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[S1-O-2](Invited) Cambrian–Ordovician transition in reef-building modes: Land–ocean interactions and reorganisation of the Earth surface system
*Yoichi EZAKI1, Natsuko ADACHI1 (1. Osaka Metropolitan University)
Keywords:
reef,Cambrian,Ordovician,land–ocean interactions,Earth surface system
礁生態系は,高い生物多様性と生産性をもち,海洋環境と生物進化の相互関係を記録する重要な地質学的アーカイブである.とくに古生代初期の礁は,微生物群集を主体とする生態系から,骨格生物を主体とする複雑な生態系への転換を示し,オルドビス紀の生物大多様化事変 (GOBE) を理解する上で重要である.本発表では,北中国地塊と南中国地塊に発達するカンブリア紀からオルドビス紀の礁記録を比較し,礁構築様式の変遷を地球表層システムの再編過程として検討する.
北中国地塊のカンブリア系では,ストロマトライトやスロンボライトで代表される微生物礁が卓越した.山東省の朱砂洞層 (シリーズ2ステージ4) では,EpiphytonやRenalcisなどの石灰質微生物類からなる礁が形成され,張夏層 (ミャオリンギアン統ウリューアン階〜ガズハンジアン階) では,Epiphytonを主体とするスロンボライトが発達した.張夏層の礁の形成にはイシ海綿Rankenellaも関与した.一方,フロンギアン統の炒米店層では,ストロマトライトが広く発達するものの石灰質微生物類の産出は少なく,骨格生物礁の発達はきわめて限定的であった.したがって,北中国地塊のカンブリア紀の礁は,基本的には微生物優勢礁として位置づけられる.
これに対し,南中国地塊の下部オルドビス系では,礁構築様式に大きな変化が認められる.南津関層 (トレマドキアン階下部) では,海綿類Calathiumを含む微生物礁が発達し,最古級のコケムシ化石も報告されている (Ma et al., 2015).分郷層 (トレマドキアン階上部) では,「イシ海綿–コケムシ礁」や「コケムシ–有柄類礁」が形成された.さらに紅花園層 (トレマドキアン階上部〜フロイアン階) には,Calathium,イシ海綿,コケムシなどが関与する骨格生物優勢礁が発達し,最古級の層孔虫も報告されている (Li et al., 2017).このように,当時低緯度に位置していた南中国地塊では,微生物優勢礁から骨格生物優勢礁への置換を伴う礁構築様式の大転換が,世界的にも早期に進行した (Adachi et al., 2011).南中国地塊は,前期オルドビス紀に骨格生物礁が発展する重要な拠点であった.後期オルドビス紀には,層孔虫,床板サンゴ,石灰藻類などが両地塊で共通して繁栄し,礁生態系はさらに複雑化した.
このような礁の変遷は,単なる造礁生物の交替ではなく,海洋酸素化,気候の寒冷化,栄養塩循環,食物網構造の変化と結びついた生態系の再編として理解できる.カンブリア紀後期には,SPICE事変で代表される無酸素・硫化的水塊の拡大や海洋環境の不安定化により,骨格生物礁の発達は制約された.一方,オルドビス紀には,海水温の低下と海洋循環の活発化に伴って溶存酸素量が増加し,濾過食者や懸濁物食者を含む多様な消費者群の繁栄が促された (Lee and Riding, 2018).これにより,GOBEにつながる生物多様化が進行した.さらに,これらの変化の背後には,栄養塩循環や炭素循環の再編が関与していた可能性がある.その一因として,地衣類を含む初期陸上生態系の成立に注目する必要がある.初期陸上生態系は,岩石風化,土壌形成,窒素固定,リンなどの栄養塩の溶出・貯留を通じて,陸源栄養塩フラックスの量的・質的特性を変化させたと想定される.その結果,海洋の一次生産構造が変化し,アクリターク類などの一次生産者の増加を基盤として,キチノゾア,海綿,コケムシ,腕足類,筆石,棘皮動物などの消費者群の多様化が支えられた (Masuda and Ezaki, 2009).このような一次生産者から消費者群へと及ぶ生態系構造の変化は,オルドビス紀における礁構築様式の大転換とも整合的である.
以上のように,カンブリア紀からオルドビス紀にかけての礁生態系の変遷は,微生物優勢礁から骨格生物優勢礁への単なる移行ではなく,陸域と海域の相互作用を介して進行した地球表層システムの再編を反映する現象であった.GOBEと礁構築様式の大転換は,海洋内部で完結した現象ではなく,初期陸上生態系の成立がもたらした物質循環と生態系連関の変化の中に位置づけられる.
引用文献:Adachi et al. (2011) Palaios, 26, 106–114.; Lee and Riding (2018) Earth Sci. Rev., 181, 98–121.; Li et al. (2017) Lethaia, 50, 140–148.; Ma et al. (2015) Palaeontology, 58, 925–934.; Masuda and Ezaki (2009) Paleontol. Res., 13, 3–8.
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