Presentation Information
[G-P-25]Geological risk assessment for large-scale underground cavern on the Hyper-Kamiokande project
Misa SANUKI1, *Mamoru TAKIZAWA1, Takeshi SUIDO1, Yoichi ASAOKA2, Hidekazu TANAKA2, Shoei NAKAYAMA2 (1. Tokyo Electric Power Services Co., Ltd., 2. The University of Tokyo)
Keywords:
Hyper-Kamiokande,Large-scale underground cavern,Geological risk assessment,Observational design approach,Hida metamorphic rocks,Gneiss
1. はじめに
ハイパーカミオカンデ(HK)は、超大型地下ニュートリノ観測装置であり、岐阜県飛騨市神岡町の地下600 mに計画された。その実験水槽は、円筒状で直径69 m、高さ94 m(ドーム部21 m+円筒部73 m)、体積320,000 m3に及ぶ大規模な地下空洞中に構築される1)。このような大規模地下空洞を安全に掘削するには、施工時に得られる地質や計測の情報を随時設計にフィードバックする情報化設計による施工が必要であり、施工前・施工中の地質リスク評価(地質調査に基づく、リスク抽出・評価・対策)が重要となる。
本報告では、HK掘削における地質リスク評価とその成果について報告する。
2. 地質概要
西南日本内帯の飛騨帯中央部に位置する神岡町には、主に片麻岩から構成される飛騨変成岩類と、それに貫入し飛騨変成岩類に熱変成作用をもたらした船津花崗岩類が分布している2)。また、飛騨変成岩類中には、神岡鉱山に代表されるスカルン鉱床の胚胎が知られている。なお、当該地域では北北東-南南西方向の鹿間谷断層と北西-南東方向の前平断層が確認されている3)。
3. 地質リスク評価
(1) 事前地質調査結果
掘削箇所周辺には、既存の調査結果から岩盤強度が低い領域(主要な断層やスカルン鉱床)や大規模な貫入岩(アプライト)が存在することが想定された。掘削箇所の地質リスクを抽出するため、追加の地質調査(ボーリング調査、調査坑道壁面調査)を実施した。
地質調査の結果、掘削箇所には、飛騨変成岩類に属する黒雲母輝石片麻岩(以下、片麻岩)と、“伊西岩”と呼称されるミグマタイト構造を伴う珪長質岩(以下、伊西岩)が分布することを確認した。これに小規模なアプライト脈が貫入している。大局的には片麻岩優勢部と伊西岩優勢部が北東-南西走向で帯状に繰り返して分布する。片麻岩と伊西岩の境界は漸移的であり、分離面にはなりにくい性状である。一方、アプライト脈の境界部は相対的に分離面になりやすい性状である。また、掘削箇所およびその周囲には、主要な断層よりも小規模ではあるものの、鹿間谷断層や前平断層と同系統の断層(不連続面)が複数確認された。
(2) 地質リスクの抽出
事前の地質調査結果に基づき、地下空洞の掘削および長期安定性を考慮して、以下の地質リスクを抽出した。
①岩盤強度が低い主要な断層やスカルンにおいて緩み域の拡大や岩盤変位の増大が生じる
②片麻岩や伊西岩とアプライトの境界部が分離面となり、大規模な崩落が発生する
③不連続面の組み合わせによりキーブロックの形成や空洞壁面の変位増大が生じる
(3) 地質リスクの評価と対策
(2)で抽出した①~③のリスクに対し、それぞれ以下のように評価し対応した。
①については、主要な断層やスカルンは空洞の掘削や長期安定性に与える影響が大きいと評価し、それらを避けた位置とすることでリスクを回避した。また、②については、掘削箇所において空洞の不安定化をもたらす規模のアプライトは確認されず、小規模なアプライト脈については、支保工による対策で対応可能と評価した。一方、③は支保工による対策で空洞掘削が可能と判断されたものの、断層や節理が構造的な不連続面となり、空洞の長期安定性に影響を及ぼすことが懸念された。このため、③が本掘削工事における最も重要な地質リスクであると判断し、空洞の長期安定性に影響を及ぼす不連続面の特定を行った。具体的には、ボーリングコアや調査横坑壁面の観察結果(走向・傾斜、分布、性状など)から、不連続面を5段階のタイプ(I~V)に分類した。このうち、タイプIV以上に分類された不連続面は、特に卓越した連続性を有しており、空洞の安定性に影響を及ぼすリスクが高いものと評価し、支保設計に反映した。
4. 掘削段階における不連続面分布の評価
掘削段階では、切羽の地質観察やボアホールカメラ画像、岩盤変位計などの変位挙動等を分析し、掘削前に分類したタイプIV以上の不連続面が掘削段階でも想定通りに分布することを確認した。また、掘削段階で得られた詳細な地質情報をキーブロック形成の有無の確認や解析モデルの更新に活用することで空洞の安定性の確保と支保設計の最適化を実現した。なお、掘削に伴い新たに出現した不連続面についても適宜タイプ分けを行い、空洞の安定性に与える影響を評価した。
5. まとめ
タイプIV以上の不連続面は、掘削段階でも想定の範囲内で分布することが確認できた。したがって、タイプ分けによる評価手法は妥当であり、情報化設計において有効であると考えられる。本報告で示した地質リスク評価手法は、今後の大規模地下空洞掘削にも展開できるものと考える。
引用文献
1) Asaoka,Y. et al., 2026, PTEP, ptag091, https://doi.org/10.1093/ptep/ptag091
2) 加納, 2005, 富山市科学文化センター収蔵資料目録, 18, 1–167.
