Island Arc, 30.
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