Presentation Information
[T1-P-19]Silica activity dependent serpentinization of dunite in mantle wedge
*Yusuke SODA1, Tomoaki MORISHITA2, Takamoto OKUDAIRA3, Tomoyuki MIZUKAMI2 (1. Waseda Univ., 2. Kanazawa Univ., 3. Osaka Metropolitan Univ.)
Keywords:
dunite,antigorite,serpentinization,silica activity,mantle wedge
【はじめに】
高圧型変成岩類を伴う片状アンチゴライト蛇紋岩は,沈み込み帯で観測される地震波異方性の原因とされ(Katayama et al., 2009など),マントルウェッジ下部での変形や流体の情報が記録されていることが期待される.本研究では,細粒かんらん石脈が発達した蛇紋岩に注目し,低いシリカ活動度流体による変かんらん石の形成とマントルウェッジ内の流体について考察する.
【試料概要】
今回注目した細粒かんらん石脈が発達したアンチゴライト蛇紋岩は,紀伊半島東部鳥羽地域の黒瀬川帯で断層沿いに分布する岩体で,らん閃石片岩やはんれい岩,単斜輝石岩のブロックが伴われている (Yokoyama 1987).アンチゴライト蛇紋岩は,露頭では塊状緻密な岩石で,主にアンチゴライトとかんらん石からなる.アンチゴライト化が弱い部分(現在は低温蛇紋石化)に輝石やその仮像が見られず原岩はダナイトと推定される.アンチゴライト蛇紋岩は面構造と線構造が発達したマイロナイト組織が発達し,板状アンチゴライトは強い結晶定向配列を持ち,かんらん石はポーフィロクラストをなす.細粒かんらん石脈は,かんらん石ポーフィロクラストの周りや,シアバンドに沿って網目状に分布し,面構造やかんらん石を切り,標本スケールのダナイトブロックの剪断面にも存在する.細粒かんらん石脈は,主に,かんらん石 (直径0.02 mm程度) と磁鉄鉱で構成される.細粒かんらん石は,等粒状で直線的な粒界を持ち光学的な定向性は持たない.
【かんらん石の化学組成】
かんらん石ポーフィロクラストは,Feに富んだリムを持つ累帯構造が見られ,細粒かんらん石脈近傍ではMgに富むようになり,光学顕微鏡下でその部分は,細粒な磁鉄鉱を伴って濁った産状になっている.
かんらん石ポーフィロクラストのコアは, Fo値 (100*Mg/(Mg+Fe)) が90.7~91.2,NiOが0.37~0.39 wt%で,マントルかんらん岩の組成 (Takahashi, 1987) を示し,原岩ダナイトの組成が残存している.ポーフィロクラストのリムおよびアンチゴライトと片状組織をなすかんらん石は,Feに富むようになるが (Fo値;89.2~90.4), NiOはコアと大きくは変わらない (0.35~0.40 wt%).細粒かんらん石とその脈近傍のポーフィロクラストは,Mgに富み (Fo値;90.9~92.8),NiOは大きくばらつく (0.28~0.42 wt%).
【考察】
ポーフィロクラストのリムなどのFeに富むかんらん石は,アンチゴライト化の際の高いMg比を持つアンチゴライトとの平衡によると考えられる (Evans, 2010).一方,Mgに富む細粒かんらん石は,滑石や斜ヒューム石などを伴わないので,温度上昇によって形成された (Scambelluri et al., 1991) とは考えにくい.MSH系でダナイトの蛇紋岩化を考えると,アンチゴライトの形成にはSiO2の付加が必要で(例えば,Evans, 2010),蛇紋岩化において流体のシリカ活動度は重要とされている(Frost and Beard, 2007).Purple_Xを用いて,流体のシリカ活動と温度の関係を見ると,かんらん石+アンチゴライト→かんらん石の変化は,温度上昇ないし流体のシリカ活動度の低下を示しており,細粒かんらん石脈がシリカ活動度の低い流体によって形成された可能性を示している.Mizukami et al. (2014) は,マントルウェッジ内の二つのタイプの流体シリカ活動度と蛇紋岩鉱物組み合わせの存在を指摘しており,今回の細粒かんらん石脈は両タイプを跨ぐ流体移動を示唆している.
【文献】
Evans, 2010, Geology 38, 879-882. Frost and Beard, 2007, Journal of Petrology, 48, 1351-1368. Katayama et al., 2009, Nature 461, 1114-1117. Mizukami et al., 2014, Earth and Planetary Science Letters, 401, 148-158. Scambelluri et al., 1991, Journal of Metamorphic Geology, 9, 79-91. Takahashi et al., 1987, Okayama University, Series A, 9, 1-14. Yokoyama, 1987, Jour. Mineral. Petrol. Econ. Geol. 82, 319-335.
