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[T15-O-23]Holocene geomorphological evolution of the Notsukesaki barrier spits controlled by seismotectonics along the eastern Hokkaido, NE Japan

*KIYOYUKI SHIGENO1, Futoshi NANAYAMA2, Kazuto ISHIWATA3, Ryuta Furukawa4, Masayuki Ishii 5 (1. Meiji Consultant Co., Ltd., 2. Museum of Natural and Environmental History, Shizuoka, 3. Betsukai Town, 4. Geological Survey of Japan, AIST, 5. Ishii Professional Engineer Office)
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Keywords:

Holocene geomorphological evolution,Notsukesaki barrier spit system,seismotectonics,Kuril subduction zon,eastern Hokkaido

北海道東部,野付湾周辺には,現在も活動的なバリアーシステムが認められており,ここでは野付崎バリアースピット(NBS)と呼ぶことにする.NBSは,標津川河口から南東方向に延びる本邦最大の総延長28.9 kmの分岐(複合)砂嘴であり,知床半島起源の安山岩礫(円盤礫)や摩周火山起源の軽石を多く含む.NBSは,地形判読によって,4列の分岐砂嘴(N-BS1~N-BS4)が認識され,それらの分岐関係によって地形発達史が解読できる.我々は2015年以降科研費予算を用いて,NBSを横断する5本の測線を設定し,(1) GPSを用いた地形測量と地形断面図の作成,(2) 4列の分岐砂嘴(N-BS1~N-BS4)の離水標高(BH値)の計測,(3) ハンドボーリング調査および掘削試料を用いたAMS14C年代とテフラによる離水年代の検討,(4)珪藻および花粉分析による古環境の推定,(5)海浜砂と砂丘砂の粒度分析による判別,などを総合的に実施してきている.
 これまでのNBSでの掘削調査により,上位から4層の完新世テフラ,Ta-a(1739 年樽前火山起源)およびKo-c2(1694 年北海道駒ヶ岳火山起源), Ta-c(2.5 ka 樽前火山起源),Ma-d(4.0 ka 摩周火山起源)が見いだされ,これらを時間面として,約1000 年オーダーでのNBSの地形発達史を解読することを試みた.
 根室海峡が発生したのは,海底地形の標高から約6000年前と推定されている(大嶋ほか,1994),NBSが現在の位置に発生したのは,茶志骨湿原(back marsh)の泥炭層基底部のMa-dの確認により約4000年前と推定している.この標高は-0.6 mにあり,明確に沈降傾向を示す.初期の砂嘴は既に侵食されて現地形としては残されていない.
 N-BS4はオンニクル付近のみ分布し,この礫浜層はTa-cを挟在する泥炭層に被覆されている.その地形面上に擦文時代の竪穴式住居跡(7〜13世紀)も見つかっていることから,約2500年前に離水した古期の砂嘴の残骸と推定される.N-BS4のBH値は2.66 mに達しており,明確に隆起傾向を示す.現在残された砂嘴先端部?の形状から,この当時のNBSは標津川の河口から現在の砂嘴よりも東方沖に伸張していたと推定される.
N-BS1〜N-BS3は竜神崎に生じた新規の砂嘴群である.NBSで最も若いN-BS1 はTa-a, Ko-c2 に被覆されないことから17 世紀以降に出現した.N-BS1は荒浜岬を成長させている現在の沈降期(=海進期)に生じており,そのBH値は0.6〜1.0 mの範疇にある.N-BS1のBH値が,過去の分岐砂嘴(N-BS2~N-BS4)の隆起量の判断基準となる.N-BS2 は喜楽岬から発しナカシベツ付近からN-BS1と分岐する.この砂嘴には江戸時代後期の通行屋跡遺跡が載っている.N-BS2のBH値は1.59 mであり,やや隆起傾向を示す.この浜堤はTa-a, Ko-c2 に礫浜層が直接被覆されることから,17 世紀に離水した可能性が高い.N-BS3 の離水年代は明確ではないが,Ta-a, Ko-c2と礫浜層との間に泥炭層を挟むことから,おそらく12〜13 世紀と予測される.N-BS3のBH値は2.47mであり,隆起傾向を示している.
 千島海溝沿岸域では500 年間隔で発生した超巨大地震(Mw 9.1~)の存在が明確になり,特にこの地の地盤は17 世紀巨大地震時(もしくはその後)には1〜2 m(もしくはそれ以上)隆起し,逆に地震以降現在まで8~10 mm/年の速さで沈降し続けてきたことが解っている.特に別海〜標津地域の沈降速度は,15mm/年に達することが知られている.Nanayama (2021)は,この周辺地域において過去2500年間に,約300 年前,約700〜300年前,約1300〜1000年前,約2400〜1700年前の4回の離水イベントがあったと述べている.ゆえに, NBSを構成する4列の分岐砂嘴(N-BS1~N-BS4)の出現には,千島海溝における広域な地震性地殻変動が大きく関わっていたと推察される.

謝辞:本研究はJSPS科研費基盤研究(C) 22K03744の助成を受けて実施した.

引用文献:大嶋和雄ほか,1994,茨城大学教養部紀要,27,157-165.Nanayama, F.,2021,Geol Soc Spec Publ, London, 501, 131-157.

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