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[T14-O-20]The background and meaning of terms of geologic time derived from place names (part 1)

*Hisashi Suzuki1 (1. Otani University)
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Keywords:

geologic time,terms,Japanese

 地質年代区分で用いられる用語には,それぞれ背景と意味があって,それを理解することなしに,ただ記号のように用いるだけでは,本当の意味でその地質年代を理解したとは言えないであろう.日本地質学会が提示して会員や関連学会に半ば強制的に使用させている地質年代区分の用語は,英語の発音をただカタカナ化しただけで,背景にある意味を含蓄した訳語になっていない.その意味ではただの記号であって,A紀B世C期と呼ぶようなものである.ここでは地質年代用語の持つ背景と意味のうち,地名に由来する例を挙げて考察してみたい.
 地質年代用語のうち,名称が地名に由来する例が最も多い.この場合,比較的広範囲の地域名のこともあれば,農場名(ペルム紀のワード期)や農家の名前(シルル紀のゴルスティ期)だったりすることもある.そもそも地質年代の名前が提唱された時には模式的な場所であったものの,その後の検討で国際境界模式層序・位置(GSSP)が全く別の場所に設定されている場合がある.例えばカンブリア紀の名称はウェールズを表すケルト語「Cumbria」に由来する.ウェールズ地方はカンブリア系層序の古典的研究地域ではあるが,GSSPはカナダのニューファウンドランド島に置かれている.またデヴォン紀の名称は,イングランド南西部のデヴォン州にちなんでいるが,GSSPはチェコ共和国プラハ近郊のクロンク(Klonk)に置かれた.ジュラ紀の名称は,フランスとスイスの国境に分布するジュラ山脈に由来する.しかしジュラ紀のGSSPは西アルプスではなく,東アルプスのチロル州クーヨッホに置かれた.先カンブリア時代最後のエディアカラ紀の名称は,南オーストラリア州のエディアカラ丘陵に由来し,そのGSSPはエディアカラ丘陵に隣接するフリンダーズ山脈に置かれているので,比較的近い場所にある.ここで注意しなければならないのは,英語の地質年代用語はすべて形容詞化しなければならない点である.CambrianはCambriaを形容詞化したもので,DevonianはDevonを,JurassicはJuraを,EdiacaranはEdiacaraを,それぞれ形容詞化した用語である.ここで気づくのはいずれも一貫した語尾で形容詞化していない点である.CambrianはCambriaにnを付けただけであるし,DevonianはDevonにianをつけている.JurassicはJuraにssicが付いている.EdiacaranはEdiacaraにnをつけただけである.すなわち,形容詞化された地質年代用語を見ただけでは,由来となった地名の正確な綴りを理解できない構造となっている.
 では,世の地質年代単元はどうだろうか.世の単元はEarly,Middle,Lateといった通時的に表されることが多いが,固有名詞が付けられている例もいくつかある.カンブリア紀最初のテレヌーブ世の名称は,17世紀にフランスの植民地だったニューファンドランド島の地名“Terre Neuve”に由来する.カンブリア紀GSSPの決定とともに世の名称も示された(Landing et al., 2007).シルル紀は例外的に4つの世に区分され,古い方から新しい方へ,ランドヴェリー世,ウェンロック世,ラドロウ世,プシドリ世である.ランドヴェリー世は,ウェールズ南部の町ランドヴェリー(Llandovery)にちなんで名付けられた.なお,ウェールズ語では「スランドヴェリー」と発音されるそうである(磯﨑行雄私信).ウェンロック世は,イングランド中西部シュロップシャー州のマッチウェンロック近くにある山Wenlock Edgeにちなんで名付けられた.ラドロウ世は,イングランド中西部シュロップシャー州の町ラドロウ(Ludlow)にちなんで名付けられた.シルル紀最後のプシドリ世は,チェコ共和国プラハ近郊の自然保護区プシドリ(Přídolí)にちなんで名付けられた.なお,英語的にはプリドリと発音したくなるが,チェコ語のハーチェク(ˇ)がついたrは,「ジュ」「シュ」の発音となる.チェコ人の知人に発音してもらって確かめたことがあるが,確かに「プシドリ」と発音していた.ここでも地質年代用語の英語綴りを見てみると,TerreneuvianはTerre Neuveを形容詞化したものである.この場合,地名語尾のeが欠落し,ianが付けられている.なお,Geologic Time Scale 2020(Gradstein et al., 2020)では,シルル紀の世名称は形容詞化されずに地名のまま示されている.すなわち,Llandovery seriesといった表現である.ただし,出版された論文の中にはLlandoverianといった表現も見られる.この場合,地名語尾のyが欠落し,ianが付けられている.
文献 Gradstein, F. M. et al. (2020): Geologic Time Scale 2020 Volume 2. Elsevier. Landing, E. et al. (2007): Episodes, 30 (4): 287–289.

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