Presentation Information
[T14-O-15]Relationship Between Rock Source in Stone-piled Terraced Rice Fields and Landform
*Hotaka ISHIZAWA1, Kenichiro Hatanaka1 (1. Nagano Environmental Conservation Research Institute)
Keywords:
Stone wall,Fluvial gravels,Nagano Prefecture
背景・目的
棚田畦畔には土羽と石積みがある。棚田の石積みを構成する岩石種については、岡島・鏑木(2011)、岡本・真田(2016)などにより、「石積みを構成する岩石種は現地の地質に対応する」とされてきた。一方で、大澤ほか(2025)および岡島・西脇(2017)では、石材の一部がそれぞれ約500 mと約700 m離れた地点から供給された可能性を指摘している。本研究では、長野県内の棚田畦畔における石材の供給源について、とくに外来の礫に着目し、その分布および供給源について検討した。
調査対象
調査対象地は、①農林水産省により「日本の棚田百選」または「つなぐ棚田遺産」に選定された棚田、②「信州棚田ネットワーク」に加盟している棚田、③「信州の棚田ものがたり」等の文献に掲載された棚田のうち、長野県内の石積み棚田であることが確認できた地点とした。本報告では、そのうち調査を実施した26地点について報告する。
調査方法
① 26地点の棚田の石積みにおいて肉眼観察を行い、構成する岩石種を同定した。各地点につき概ね50~100個の石材を対象とした。また、各石材の円磨度についても観察した。
②確認された岩石種について、産業技術総合研究所発行の5万分の1地質図幅と照合し、供給源を推定した。5万分の1地質図幅が未刊行の地域では、地域地誌に掲載された地質図および20万分の1日本シームレス地質図V2を利用した。必要に応じて岩石薄片を作製し、偏光顕微鏡による観察も行った。
結果および考察
26地点の石積みから確認された岩石種は計18種であり、出現頻度の高いものは安山岩、花崗岩、凝灰岩であった。最も多様な岩石種が確認された地点は白馬村深空であり、花崗岩(白亜紀有明花崗岩と推定)、ホルンフェルス(ジュラ紀白馬沢層と推定)、緑色岩(ペルム紀栂池コンプレックスと推定)、超苦鉄質岩など計11種類であった。これらのなかには、供給源までの直線距離が最大約8 kmと推定される岩石も含まれていた。一方、確認された岩石種が1種類のみの地点も2箇所みられた。
石積みを構成する石材の岩石種と地質図との対応関係は、以下の3類型に整理された。①石材の岩石種がすべて現地の地質と一致する(9地点)、②石材の岩石種がすべて流入河川上流部の地質と一致する(14地点)、③現地の地質と一致する石材と流入河川上流部の地質と一致する石材が混在する(3地点)。このうち、②に該当する14地点については、地形的には扇状地や河岸段丘などの河川地形が卓越していた。このことから、河川による運搬作用により多様な岩石が集積し、石積み材料として利用された可能性が高い。一方、③に該当する3地点については、地形的には谷底平野に分類された。この地形は表層地質と石積みの岩石種が一致する①の地点に多くみられるが、当該3地点の表層地質は泥岩や蛇紋岩であった。これらの岩石は耐久性が低い、あるいは滑りやすいといった性質を有するため、河川から供給される他種の岩石が利用可能な場合には、それらが優先的に使用された可能性が示唆された。
参考文献
・中野ほか,2002,地域地質研究報告5万分の1地質図幅金沢(10)第25号「白馬岳」,地質情報総合センター
・岡島・鏑木,2011,農地内石垣における使用石材と表層地質の関係.H23農業農村工学会大会講演会講演要旨集,604-605.
・岡島・西脇,2017,棚田・段畑法面構造の種別と表層地質の関連性.農業農村工学会論文集,304,Ⅰ_47-Ⅰ_54.
・岡本・真田,2016,徳島県の棚田・段畑の石積み継承に向けた維持管理状況と技術に関する研究.土木学会論文集D1,72-1,1-12.
・大澤ほか,2025,伊豆半島北西部の北山の棚田における石積の成立要因と維持状況.棚田学会誌,26,2-14.
