Presentation Information
[T17-O-8]Laboratory silica sealing, rock fracture, silica vein formation and permeability evolution driven by fluid pressure drop in the seismogenic depths★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*Ryoto TODA1, Masaoki Uno1, Atsushi Okamoto1 (1. Graduate School of Environmental Studies, TOHOKU University)
Keywords:
Fault-valve Model,Flow Through Experiment,Fluid Pressure Drop,Amorphous Silica Vein,Crack Sealing
沈み込み帯の地震発生帯では、流体と岩石の反応により鉱物脈が形成されている。Fault-valve model[e.g., 1]によると鉱物脈によるき裂のシーリングは地殻中の透水性を支配しており、地殻透水性の挙動は地震周期を理解する上で重要である。自然界では流体圧降下を駆動力とするモデルを含むさまざまな鉱物脈形成モデルが提案されているが、鉱物脈形成プロセスとその時間スケールを実験的に検証した例はほとんど存在しない。近年の実験的研究では、流体圧降下時にシリカが沈殿することが示されている[2]。しかし一方で、シリカの沈殿によりき裂が閉塞して鉱物脈を形成した実験例はない。したがって、地震発生帯におけるシーリングの時間スケールや透水性の減少幅は明らかではない。本研究では、シリカを沈殿させて岩石内にき裂を生成し、岩石内に鉱脈を形成させるフロースルー実験を行い、Fault-valve modelの一部を再現した。
本実験には庵治花崗岩(直径6mm、高さ12mm)のコアサンプルを用いた。600℃の電気炉で1時間サンプルを熱し、その後常温の水で急冷することで1.1~2.8%の空隙率のサンプルを作成した。サンプルを地震発生深度に相当する高い拘束圧力 (Pc ) (=100 MPa) 下に封入し、シリンジポンプにより定圧で蒸留水を流通させ、上流50MPa・下流大気圧で流体圧勾配を与えた。この50MPaの流体圧降下によって液相流体が気相に相変化するため、流体のシリカ溶解度が急減した。実験条件は、200℃と300℃それぞれでPcが100MPa、上流圧(Pup)が50MPa、下流圧(Pdown)が0.1MPaと設定した。また対照実験として、200℃ではPdown=8MPa、300℃ではPc=75MPaまたは Pdown=20MPaと設定し、それぞれ実施した。実験中にサンプルの浸透率の経時変化を測定し、サンプルをXCT、SEM、EPMAで分析した。
200℃実験では、どちらの条件でも上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 8MPaでは、シリカの沈殿は確認されなかった。しかし、 Pdown = 0.1 MPaの実験では下流面に網目状のアモルファスシリカが沈殿し、浸透率はどちらの場合も1-5×10-19m2で一定であった。300℃のいずれの条件においても、同様に上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 20MPaではシリカは沈殿しなかったが、Pdown = 0.1MPaでは下流端面に煙突状のアモルファスシリカが局所的に沈殿した。Pc=100 MPa、Pc=75 MPaの実験では、浸透率は10-18-10-19から10-22-10-20 m2に低下した。さらに、Pc =100 MPa Pdown = 0.1MPaでは、下流端面付近のサンプル内部にアモルファスシリカの脈が流体の流れ方向に垂直に生成した。
300℃では浸透率が2-3桁程度低下したが、溶解度から予想される沈殿量は、200℃と300℃の4日間の実験でそれぞれ15 mgと3.1 mgであり、浸透率の低下は沈殿したSiO2 の量だけでは説明できない。以上より、200℃での網目状析出物はシーリングしなかったのに対し、300℃での煙突状析出物はシーリングに寄与したと説明できる可能性が高いことを示唆している。
300℃で高Pc下では、アモルファスシリカ脈は約10~20µmの幅があり、両端が煙突状アモルファスシリカに接続していた。この実験では、浸透率の約2回の増減が観察されたが、これはアモルファスシリカ脈の形成に対応している可能性があり、次のシーリングプロセスが考えられる。まず、上流で岩石が溶解し、流体圧降下により気相への相変化が起こり、表面に煙突状沈殿物が形成され、浸透率が低下した。これにより下流表面付近の流体圧力が上昇し、大きな差応力により流路に垂直なき裂が生じ、再び浸透率が上昇した。同様の析出-き裂挙動が繰り返され、再び浸透率が増減した。
