Presentation Information
[T1-P-7]Metamorphic zoning and metamorphic reaction of the Ryoke belt around the Mt. Senbo-zan area, Hikari City, Yamaguchi Prefecture, SW Japan
*Kakeru HARAYAMA1, Toshiaki SHIMURA1 (1. Yamaguchi Univ.)
Keywords:
Ryoke belt,metamorphic zoning,Mt. Senbo-zan,metamorphic reaction
はじめに
山口県光市の千坊山周辺地域は領家帯に属し、その東側には多くの研究者により詳細な変成分帯が行われている岩国-柳井地域がある(Ikeda, 2004など)。
Okudaira et al.(2024)では、領家帯は変成度の低い方から高い方へ、以下のように変成分帯されている。
緑泥石-黒雲母帯
黒雲母帯
白雲母-菫青石帯
カリ長石-菫青石帯
珪線石-カリ長石帯
ザクロ石-菫青石帯
領家帯の変成度はMTLに向かって上昇するが、西側ではMTL付近で減少に転じる(Okudaira et al., 2024)。この減少の原因について、岩国-柳井地域では大規模な断層や褶曲の影響が指摘されている(Okudaira, 1996; Skrzypek et al., 2016など)。
千坊山周辺地域では石塚ほか(2009)と宮崎ほか(2016)により20万分の1地質図幅が作成されている。変成分帯は変成度の低い方から高い方へ、
黒雲母帯
カリ長石珪線石帯
ざくろ石菫青石帯
とされており、南側から北側にむかって変成度が上昇しているとされている。本研究では千坊山周辺地域の変成分帯及び変成反応の考察を行った。
地質概説
千坊山周辺地域は全域に変成岩類が分布しており、局所的に花崗岩類が貫入している。変成岩類は砂泥質及び珪質の片麻岩、泥質片岩、珪質片岩に分けられる。片岩は主に調査地域南西部の室積半島に分布している。変成岩類の露頭では片理面や鉱物線構造が観察でき、露頭規模やそれより小さいスケールの褶曲もみられる。多くの褶曲は、層厚に大きな変化が見られない座屈褶曲である。室積半島では、片理面はNW-SE走向、SW傾斜のものが多い。その他の地域の片理面は、北西部ではNE-SW走向、NW傾斜、中央部ではE-W走向、N傾斜、南東部ではNW-SE走向、NE傾斜のものが多い。
変成分帯
千坊山周辺地域の変成岩の代表的な鉱物組み合わせと変成分帯は、南から北にむかって以下の通りである。
白雲母帯 : Ms + Bt + Chl
珪線石帯 : Bt + Afs + Sil
菫青石帯 : Crd + Bt + Afs + Sil
ザクロ石-菫青石帯 : Bt + Crd + Grt + Afs
(全ての帯に+ Qz + Pl)
菫青石帯とザクロ石-菫青石帯の片麻岩は一部ミグマタイト化している。これらの岩石の優白部では斜長石に波動累帯構造が見られる。菫青石帯では菫青石に、ザクロ石-菫青石帯ではザクロ石と菫青石及びカリ長石によって、黒雲母と珪線石が切断されているところが見られる。
この変成分帯をOkudaira et al.(2024)で示されている変成分帯と比較すると、白雲母帯は緑泥石-黒雲母帯、珪線石帯と菫青石帯は珪線石-カリ長石帯、ザクロ石-菫青石帯はザクロ石-菫青石帯に対応すると考えられる。
この変成分帯の配列は、南から北に変成度が上昇していることを示している。白雲母帯と珪線石帯の間は幅1kmほどの露欠となっており、変成度や地質構造のうえでギャップが大きい。このことは、両者の間に石塚ほか(2009)により示された伏在している断層の存在を支持している。珪線石帯と菫青石帯の間ではCrd出現アイソグラッドが、菫青石帯とザクロ石-菫青石帯の間ではGrt + Crd共生が出現する反応アイソグラッドが存在する。ザクロ石-菫青石帯は、菫青石帯、珪線石帯の構造的上位に位置している。
鉱物化学組成
変成度が上昇するにつれザクロ石のSpsが減少しAlmが増加している。いずれの帯のザクロ石もコアからリムに向かってSpsが増加しAlmとPrpが減少している。
ザクロ石-菫青石帯の斜長石は、他の帯の斜長石に比べAbが高い。
考察
この地域で起きている昇温期の変成反応を考察した。鏡下観察より、珪線石帯と菫青石帯の間ではWei et al.(2004)におけるBt + Sil + Qz + H2O = Crd + liqの反応が、菫青石帯とザクロ石-菫青石帯の間ではBt + Sil + Qz + H2O = Grt + Crd + liqと、Bt + Sil + Qz + H2O = Grt + Crd + Kfs + liqの反応が起きていると考えられる。
室積半島の変成岩は他の地域と比べ、変形作用の影響を強く受けていないと考えられる。
ザクロ石-菫青石帯が菫青石帯と珪線石帯の構造的上位に位置していることは、この地域に断層や褶曲などの構造的ギャップがある可能性を示唆している。
引用文献
Ikeda (2004) CMP., 146, 577–589.
石塚ほか (2009) 20万分の1地質図幅「中津」. 産総研.
宮崎ほか (2016) 20万分の1地質図幅「松山」(第2版). 産総研.