・産総研地質調査総合センター,2026,20万分の1日本シームレス地質図V2,オリジナル版.https://gbank.gsj.jp/seamless/(閲覧日:2026年7月8日)
棚田畦畔には土羽と石積みがある。棚田の石積みを構成する岩石種については、岡島・鏑木(2011)、岡本・真田(2016)などにより、「石積みを構成する岩石種は現地の地質に対応する」とされてきた。一方で、大澤ほか(2025)および岡島・西脇(2017)では、石材の一部がそれぞれ約500 mと約700 m離れた地点から供給された可能性を指摘している。本研究では、長野県内の棚田畦畔における石材の供給源について、とくに外来の礫に着目し、その分布および供給源について検討した。
調査対象
調査対象地は、①農林水産省により「日本の棚田百選」または「つなぐ棚田遺産」に選定された棚田、②「信州棚田ネットワーク」に加盟している棚田、③「信州の棚田ものがたり」等の文献に掲載された棚田のうち、長野県内の石積み棚田であることが確認できた地点とした。本報告では、そのうち調査を実施した26地点について報告する。
調査方法
① 26地点の棚田の石積みにおいて肉眼観察を行い、構成する岩石種を同定した。各地点につき概ね50~100個の石材を対象とした。また、各石材の円磨度についても観察した。
②確認された岩石種について、産業技術総合研究所発行の5万分の1地質図幅と照合し、供給源を推定した。5万分の1地質図幅が未刊行の地域では、地域地誌に掲載された地質図および20万分の1日本シームレス地質図V2を利用した。必要に応じて岩石薄片を作製し、偏光顕微鏡による観察も行った。
結果および考察
26地点の石積みから確認された岩石種は計18種であり、出現頻度の高いものは安山岩、花崗岩、凝灰岩であった。最も多様な岩石種が確認された地点は白馬村深空であり、花崗岩(白亜紀有明花崗岩と推定)、ホルンフェルス(ジュラ紀白馬沢層と推定)、緑色岩(ペルム紀栂池コンプレックスと推定)、超苦鉄質岩など計11種類であった。これらのなかには、供給源までの直線距離が最大約8 kmと推定される岩石も含まれていた。一方、確認された岩石種が1種類のみの地点も2箇所みられた。
石積みを構成する石材の岩石種と地質図との対応関係は、以下の3類型に整理された。①石材の岩石種がすべて現地の地質と一致する(9地点)、②石材の岩石種がすべて流入河川上流部の地質と一致する(14地点)、③現地の地質と一致する石材と流入河川上流部の地質と一致する石材が混在する(3地点)。このうち、②に該当する14地点については、地形的には扇状地や河岸段丘などの河川地形が卓越していた。このことから、河川による運搬作用により多様な岩石が集積し、石積み材料として利用された可能性が高い。一方、③に該当する3地点については、地形的には谷底平野に分類された。この地形は表層地質と石積みの岩石種が一致する①の地点に多くみられるが、当該3地点の表層地質は泥岩や蛇紋岩であった。これらの岩石は耐久性が低い、あるいは滑りやすいといった性質を有するため、河川から供給される他種の岩石が利用可能な場合には、それらが優先的に使用された可能性が示唆された。
参考文献
・中野ほか,2002,地域地質研究報告5万分の1地質図幅金沢(10)第25号「白馬岳」,地質情報総合センター
・岡島・鏑木,2011,農地内石垣における使用石材と表層地質の関係.H23農業農村工学会大会講演会講演要旨集,604-605.
・岡島・西脇,2017,棚田・段畑法面構造の種別と表層地質の関連性.農業農村工学会論文集,304,Ⅰ_47-Ⅰ_54.
・岡本・真田,2016,徳島県の棚田・段畑の石積み継承に向けた維持管理状況と技術に関する研究.土木学会論文集D1,72-1,1-12.
・大澤ほか,2025,伊豆半島北西部の北山の棚田における石積の成立要因と維持状況.棚田学会誌,26,2-14.
・産総研地質調査総合センター,2026,20万分の1日本シームレス地質図V2,オリジナル版.https://gbank.gsj.jp/seamless/(閲覧日:2026年7月8日)
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