Presentation Information
[T16-O-9]Reconstruction of paleovegetation change by plant biomarker and pollen in the ocean drilling core from the Japan Sea off Hokkaido: Comparison between the paleovegetation proxies.
*Chiaki Aoyagi1, Ken Sawada1, Satoshi Furota2, Tomohisa Irino3, Yaeko Igarashi4 (1. Department of Natural History Sciences, Graduate School of Science, Hokkaido University, 2. Research Institute for Geo-resources and Environment, Geologecal Survey of Japan, AIST, 3. Division of Earth System of Science, Graduate School of Environmental Science, Hokkaido University, 4. Institute Paleoenviron Northern Regions)
Keywords:
Plant biomaker,Pollen,Paleocene
○はじめに
陸域の古植生や古植物相を復元するために、植物の葉・球果などの化石や花粉が使われてきたが、近年植物に由来する分子化石(バイオマーカー)も用いられるようになった。それらを使った古植生プロキシは、それぞれに長所短所があり、より解像度の高い古植生情報を得るためには複数のプロキシによる研究が不可欠である。植物由来バイオマーカーの中でも三環性のジテルペノイド、五環性のトリテルペノイドはそれぞれ裸子植物、被子植物に特有の化合物として知られ、被子/裸子植物比や特定の植物種の群集比のプロキシとして用いられる。
本研究では日本海北海道奥尻沖の堆積物コアのバイオマーカー分析を行い、同試料から得られた花粉の分析結果 (Igarashi et al., 2018) と比較し、プロキシ間の違いを検討した。
○試料と分析方法
試料はIODP Exp.346 U1423 siteで得られた北海道奥尻沖の堆積試料を用い、鮮新世~現世(~約 4.5Ma)の期間に着目して研究を行った。試料を凍結乾燥させた後粉砕し、有機溶媒によって抽出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって抽出物を極性ごとに分画し、GC-MSによって分析を行った。
○結果
有機分子-植物種のおおよその対応は Otto and Wild. (2001) などに整理されている。試料からはヒノキ科(スギを含む)に由来するフェルギノールやスギオール、松脂の構成成分であるデヒドロアビエチン酸、アビエタン型のジテルペノイドが芳香族化したレテンといった化合物が検出された。また、被子植物一般に含まれるβアミロンやαアミロンが検出された。花粉分析結果では裸子植物の花粉の方が被子植物の花粉より多く含まれていたのに対し、バイオマーカーの分析結果では被子植物に由来するトリテルペノイドの方が多く含まれていた。
スギオールがスギ花粉と最も良い相関を示した。また、スギが生産するとされるフェルギノールやトタロールとの総和によりスギ花粉との相関が上昇することがわかった。フェルギノールやスギオールといった化合物は他のヒノキ科やイチイ科も生産することが知られているが、本サイトにおける堆積物中に保存されたこれらの有機分子はスギに由来している可能性が高い。花粉はおもに風によって大気経由で輸送され、テルペノイドなどのバイオマーカー分子は鉱物粒子へ吸着されて輸送されたと考えられる。これらの分析結果の差異について、輸送過程の視点からも議論したい。
○引用文献
Igarashi, Y., Irino, T., Sawada, K., Song, L., Furota, S. (2018) Global and Planetary Change 163, 1-9.
Otto, A., Wiilde, V. (2001) The Botanical Review 67, 141-238
陸域の古植生や古植物相を復元するために、植物の葉・球果などの化石や花粉が使われてきたが、近年植物に由来する分子化石(バイオマーカー)も用いられるようになった。それらを使った古植生プロキシは、それぞれに長所短所があり、より解像度の高い古植生情報を得るためには複数のプロキシによる研究が不可欠である。植物由来バイオマーカーの中でも三環性のジテルペノイド、五環性のトリテルペノイドはそれぞれ裸子植物、被子植物に特有の化合物として知られ、被子/裸子植物比や特定の植物種の群集比のプロキシとして用いられる。
本研究では日本海北海道奥尻沖の堆積物コアのバイオマーカー分析を行い、同試料から得られた花粉の分析結果 (Igarashi et al., 2018) と比較し、プロキシ間の違いを検討した。
○試料と分析方法
試料はIODP Exp.346 U1423 siteで得られた北海道奥尻沖の堆積試料を用い、鮮新世~現世(~約 4.5Ma)の期間に着目して研究を行った。試料を凍結乾燥させた後粉砕し、有機溶媒によって抽出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって抽出物を極性ごとに分画し、GC-MSによって分析を行った。
○結果
有機分子-植物種のおおよその対応は Otto and Wild. (2001) などに整理されている。試料からはヒノキ科(スギを含む)に由来するフェルギノールやスギオール、松脂の構成成分であるデヒドロアビエチン酸、アビエタン型のジテルペノイドが芳香族化したレテンといった化合物が検出された。また、被子植物一般に含まれるβアミロンやαアミロンが検出された。花粉分析結果では裸子植物の花粉の方が被子植物の花粉より多く含まれていたのに対し、バイオマーカーの分析結果では被子植物に由来するトリテルペノイドの方が多く含まれていた。
スギオールがスギ花粉と最も良い相関を示した。また、スギが生産するとされるフェルギノールやトタロールとの総和によりスギ花粉との相関が上昇することがわかった。フェルギノールやスギオールといった化合物は他のヒノキ科やイチイ科も生産することが知られているが、本サイトにおける堆積物中に保存されたこれらの有機分子はスギに由来している可能性が高い。花粉はおもに風によって大気経由で輸送され、テルペノイドなどのバイオマーカー分子は鉱物粒子へ吸着されて輸送されたと考えられる。これらの分析結果の差異について、輸送過程の視点からも議論したい。
○引用文献
Igarashi, Y., Irino, T., Sawada, K., Song, L., Furota, S. (2018) Global and Planetary Change 163, 1-9.
Otto, A., Wiilde, V. (2001) The Botanical Review 67, 141-238
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