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[T1-P-4]The coexistence of jadeite-omphacite in the reaction zone near jadeite-quartz rocks from the Yorii area of the Kanto Mountains

*Tomoki SEGAWA1, Tomoki TAGUCHI1 (1. Waseda Univ.)
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Keywords:

Jadeitite,Reaction zone,Glaucophanite,Fluid-rock interaction

ヒスイ輝石岩や関連する交代岩は蛇紋岩メランジュ中によく産出し、その詳細な特徴付けはプレート収束境界で起こる岩石−流体相互作用の実態解明に繋がる。関東山地寄居地域では、ヒスイ輝石と石英が共存するヒスイ輝石岩(ヒスイ輝石−石英岩)が認められる(Hirajima, 1983 岩石鉱物鉱床学会誌)。ヒスイ輝石−石英岩を対象とした地質年代学的研究も実施されているが(Yui and Fukuyama, 2015 JAES)、その岩体周囲に蛇紋岩以外のメランジュ構成岩類の産出や反応帯の存在は報告されていない。そのため、当地域のヒスイ輝石岩とメランジュ構成岩類との関係性については不明な点が多い。今回、寄居地域のヒスイ輝石−石英岩周縁部で反応帯(曹長岩化帯および藍閃石岩)を新規に発見した。本研究では、特にヒスイ輝石−オンファス輝石の共生を含む反応帯の岩石学的特徴と形成過程について考察する。 
 研究対象の反応帯はヒスイ輝石−石英岩岩体の南西斜面下部にて確認され、その近傍には蛇紋岩も分布する。この反応帯はヒスイ輝石−石英岩境界から順に、曹長岩化帯、片状藍閃石岩、塊状藍閃石岩に推移しており、交代作用を被った産状を示す。ヒスイ輝石−石英岩との接触境界直近に位置する曹長岩化帯について、その基質は曹長石+ヒスイ輝石+オンファス輝石からなる。石英は基質に認められないが、ヒスイ輝石中にのみ石英包有物が残存している。輝石の産状は、純粋なヒスイ輝石(Jd91–97Aeg0–5Aug2–6)を中心に、不純なヒスイ輝石(Jd84–89Aeg2–7Aug7–9)とオンファス輝石(Jd24–48Aeg9–14Aug42–62)からなる細粒結晶が被覆成長する形態を示す。ヒスイ輝石とオンファス輝石間には組成間隙があり、不混和領域の存在が確認された。次に、片状藍閃石岩では藍閃石の定向配列がよく発達し、藍閃石+曹長石+ヒスイ輝石+オンファス輝石から構成される。片状藍閃石岩中の藍閃石は、主にフェロ藍閃石の化学組成(XMg = 0.45–0.81、XFe3+ = 0.12–0.45)を示す。基質のヒスイ輝石(Jd81–99Aeg0–7Aug1–28)とオンファス輝石(Jd25–45Aeg7–13Aug47–64)間には組成間隙があり、曹長岩化帯と同様に不混和領域の存在が確認された。その産状は、(1)不純なヒスイ輝石(Jd72–89Aeg0–7Aug7–19)とオンファス輝石(Jd25–45Aeg7–14Aug47–64)が直接接合する組織、(2)粗粒なヒスイ輝石仮像をなし、その中心部にほぼ純粋なヒスイ輝石(Jd91–99Aeg0Aug1–9)と微小石英が共存、縁部に不純なヒスイ輝石(Jd83–86Aeg2–6Aug11–12)とオンファス輝石(Jd27–39Aeg7–13Aug50–62)から構成される細粒結晶が被覆成長、という二種類に区分できる。最後に、塊状組織を示す藍閃石岩はほぼ藍閃石からなり、片状藍閃石岩とは鉱物組み合わせが大きく異なる。藍閃石には定向配列が認められず、狭義の藍閃石に相当する化学組成(XMg = 0.65–0.80、XFe3+ = 0.16–0.40)を示す。
 塊状藍閃石岩と片状藍閃石岩に含まれる藍閃石の組織・組成傾向を考慮すると、これら藍閃石岩は形成時期が異なることが考えられる。塊状組織を示す藍閃石岩は蛇紋岩メランジュ中での産出がよく報告されており、本研究で発見された塊状藍閃石岩もヒスイ輝石−石英岩と同時期の高圧下で形成された可能性がある。ヒスイ輝石−石英岩境界では曹長石の増加に伴い、基質から石英が消失している。ヒスイ輝石中にのみ石英包有物が残存するため、この曹長岩化帯は岩石上昇期に形成されたことが示唆される。西山(1989 地質学論集)は反応帯形成時の変形機構を検証し、片状構造が岩石−流体相互作用下で形成できることを示した。片状藍閃石岩も曹長岩化帯と同時期に形成されたと解釈できる。さらに、片状藍閃石岩及び曹長岩化帯の不純なヒスイ輝石とオンファス輝石が示す組成領域は、他地域で報告されている不混和領域とほぼ一致する(e.g. Carpenter, 1980 CMP)。これは低温下の不混和領域において、ヒスイ輝石(空間群C2/c)とオンファス輝石(空間群P2/n)が同じ時期に安定であった可能性を意味する。ヒスイ輝石−石英岩を特徴づける純粋なヒスイ輝石が曹長岩化帯形成と同時期の流体浸透により、不純なヒスイ輝石とオンファス輝石が再結晶したのであろう。本地域のヒスイ輝石岩本体はヒスイ輝石−石英の接触共存がよく残されているが、これは反応帯形成によりヒスイ輝石岩の後退変成作用が抑制された結果かもしれない。

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