Presentation Information
[T15-P-30]Volcanic stratigraphy in Dozono district, Mashiki town, Kumamoto Prefecture based on the comparispn between drilled cores and surface geology.
*Reina KAIHARA1, Kiyokazu OOHASHI2, Tomohiro TSUJI1, Susumu SHIBUTANI3 (1. Yamaguchi University, 2. AIST, 3. Chi-ken Sogo Consultants Co.,Ltd)
Keywords:
Futagawa Fault Zone,Volcanism,Volcanic stratigraphy,Pyroclastic flow deposit,Magnetic
2016年熊本地震を引き起こした布田川断層帯では,主に右横ずれの地表変位が断層に沿って出現した(Shirahama et al., 2016).一方,布田川断層帯では約9万年前に噴出した高遊原溶岩の約100 mの北落ち鉛直隔離(渡辺・小野,1969)や,中期更新世以降の200 m以上の累積鉛直隔離が認められている(Shibutani et al., 2022).また、改原ほか(2024)では阿蘇1火砕流堆積物基底面で310 mの累積鉛直隔離が見出された.一般的に地震の長期予測や地殻の安定性評価において,活断層の運動方向や変位速度は第四紀を通して一様であると見なされている.これに関して,大橋ほか(2020)では,布田川断層帯が約9万年前の大規模なマグマの放出に同期して正断層活動をした後,火山活動の停止とともに現在の右横ずれ主体の運動に変化したと考えた.そのため,布田川断層帯の活動史を考えるうえで,阿蘇火山活動の影響と火山層序は重要である.しかし,阿蘇1~3火砕流堆積物は岩相が非常に似ているため判別が困難である.このような火山層序の対比を行う場合,複数地点で測定した帯磁率の上下変化をみることは有効である.
そこで本研究は,掘削コアと地表露頭において岩相と帯磁率等の特徴から層序対比を高度化し,布田川断層帯周辺の火山層序を議論することを目的とする.
2016年に掘削された1本の深部掘削コア(FDB-1),2本の浅部掘削コア(FDP-1,FDP-2)(京都大学,2018)と2021年に掘削された浅部掘削コア1本(FFD-1)(山口大学)を用いたボーリングコア観察,帯磁率測定,かさ密度測定,FDP-2コアとボアホールカメラの照合を行った.改原ほか(2024)では,各ユニットを下陳礫層,阿蘇1火砕流堆積物,安山岩質溶岩(阿蘇1/2間溶岩),阿蘇2火砕流堆積物,阿蘇3火砕流堆積物,河川堆積物,阿蘇4火砕流堆積物に区分した(以下,阿蘇火砕流堆積物は阿蘇1~4と略記する).これについて阿蘇2で岩相と帯磁率の結果に特徴的な傾向がみられたため以下に示す.(1)浅部掘削コア(FFD-1,FDP-1,FDP-2)の阿蘇2上部では基質が明灰色で溶結度は低い.また,肉眼では変化がみられなかったが,帯磁率で基質が最上部から下位に向かって15~20 mの幅で緩やかに高くなる(8~20×10-3 (SI Unit)).(2)FFD-1とFDP-2の阿蘇2基底部では下位に向かってスコリアのサイズが小さくなるとともに帯磁率が急激に低下する(30~5×10-3 SI Unit)).また、FFD-1では,この特徴的な層が断層を挟んで2層みられた。これについてFDP-1の阿蘇2下部で同様の層が見られないことから断層によって阿蘇2の基底部がFFD-1に落ち込んでいると考える.掘削コア(FDP-2)とボアホールカメラとの照合から111.15~111.19 m(阿蘇2)で溶結レンズから推定される面構造はほぼ水平である.一方で,133.40 m(阿蘇1上部)の溶結レンズはN67°E,88°Nでありほぼ鉛直な面構造を持つことが分かった.
地表地質踏査の結果からは,ボーリング掘削地点より約1.5 km東方,木山川上流の右岸側には阿蘇1/秋田溶岩,秋田溶岩/阿蘇2境界が露出している.地表での阿蘇2基底部は強溶結で基質と溶結レンズを識別困難である.また、ボーリングコアで見られた阿蘇2基底部での帯磁率の急激な低下はみられない.同露頭に産する秋田溶岩は掘削コアに産する溶岩に比べて帯磁率が5×10-3 (SI Unit)低い等の相違点がみられる.秋田溶岩の露頭とボーリングコア掘削地点との間に位置する木山川下流の右岸側には阿蘇1/2間に溶岩が分布していない(渡辺・小野,1969).本研究地域では阿蘇1/2間に秋田溶岩が堆積すると考えられている(渡辺・小野,1969)が,コア中の溶岩は秋田溶岩とは別の溶岩である可能性が示唆される.