Okudaira (1996) Isl. Arc, 5, 373-385.
Okudaira et al. (2024) Elements, 20, 96-102.
Skrzypek et al. (2016) Lithos, 206, 9-27.
Wei et al. (2004) JMG., 22, 495-508.
山口県光市の千坊山周辺地域は領家帯に属し、その東側には多くの研究者により詳細な変成分帯が行われている岩国-柳井地域がある(Ikeda, 2004など)。
Okudaira et al.(2024)では、領家帯は変成度の低い方から高い方へ、以下のように変成分帯されている。
緑泥石-黒雲母帯
黒雲母帯
白雲母-菫青石帯
カリ長石-菫青石帯
珪線石-カリ長石帯
ザクロ石-菫青石帯
領家帯の変成度はMTLに向かって上昇するが、西側ではMTL付近で減少に転じる(Okudaira et al., 2024)。この減少の原因について、岩国-柳井地域では大規模な断層や褶曲の影響が指摘されている(Okudaira, 1996; Skrzypek et al., 2016など)。
千坊山周辺地域では石塚ほか(2009)と宮崎ほか(2016)により20万分の1地質図幅が作成されている。変成分帯は変成度の低い方から高い方へ、
黒雲母帯
カリ長石珪線石帯
ざくろ石菫青石帯
とされており、南側から北側にむかって変成度が上昇しているとされている。本研究では千坊山周辺地域の変成分帯及び変成反応の考察を行った。
地質概説
千坊山周辺地域は全域に変成岩類が分布しており、局所的に花崗岩類が貫入している。変成岩類は砂泥質及び珪質の片麻岩、泥質片岩、珪質片岩に分けられる。片岩は主に調査地域南西部の室積半島に分布している。変成岩類の露頭では片理面や鉱物線構造が観察でき、露頭規模やそれより小さいスケールの褶曲もみられる。多くの褶曲は、層厚に大きな変化が見られない座屈褶曲である。室積半島では、片理面はNW-SE走向、SW傾斜のものが多い。その他の地域の片理面は、北西部ではNE-SW走向、NW傾斜、中央部ではE-W走向、N傾斜、南東部ではNW-SE走向、NE傾斜のものが多い。
変成分帯
千坊山周辺地域の変成岩の代表的な鉱物組み合わせと変成分帯は、南から北にむかって以下の通りである。
白雲母帯 : Ms + Bt + Chl
珪線石帯 : Bt + Afs + Sil
菫青石帯 : Crd + Bt + Afs + Sil
ザクロ石-菫青石帯 : Bt + Crd + Grt + Afs
(全ての帯に+ Qz + Pl)
菫青石帯とザクロ石-菫青石帯の片麻岩は一部ミグマタイト化している。これらの岩石の優白部では斜長石に波動累帯構造が見られる。菫青石帯では菫青石に、ザクロ石-菫青石帯ではザクロ石と菫青石及びカリ長石によって、黒雲母と珪線石が切断されているところが見られる。
この変成分帯をOkudaira et al.(2024)で示されている変成分帯と比較すると、白雲母帯は緑泥石-黒雲母帯、珪線石帯と菫青石帯は珪線石-カリ長石帯、ザクロ石-菫青石帯はザクロ石-菫青石帯に対応すると考えられる。
この変成分帯の配列は、南から北に変成度が上昇していることを示している。白雲母帯と珪線石帯の間は幅1kmほどの露欠となっており、変成度や地質構造のうえでギャップが大きい。このことは、両者の間に石塚ほか(2009)により示された伏在している断層の存在を支持している。珪線石帯と菫青石帯の間ではCrd出現アイソグラッドが、菫青石帯とザクロ石-菫青石帯の間ではGrt + Crd共生が出現する反応アイソグラッドが存在する。ザクロ石-菫青石帯は、菫青石帯、珪線石帯の構造的上位に位置している。
鉱物化学組成
変成度が上昇するにつれザクロ石のSpsが減少しAlmが増加している。いずれの帯のザクロ石もコアからリムに向かってSpsが増加しAlmとPrpが減少している。
ザクロ石-菫青石帯の斜長石は、他の帯の斜長石に比べAbが高い。
考察
この地域で起きている昇温期の変成反応を考察した。鏡下観察より、珪線石帯と菫青石帯の間ではWei et al.(2004)におけるBt + Sil + Qz + H2O = Crd + liqの反応が、菫青石帯とザクロ石-菫青石帯の間ではBt + Sil + Qz + H2O = Grt + Crd + liqと、Bt + Sil + Qz + H2O = Grt + Crd + Kfs + liqの反応が起きていると考えられる。
室積半島の変成岩は他の地域と比べ、変形作用の影響を強く受けていないと考えられる。
ザクロ石-菫青石帯が菫青石帯と珪線石帯の構造的上位に位置していることは、この地域に断層や褶曲などの構造的ギャップがある可能性を示唆している。
引用文献
Ikeda (2004) CMP., 146, 577–589.
石塚ほか (2009) 20万分の1地質図幅「中津」. 産総研.
宮崎ほか (2016) 20万分の1地質図幅「松山」(第2版). 産総研.
Okudaira (1996) Isl. Arc, 5, 373-385.
Okudaira et al. (2024) Elements, 20, 96-102.
Skrzypek et al. (2016) Lithos, 206, 9-27.
Wei et al. (2004) JMG., 22, 495-508.
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