Presentation Information
[G-P-20]Occurrence of Teragaike Andesite in the southeast Osaka
*Takaharu Sato1, Takuya YAMAGUCHI2 (1. Osaka Museum of Natural History, 2. Kansai University)
Keywords:
middle Miocene,Setouchi Province,high-magnesian andesite,lava flow
概要 寺ヶ池安山岩は中期中新世に瀬戸内区に噴出した高マグネシア安山岩である(Tatsumi & Ishizaka, 1981;巽,2003)。寺ヶ池安山岩の規模が先行研究(原田ほか,1963)より大きい溶岩であることが判明したので報告する.本調査は寺ヶ池(大阪府河内長野市)西岸の広い範囲に石器石材となりうる安山岩が散布されていた(山口,2024)ことを契機としておこなった.
先行研究 寺ヶ池の西側に南北方向の尾根を持つ,標高約160m,比高約50mの丘陵がみられ,大阪層群(鮮新-更新統)と段丘堆積層,および,安山岩が分布する.原田ほか(1963)によると,丘陵西部の小範囲に風化した花崗片麻岩がみられ,これを覆って厚さ約60cm の灰色泥岩,その上に,緻密で灰黒色の板状節理をもつ安山岩が重なるとしている.安山岩と泥岩との境界面はN50°E,40˚NWであり,板状節理の走向・傾斜はN70˚E,20~25˚Nと記載されている(原田ほか,1963).現在(2024年)の露頭条件では溶岩の下位層と岩体は確認されないが,板状節理の走向・傾斜は原田ほか(1963)に一致している.
調査結果 原田ほか(1963)の示した安山岩の分布地点は大阪層群に覆われて,いったん露頭欠如となる.今回の調査では,この分布地点より約100m北側から,丘陵北端部までの約400mの範囲に安山岩の露頭を確認した.本報告では,原田ほか(1963)の安山岩分布域を南部,北側約100mより300mまでを中部,この先の約100mの丘陵北端部までを北部に区分する.中部と北部は,前者が南部と同じように板状節理を示すのに対し,後者はブロック状節理から柱状節理を示し,加えて,気泡が含まれることで区分される.
岩石記載 南部~北部のすべてで,斑晶に直方輝石とかんらん石が含まれる.直方輝石のモード量は南部で1.85~2.06%(微斑晶を含めると,2.19~2.36%,以下( )内は微斑晶を含めた数),中部で1.44%(1.94%),北部で0.75%と,南部から北部へ少なくなる.また,南部と中部には集斑状の直方輝石や直方輝石の集積岩が含まれることがある.かんらん石斑晶は南部で0.63~1.33%(0.75~1.36%),中部で0.63% と少なくなり,北部ではわずかな量となる.石基は南部でガラス基流晶質組織,中部ではそれに加えて塡間状組織の部分がみられ,北部では全体が塡間状組織である.石基鉱物はおもに,斜長石と直方輝石で,南部での石基鉱物のサイズ(長径0.05mm)は中部・北部(長径0.1mm)に比べて細粒である.
溶岩流の復元 ガラス基流晶質組織のなかに,南から北へのマグマの流動方向が推定される.これは安山岩溶岩が基底で下位層に北傾斜(N50°E,40˚NW)で重なる(原田ほか,1963)ことと一致し,寺ヶ池安山岩はより南側の火道から噴出し,北傾斜の古地形面を流れ下った可能性を示す.
引用文献:原田哲朗ほか(1963)近畿地方の新期新生代層の研究Ⅲ:大阪南方,和泉地域の大阪層群.地球科学,66:1-8.巽 好幸(2003)安山岩と大陸の起源 ローカルからグローバルへ.東京大学出版会,213p.Tatsumi, Y. and Ishizaka, K. (1981) Existence of andesitic primary magma; An example from southwest Japan. Earth Planet Sci Lett 53: 50-71.山口卓也(2024)大阪府富田林・河内長野の火山岩産出地と嶽山龍泉寺西採集の石器.阡陵,88:6-9.
先行研究 寺ヶ池の西側に南北方向の尾根を持つ,標高約160m,比高約50mの丘陵がみられ,大阪層群(鮮新-更新統)と段丘堆積層,および,安山岩が分布する.原田ほか(1963)によると,丘陵西部の小範囲に風化した花崗片麻岩がみられ,これを覆って厚さ約60cm の灰色泥岩,その上に,緻密で灰黒色の板状節理をもつ安山岩が重なるとしている.安山岩と泥岩との境界面はN50°E,40˚NWであり,板状節理の走向・傾斜はN70˚E,20~25˚Nと記載されている(原田ほか,1963).現在(2024年)の露頭条件では溶岩の下位層と岩体は確認されないが,板状節理の走向・傾斜は原田ほか(1963)に一致している.
調査結果 原田ほか(1963)の示した安山岩の分布地点は大阪層群に覆われて,いったん露頭欠如となる.今回の調査では,この分布地点より約100m北側から,丘陵北端部までの約400mの範囲に安山岩の露頭を確認した.本報告では,原田ほか(1963)の安山岩分布域を南部,北側約100mより300mまでを中部,この先の約100mの丘陵北端部までを北部に区分する.中部と北部は,前者が南部と同じように板状節理を示すのに対し,後者はブロック状節理から柱状節理を示し,加えて,気泡が含まれることで区分される.
岩石記載 南部~北部のすべてで,斑晶に直方輝石とかんらん石が含まれる.直方輝石のモード量は南部で1.85~2.06%(微斑晶を含めると,2.19~2.36%,以下( )内は微斑晶を含めた数),中部で1.44%(1.94%),北部で0.75%と,南部から北部へ少なくなる.また,南部と中部には集斑状の直方輝石や直方輝石の集積岩が含まれることがある.かんらん石斑晶は南部で0.63~1.33%(0.75~1.36%),中部で0.63% と少なくなり,北部ではわずかな量となる.石基は南部でガラス基流晶質組織,中部ではそれに加えて塡間状組織の部分がみられ,北部では全体が塡間状組織である.石基鉱物はおもに,斜長石と直方輝石で,南部での石基鉱物のサイズ(長径0.05mm)は中部・北部(長径0.1mm)に比べて細粒である.
溶岩流の復元 ガラス基流晶質組織のなかに,南から北へのマグマの流動方向が推定される.これは安山岩溶岩が基底で下位層に北傾斜(N50°E,40˚NW)で重なる(原田ほか,1963)ことと一致し,寺ヶ池安山岩はより南側の火道から噴出し,北傾斜の古地形面を流れ下った可能性を示す.
引用文献:原田哲朗ほか(1963)近畿地方の新期新生代層の研究Ⅲ:大阪南方,和泉地域の大阪層群.地球科学,66:1-8.巽 好幸(2003)安山岩と大陸の起源 ローカルからグローバルへ.東京大学出版会,213p.Tatsumi, Y. and Ishizaka, K. (1981) Existence of andesitic primary magma; An example from southwest Japan. Earth Planet Sci Lett 53: 50-71.山口卓也(2024)大阪府富田林・河内長野の火山岩産出地と嶽山龍泉寺西採集の石器.阡陵,88:6-9.
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