3) 田中ほか, 1971, 京都大学防災研究所年報, 14(A), 85–95.
ハイパーカミオカンデ(HK)は、超大型地下ニュートリノ観測装置であり、岐阜県飛騨市神岡町の地下600 mに計画された。その実験水槽は、円筒状で直径69 m、高さ94 m(ドーム部21 m+円筒部73 m)、体積320,000 m3に及ぶ大規模な地下空洞中に構築される1)。このような大規模地下空洞を安全に掘削するには、施工時に得られる地質や計測の情報を随時設計にフィードバックする情報化設計による施工が必要であり、施工前・施工中の地質リスク評価(地質調査に基づく、リスク抽出・評価・対策)が重要となる。
本報告では、HK掘削における地質リスク評価とその成果について報告する。
2. 地質概要
西南日本内帯の飛騨帯中央部に位置する神岡町には、主に片麻岩から構成される飛騨変成岩類と、それに貫入し飛騨変成岩類に熱変成作用をもたらした船津花崗岩類が分布している2)。また、飛騨変成岩類中には、神岡鉱山に代表されるスカルン鉱床の胚胎が知られている。なお、当該地域では北北東-南南西方向の鹿間谷断層と北西-南東方向の前平断層が確認されている3)。
3. 地質リスク評価
(1) 事前地質調査結果
掘削箇所周辺には、既存の調査結果から岩盤強度が低い領域(主要な断層やスカルン鉱床)や大規模な貫入岩(アプライト)が存在することが想定された。掘削箇所の地質リスクを抽出するため、追加の地質調査(ボーリング調査、調査坑道壁面調査)を実施した。
地質調査の結果、掘削箇所には、飛騨変成岩類に属する黒雲母輝石片麻岩(以下、片麻岩)と、“伊西岩”と呼称されるミグマタイト構造を伴う珪長質岩(以下、伊西岩)が分布することを確認した。これに小規模なアプライト脈が貫入している。大局的には片麻岩優勢部と伊西岩優勢部が北東-南西走向で帯状に繰り返して分布する。片麻岩と伊西岩の境界は漸移的であり、分離面にはなりにくい性状である。一方、アプライト脈の境界部は相対的に分離面になりやすい性状である。また、掘削箇所およびその周囲には、主要な断層よりも小規模ではあるものの、鹿間谷断層や前平断層と同系統の断層(不連続面)が複数確認された。
(2) 地質リスクの抽出
事前の地質調査結果に基づき、地下空洞の掘削および長期安定性を考慮して、以下の地質リスクを抽出した。
①岩盤強度が低い主要な断層やスカルンにおいて緩み域の拡大や岩盤変位の増大が生じる
②片麻岩や伊西岩とアプライトの境界部が分離面となり、大規模な崩落が発生する
③不連続面の組み合わせによりキーブロックの形成や空洞壁面の変位増大が生じる
(3) 地質リスクの評価と対策
(2)で抽出した①~③のリスクに対し、それぞれ以下のように評価し対応した。
①については、主要な断層やスカルンは空洞の掘削や長期安定性に与える影響が大きいと評価し、それらを避けた位置とすることでリスクを回避した。また、②については、掘削箇所において空洞の不安定化をもたらす規模のアプライトは確認されず、小規模なアプライト脈については、支保工による対策で対応可能と評価した。一方、③は支保工による対策で空洞掘削が可能と判断されたものの、断層や節理が構造的な不連続面となり、空洞の長期安定性に影響を及ぼすことが懸念された。このため、③が本掘削工事における最も重要な地質リスクであると判断し、空洞の長期安定性に影響を及ぼす不連続面の特定を行った。具体的には、ボーリングコアや調査横坑壁面の観察結果(走向・傾斜、分布、性状など)から、不連続面を5段階のタイプ(I~V)に分類した。このうち、タイプIV以上に分類された不連続面は、特に卓越した連続性を有しており、空洞の安定性に影響を及ぼすリスクが高いものと評価し、支保設計に反映した。
4. 掘削段階における不連続面分布の評価
掘削段階では、切羽の地質観察やボアホールカメラ画像、岩盤変位計などの変位挙動等を分析し、掘削前に分類したタイプIV以上の不連続面が掘削段階でも想定通りに分布することを確認した。また、掘削段階で得られた詳細な地質情報をキーブロック形成の有無の確認や解析モデルの更新に活用することで空洞の安定性の確保と支保設計の最適化を実現した。なお、掘削に伴い新たに出現した不連続面についても適宜タイプ分けを行い、空洞の安定性に与える影響を評価した。
5. まとめ
タイプIV以上の不連続面は、掘削段階でも想定の範囲内で分布することが確認できた。したがって、タイプ分けによる評価手法は妥当であり、情報化設計において有効であると考えられる。本報告で示した地質リスク評価手法は、今後の大規模地下空洞掘削にも展開できるものと考える。
引用文献
1) Asaoka,Y. et al., 2026, PTEP, ptag091, https://doi.org/10.1093/ptep/ptag091
2) 加納, 2005, 富山市科学文化センター収蔵資料目録, 18, 1–167.
3) 田中ほか, 1971, 京都大学防災研究所年報, 14(A), 85–95.
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