Presentation Information
[T18-P-16]Upper Triassic radiolarian and conodont biostratigraphy in the Inuyama area, Mino Belt, central Japan.★2026年度学生優秀発表賞受賞★
*Moriyoshi TAKEMUA1, Atsushi OSHIMA1, Mizuki MURAKAMI1, Tetsuji ONOUE1 (1. Kyushu Univ.)
Keywords:
Late Triassic,Biostratigraphy,Radiolarian,Conodont
後期三畳紀には,三畳紀末大量絶滅に先行して,複数回の大規模な環境変動や生物相の転換があったことが知られている.これらの時期や層序学的位置については,近年ヨーロッパや北アメリカにおける詳細なコノドント化石層序の構築と地域間対比に基づいて議論が進められている.一方,当時のパンサラッサ海遠洋域で堆積した深海堆積物である,日本のジュラ紀付加体中の層状チャートには,遠洋域における後期三畳紀の環境変動や生物相の転換が記録されていると考えられる.しかし,これらの層状チャートは主に放散虫化石層序に基づいて年代決定がなされており(例えばSugiyama, 1997),他地域のコノドント化石層序との対比が十分に行われていない.そのため,他地域との詳細な地質年代の対比を行うことができず,特にカーニアン/ノーリアン境界やノーリアン/レーティアン境界などの地質年代境界の認定には課題が残されている.そこで本研究では,岐阜県犬山地域の上部三畳系層状チャートを対象に,後期三畳紀カーニアンからレーティアンにかけての放散虫・コノドント統合化石層序を構築し,他地域のコノドント化石層序との対比を行った.
対象としたセクションは,岐阜県坂祝町を流れる木曽川の右岸に位置するセクションO,N,Kであり,全体の層厚は約44 mである.本セクションでは,Yamashita et al. (2018),Tomimatsu et al. (2021),Sato et al. (2023)などによって放散虫・コノドント統合化石層序の構築が部分的に進められている.本研究では,これらの先行研究での化石層序と,新しく採取した試料からの化石記録を統合し,後期三畳紀を通した高解像度かつ連続的な微化石層序を構築した.微化石の抽出には,近年確立されたNaOH法(Rigo et al., 2023; Onoue et al., 2024)を用いた.この手法は,従来のフッ化水素酸を用いた抽出法に比べて,安全かつ保存良好な微化石の抽出が可能である.
その結果,セクション全体から放散虫,コノドントの連続的な産出が確認された.放散虫については,セクション最下部ではラディニアン(中期三畳紀)から前期カーニアンに特徴的なMuelleritortis属が産出した.セクション下部から中部では,カーニアンから中期ノーリアンにかけて特徴的なCapnuchosphaera属やCapnodoce属が産出した.セクション上部では,後期ノーリアンからレーティアンにかけて特徴的なPalaeosaturnalis属やPraemesosaturnalis属が産出した.
一方コノドントについては,セクション下部では,前期カーニアンに特徴的なParagondolella属が産出した.セクション中部では,後期カーニアンから前期ノーリアンに特徴的なCarnepigondolella属やMetapolygnathus属,Epigondolella属が産出した.セクション上部では,中期ノーリアンからレーティアンにかけて特徴的なMockina属やMisikella属が産出した.産出したコノドントは,ヨーロッパや北アメリカにおいても共通して産出しており,特に本研究で構築したコノドント化石層序は,ヨーロッパにおけるカーニアンからレーティアンにかけてのコノドント化石層序との詳細な対比が可能であった.この対比の結果,Metapolygnathus parvusの初産出に基づきカーニアン/ノーリアン境界が,Misikella posthernsteiniの初産出に基づきノーリアン/レーティアン境界がそれぞれ本セクション内に認定された.
本研究により,美濃帯犬山地域の上部三畳系層状チャートにおいて,後期三畳紀カーニアンからレーティアンにかけての放散虫・コノドント統合化石層序が構築され,ヨーロッパや北アメリカのコノドント化石層序との詳細な対比が可能となった.この統合化石層序は,パンサラッサ海遠洋域に記録された後期三畳紀の環境変動と生物相の変化を,ヨーロッパや北アメリカの記録と対比して議論するための年代層序学的な基準となる.
(引用文献)
Onoue, T. et al., 2024, Scientific Reports 14, 12831.
Rigo, M. et al., 2023, Palaeontology 66 (4), e12672.
Sato, H. et al., 2023, Global and Planetary Change 229, 104239.
Sugiyama, K., 1997, Bulletin of the Mizunami Fossil Museum 24, 79–193.
Tomimatsu, Y. et al., 2021, Global and Planetary Change 197, 103387.
Yamashita, D. et al., 2018, Paleontological Research 22 (2), 167–197.
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