地震発生帯の条件に相当する100 MPaおよび300℃の高Pc下での流体圧降下により、き裂シーリングプロセスとFault-valve modelの一部を再現することに成功した。この実験は、非常に高い流体圧勾配下で長時間実施されたが、地震発生帯の300℃で観察されるものと同様の、幅数十µmのシリカ脈が4日間で生成された。断層はせん断しながら破壊現象を起こすと考えられるため、自然界の岩石き裂中では50MPaの流体圧降下が生じる可能性はあるといえる。したがって、50MPaの流体圧降下が生じる地震発生帯におけるシリカ脈は4日間という短期間で生成されると考えられる。以上より、この実験結果はFault-valve modelの時間スケールや浸透率挙動に制約を与える可能性がある。
[1]Sibson, 1992 Tectonophyslcs; [2]Amagai et al., 2019 Scientific Reports;
本実験には庵治花崗岩(直径6mm、高さ12mm)のコアサンプルを用いた。600℃の電気炉で1時間サンプルを熱し、その後常温の水で急冷することで1.1~2.8%の空隙率のサンプルを作成した。サンプルを地震発生深度に相当する高い拘束圧力 (Pc ) (=100 MPa) 下に封入し、シリンジポンプにより定圧で蒸留水を流通させ、上流50MPa・下流大気圧で流体圧勾配を与えた。この50MPaの流体圧降下によって液相流体が気相に相変化するため、流体のシリカ溶解度が急減した。実験条件は、200℃と300℃それぞれでPcが100MPa、上流圧(Pup)が50MPa、下流圧(Pdown)が0.1MPaと設定した。また対照実験として、200℃ではPdown=8MPa、300℃ではPc=75MPaまたは Pdown=20MPaと設定し、それぞれ実施した。実験中にサンプルの浸透率の経時変化を測定し、サンプルをXCT、SEM、EPMAで分析した。
200℃実験では、どちらの条件でも上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 8MPaでは、シリカの沈殿は確認されなかった。しかし、 Pdown = 0.1 MPaの実験では下流面に網目状のアモルファスシリカが沈殿し、浸透率はどちらの場合も1-5×10-19m2で一定であった。300℃のいずれの条件においても、同様に上流で石英と長石が主に溶解した。Pdown = 20MPaではシリカは沈殿しなかったが、Pdown = 0.1MPaでは下流端面に煙突状のアモルファスシリカが局所的に沈殿した。Pc=100 MPa、Pc=75 MPaの実験では、浸透率は10-18-10-19から10-22-10-20 m2に低下した。さらに、Pc =100 MPa Pdown = 0.1MPaでは、下流端面付近のサンプル内部にアモルファスシリカの脈が流体の流れ方向に垂直に生成した。
300℃では浸透率が2-3桁程度低下したが、溶解度から予想される沈殿量は、200℃と300℃の4日間の実験でそれぞれ15 mgと3.1 mgであり、浸透率の低下は沈殿したSiO2 の量だけでは説明できない。以上より、200℃での網目状析出物はシーリングしなかったのに対し、300℃での煙突状析出物はシーリングに寄与したと説明できる可能性が高いことを示唆している。
300℃で高Pc下では、アモルファスシリカ脈は約10~20µmの幅があり、両端が煙突状アモルファスシリカに接続していた。この実験では、浸透率の約2回の増減が観察されたが、これはアモルファスシリカ脈の形成に対応している可能性があり、次のシーリングプロセスが考えられる。まず、上流で岩石が溶解し、流体圧降下により気相への相変化が起こり、表面に煙突状沈殿物が形成され、浸透率が低下した。これにより下流表面付近の流体圧力が上昇し、大きな差応力により流路に垂直なき裂が生じ、再び浸透率が上昇した。同様の析出-き裂挙動が繰り返され、再び浸透率が増減した。
地震発生帯の条件に相当する100 MPaおよび300℃の高Pc下での流体圧降下により、き裂シーリングプロセスとFault-valve modelの一部を再現することに成功した。この実験は、非常に高い流体圧勾配下で長時間実施されたが、地震発生帯の300℃で観察されるものと同様の、幅数十µmのシリカ脈が4日間で生成された。断層はせん断しながら破壊現象を起こすと考えられるため、自然界の岩石き裂中では50MPaの流体圧降下が生じる可能性はあるといえる。したがって、50MPaの流体圧降下が生じる地震発生帯におけるシリカ脈は4日間という短期間で生成されると考えられる。以上より、この実験結果はFault-valve modelの時間スケールや浸透率挙動に制約を与える可能性がある。
[1]Sibson, 1992 Tectonophyslcs; [2]Amagai et al., 2019 Scientific Reports;
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