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[G6-O-4]Diatom analysis of the uppermost Pleistocene to Holocene boring core in the vicinity of Omuma, Wakkainai, northern Hokkaido, Japan

*Tsumoru Sagayama1,2, Norio KITO3, Daigo NATSUKI4, Masahiro FUKUDA4 (1. Hokkaido Research Center of Geology, 2. Earth Science Co. Ltd., 3. Hokkaido Univ. of Education, 4. Univ. of Tokyo)
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Keywords:

Diatom analysis,uppermost Pleistocene to Holocene,boring core,Onuma,Wakkanai

2023年8月に稚内市の大沼(海跡湖)南方,海岸線から約8 km内陸の地点(北緯45°19′56.50″,東経141°47′38.05″)でボーリングにより全長30 mの沖積層がオールコアで採取された.14C年代値から判断して同コアは完新世堆積物である.臨海平野に位置することから,同コアには縄文海進とその後の海退の影響が反映していると考えられ,堆積環境解明のために珪藻分析を行った.なお,大平・海津(1999)は大沼周辺の沖積層について珪藻分析を行っているが,地表から約7 mまでの表層部を対象にしており,深さ30 mまでの分析は今回が初めてである.
 地盤標高は約4.37mで,同地点には沖積層の一部である泥炭層が,その周辺には同じく古湖沼堆積物が分布する(小山内ほか,1959).沖積層の直接の下位層は後期中新世~鮮新世の声問層と推定されるものの,本ボーリングでは同層まで達していない.孔内地質は,下位より深度30.00~23.60 mは主にシルトからなり,深度26.04~26.09 mにはテフラが挟在する.14C年代値は深度29.59 mで10,664 calBP,同26.36 mで9,805 calBPである.深度23.60~22.50 mは砂が累重し,同23.45~23.47 mにはテフラが挟在する.深度22.50~22.10 mは砂礫で,深度22.10~19.80 mはシルトからなる.深度19.80~3.30 mは主に粘土からなり,所々に貝化石が認められる.14C年代値は深度19.39 mで8,855 calBP,同10.43 mで7,048 calBPである.深度3.30~3.00 mは砂礫からなる.深度3.00~2.20 mは泥炭質粘土で,深度2.34 m 14C年代値は3,451 calBPである.深度2.20~0.20 mは泥炭からなり,深度1.12 m 14C年代値は2,260 calBPである.深度0.20~0.00 mは砂礫からなる.
 珪藻分析用の地質試料は50 cm間隔を基本に,深度29.61~2.61 mにかけ54個を採取した.全試料からは多くの珪藻殻が産し,1試料につき100殻を算定して海水生種,海水~汽水生種,汽水生種,汽水~淡水生種,淡水生種に区分した.得られた珪藻群集から最小値1,最大値5の塩分指数を求めた.沖積層下位の声問層は主に珪藻質泥岩からなることから,同層から削剥された粒子が沖積層内に堆積し,Neodenticula kamtschatica (Zabelina) Akiba et Yanagisawaなどの絶滅種が多産する.絶滅種は産出殻数を明らかにし,算定数(100殻)からは除外した.
 声問層には絶滅種以外のThalassionema nitzschioides (Grun.) Mereschkowskyをはじめとする海水生種も多く認められ(嵯峨山,2003),算定時にはこれらの種が同層からの由来か,縄文海進時の海水により運搬されてきたのかの区別は不可能である.このため,塩分指数は深度19.61~12.11 mで4以上と大きな値を示した.淡水生種は深度20.11 m(標高-15.74 m)以深では比較的多く産しており,同深度までは淡水域であった可能性がある.縄文海進による海水の流入はそれ以降に始まり,汽水域を経て海水域に変化していったと考えられる.深度19.39 mの14C年代値(8,855 calBP)を考慮すると,海水流入の年代は9,000 calBP前後と推定され,当時の海面高(標高-15.50 m前後)は遠藤(2015)の海水準曲線と矛盾しない.
 本研究は2023-2025年度JSPS科研費JP23K21982基盤研究(B)「宗谷海峡における新石器/縄文時代生活史の実態解明」(研究代表者:福田正宏)の助成を受けた.
 文献 遠藤邦彦,2015,日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層―.冨山房インターナショナル,415p.大平明夫・海津正倫,1999,北海道北部,大沼周辺低地における完新世の相対的海水準変動と地形発達.地理学評論,72A,536-555.小山内 熙ほか,1959,5万文の地質図幅「宗谷および宗谷岬」.北海道立地下資源調査所,52p.嵯峨山 積,2003,北海道北部地域の遠別層・声問層と勇知層の地層境界の地質年代−ルベシュベ川と上ヌカナン川ルート−.地質雑,109,310-323.

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