高圧型変成岩類を伴う片状アンチゴライト蛇紋岩は,沈み込み帯で観測される地震波異方性の原因とされ(Katayama et al., 2009など),マントルウェッジ下部での変形や流体の情報が記録されていることが期待される.本研究では,細粒かんらん石脈が発達した蛇紋岩に注目し,低いシリカ活動度流体による変かんらん石の形成とマントルウェッジ内の流体について考察する.
【試料概要】
今回注目した細粒かんらん石脈が発達したアンチゴライト蛇紋岩は,紀伊半島東部鳥羽地域の黒瀬川帯で断層沿いに分布する岩体で,らん閃石片岩やはんれい岩,単斜輝石岩のブロックが伴われている (Yokoyama 1987).アンチゴライト蛇紋岩は,露頭では塊状緻密な岩石で,主にアンチゴライトとかんらん石からなる.アンチゴライト化が弱い部分(現在は低温蛇紋石化)に輝石やその仮像が見られず原岩はダナイトと推定される.アンチゴライト蛇紋岩は面構造と線構造が発達したマイロナイト組織が発達し,板状アンチゴライトは強い結晶定向配列を持ち,かんらん石はポーフィロクラストをなす.細粒かんらん石脈は,かんらん石ポーフィロクラストの周りや,シアバンドに沿って網目状に分布し,面構造やかんらん石を切り,標本スケールのダナイトブロックの剪断面にも存在する.細粒かんらん石脈は,主に,かんらん石 (直径0.02 mm程度) と磁鉄鉱で構成される.細粒かんらん石は,等粒状で直線的な粒界を持ち光学的な定向性は持たない.
【かんらん石の化学組成】
かんらん石ポーフィロクラストは,Feに富んだリムを持つ累帯構造が見られ,細粒かんらん石脈近傍ではMgに富むようになり,光学顕微鏡下でその部分は,細粒な磁鉄鉱を伴って濁った産状になっている.
かんらん石ポーフィロクラストのコアは, Fo値 (100*Mg/(Mg+Fe)) が90.7~91.2,NiOが0.37~0.39 wt%で,マントルかんらん岩の組成 (Takahashi, 1987) を示し,原岩ダナイトの組成が残存している.ポーフィロクラストのリムおよびアンチゴライトと片状組織をなすかんらん石は,Feに富むようになるが (Fo値;89.2~90.4), NiOはコアと大きくは変わらない (0.35~0.40 wt%).細粒かんらん石とその脈近傍のポーフィロクラストは,Mgに富み (Fo値;90.9~92.8),NiOは大きくばらつく (0.28~0.42 wt%).
【考察】
ポーフィロクラストのリムなどのFeに富むかんらん石は,アンチゴライト化の際の高いMg比を持つアンチゴライトとの平衡によると考えられる (Evans, 2010).一方,Mgに富む細粒かんらん石は,滑石や斜ヒューム石などを伴わないので,温度上昇によって形成された (Scambelluri et al., 1991) とは考えにくい.MSH系でダナイトの蛇紋岩化を考えると,アンチゴライトの形成にはSiO2の付加が必要で(例えば,Evans, 2010),蛇紋岩化において流体のシリカ活動度は重要とされている(Frost and Beard, 2007).Purple_Xを用いて,流体のシリカ活動と温度の関係を見ると,かんらん石+アンチゴライト→かんらん石の変化は,温度上昇ないし流体のシリカ活動度の低下を示しており,細粒かんらん石脈がシリカ活動度の低い流体によって形成された可能性を示している.Mizukami et al. (2014) は,マントルウェッジ内の二つのタイプの流体シリカ活動度と蛇紋岩鉱物組み合わせの存在を指摘しており,今回の細粒かんらん石脈は両タイプを跨ぐ流体移動を示唆している.
【文献】
Evans, 2010, Geology 38, 879-882. Frost and Beard, 2007, Journal of Petrology, 48, 1351-1368. Katayama et al., 2009, Nature 461, 1114-1117. Mizukami et al., 2014, Earth and Planetary Science Letters, 401, 148-158. Scambelluri et al., 1991, Journal of Metamorphic Geology, 9, 79-91. Takahashi et al., 1987, Okayama University, Series A, 9, 1-14. Yokoyama, 1987, Jour. Mineral. Petrol. Econ. Geol. 82, 319-335.
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