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[T1-P-9]Reexamination of the Mizoguchi metamorphic rocks from the western flank of Mt. Daisen, Japan

*Shunsuke ENDO1, Sotaro MORI1 (1. Shimane University)
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Keywords:

Hida metamorphic rocks,monazite

はじめに 飛騨帯構成岩類(ペルム-トリアス紀の花崗岩・片麻岩類およびジュラ紀花崗岩類)の分布は飛騨山地から山陰地方へと延長することが鳥取県大山西麓に僅かに分布する基盤岩類から示唆されている.最初期の研究として,石賀ほか(1989)は,伯耆溝口駅東方の大江川河床からザクロ石含有泥質片麻岩および苦鉄質片麻岩(以降,溝口変成岩)を報告し,これらを飛騨片麻岩類に対比した.また苦鉄質片麻岩から185.1±6.1 MaのRb-Sr全岩・鉱物アイソクロン年代を報告した.近年,Tsutsumi et al.(2017)は,同産地から採取した珪長質片麻岩類のジルコンU-Pb年代を報告した.そのなかで,原岩が花崗岩類と推定される試料の年代値257.6±2.9 Maを火成年代として古期飛騨花崗岩類に対比した.一方で,ザクロ石含有泥質片麻岩のジルコンは砕屑性粒子とみなしてその最若年代が183 Maであることから,原岩の泥質岩はジュラ紀付加体またはジュラ紀周防変成岩とされた.この解釈を受け入れた場合,同一産地の同様な片麻岩でありながら,両岩石は地帯区分上の帰属が大きく異なることになる.しかし,この地域の片麻岩露頭には花崗岩類の細脈が発達するため,183 Maの年代を示すジルコンは泥質片麻岩中の砕屑性粒子ではなく,ジュラ紀花崗岩類(江尾花崗岩)の細脈から混入した可能性が残る.そのため,ザクロ石含有泥質片麻岩の薄片上での組織と関係づけた岩石年代学的な再検討が必要である.

岩石記載,変成条件と年代 ザクロ石含有泥質片麻岩は黒雲母の形態定向配列による弱い面構造が発達し,細粒の長石と石英が等粒状組織をなす変成岩である.構成鉱物は石英,斜長石,黒雲母,ザクロ石,チタン鉄鉱,磁硫鉄鉱,石墨である.基質の黒雲母の一部は微細な白雲母とチタン鉄鉱に置換されている.ザクロ石は0.5 mm前後の自形粒子で,逆累帯を示すリムを除くと,ほぼ均質な組成(Alm75-77Prp12-14Sps7Grs4)をもつ.ザクロ石は石英,カミントン閃石,チタン鉄鉱,磁硫鉄鉱を包有する.石英包有物はホストのザクロ石の結晶面で囲まれた多面体の形態をとり,さらに微小な斜長石(An39-42)と菫青石(Mg#=0.57-0.58)を包有する.基質の斜長石の組成範囲(An36-43)は上記のザクロ石中のものと重複するが,黒雲母の変質部に隣接するリムではCaが増加しAn57-70となる.ザクロ石中の黒雲母(Mg#=0.53)は基質の黒雲母に比べて高Mg#である. ザクロ石の均質なコア組成およびその包有物の斜長石と黒雲母の組成を組合せて地質温度圧力計を適用すると,温度圧力条件は550℃,1.9 kbarと推定された.低圧条件であるため,ザクロ石は江尾花崗岩の接触変成作用により形成された可能性がある.
 ザクロ石含有泥質片麻岩は副成分鉱物としてジルコンのほかに,微小(20ミクロン以下)なモナザイトを含む.基質の石英や斜長石中に包有されるモナザイト粒子のコアからは約250 MaのEPMA年代(初期鉛をゼロとした見かけ年代)が得られた.またリムでは200-160 Maの見かけ年代を示した.約250Maの年代は飛騨片麻岩類の広域変成作用に一致し,ジュラ紀のリム年代は江尾花崗岩の接触変成作用に関係づけられる.従って,ザクロ石含有泥質片麻岩を含めて溝口変成岩は飛騨帯構成岩類であると考えられる.

文献
石賀ほか(1989)地質学雑誌 95,129-132; Tsutsumi et al. (2017) JAES 145, 530-541

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