引用文献
大橋聖和・大坪誠・松本聡・小林健太・佐藤活志・西村卓也(2020)地学雑誌,129,565-589.; 京都大学 (2018) 平成29年度原子力規制庁委託成果報告書,管理コード:291507, https://www.nra.go.jp/nra/chotatsu/yosanshikou/itaku_houkoku_h29.html.; Shirahama, Y., Yoshimi, M., Awata, Y., Maruyama, T., Azuma, T., Miyashita, Y., Mori, H., Imanishi, K., Takeda, N., Ochi, T., Otsubo, M., Asahina, D. and Miyakawa, A., (2016)Earth, Planets and Space, 68, doi:10.1186/s40623-016-0559-1.; Shibutani, S. Lin, W. Sado, K. Aizawa, A. Koike, K. (2022) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 23(1), dio: 10.1029/2021GC009966.; 渡辺一徳・小野晃司(1969)地質学雑誌,75,365-374.; 改原玲奈・大橋聖和・辻智大・澁谷奨(2024)国際火山噴火史情報研究集会EHAI 2024-1, 3-02.
そこで本研究は,掘削コアと地表露頭において岩相と帯磁率等の特徴から層序対比を高度化し,布田川断層帯周辺の火山層序を議論することを目的とする.
2016年に掘削された1本の深部掘削コア(FDB-1),2本の浅部掘削コア(FDP-1,FDP-2)(京都大学,2018)と2021年に掘削された浅部掘削コア1本(FFD-1)(山口大学)を用いたボーリングコア観察,帯磁率測定,かさ密度測定,FDP-2コアとボアホールカメラの照合を行った.改原ほか(2024)では,各ユニットを下陳礫層,阿蘇1火砕流堆積物,安山岩質溶岩(阿蘇1/2間溶岩),阿蘇2火砕流堆積物,阿蘇3火砕流堆積物,河川堆積物,阿蘇4火砕流堆積物に区分した(以下,阿蘇火砕流堆積物は阿蘇1~4と略記する).これについて阿蘇2で岩相と帯磁率の結果に特徴的な傾向がみられたため以下に示す.(1)浅部掘削コア(FFD-1,FDP-1,FDP-2)の阿蘇2上部では基質が明灰色で溶結度は低い.また,肉眼では変化がみられなかったが,帯磁率で基質が最上部から下位に向かって15~20 mの幅で緩やかに高くなる(8~20×10-3 (SI Unit)).(2)FFD-1とFDP-2の阿蘇2基底部では下位に向かってスコリアのサイズが小さくなるとともに帯磁率が急激に低下する(30~5×10-3 SI Unit)).また、FFD-1では,この特徴的な層が断層を挟んで2層みられた。これについてFDP-1の阿蘇2下部で同様の層が見られないことから断層によって阿蘇2の基底部がFFD-1に落ち込んでいると考える.掘削コア(FDP-2)とボアホールカメラとの照合から111.15~111.19 m(阿蘇2)で溶結レンズから推定される面構造はほぼ水平である.一方で,133.40 m(阿蘇1上部)の溶結レンズはN67°E,88°Nでありほぼ鉛直な面構造を持つことが分かった.
地表地質踏査の結果からは,ボーリング掘削地点より約1.5 km東方,木山川上流の右岸側には阿蘇1/秋田溶岩,秋田溶岩/阿蘇2境界が露出している.地表での阿蘇2基底部は強溶結で基質と溶結レンズを識別困難である.また、ボーリングコアで見られた阿蘇2基底部での帯磁率の急激な低下はみられない.同露頭に産する秋田溶岩は掘削コアに産する溶岩に比べて帯磁率が5×10-3 (SI Unit)低い等の相違点がみられる.秋田溶岩の露頭とボーリングコア掘削地点との間に位置する木山川下流の右岸側には阿蘇1/2間に溶岩が分布していない(渡辺・小野,1969).本研究地域では阿蘇1/2間に秋田溶岩が堆積すると考えられている(渡辺・小野,1969)が,コア中の溶岩は秋田溶岩とは別の溶岩である可能性が示唆される.
引用文献
大橋聖和・大坪誠・松本聡・小林健太・佐藤活志・西村卓也(2020)地学雑誌,129,565-589.; 京都大学 (2018) 平成29年度原子力規制庁委託成果報告書,管理コード:291507, https://www.nra.go.jp/nra/chotatsu/yosanshikou/itaku_houkoku_h29.html.; Shirahama, Y., Yoshimi, M., Awata, Y., Maruyama, T., Azuma, T., Miyashita, Y., Mori, H., Imanishi, K., Takeda, N., Ochi, T., Otsubo, M., Asahina, D. and Miyakawa, A., (2016)Earth, Planets and Space, 68, doi:10.1186/s40623-016-0559-1.; Shibutani, S. Lin, W. Sado, K. Aizawa, A. Koike, K. (2022) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 23(1), dio: 10.1029/2021GC009966.; 渡辺一徳・小野晃司(1969)地質学雑誌,75,365-374.; 改原玲奈・大橋聖和・辻智大・澁谷奨(2024)国際火山噴火史情報研究集会EHAI 2024-1, 3-02.
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