Presentation Information
[T12-P-4]Lithofacies and Diatom Assemblage Characteristics of Flood-induced Deposits Identified in a Sediment Core off the Fuji River, Suruga Bay
*Yusei MIYATA1, Yuka YOKOYAMA2, Izumi SAKAMOTO2, Kohsaku ARAI2, Tsumoru SAGAYAMA3, Seiji HORIUCHI4, Tomohito INOUE4, Asahiko TAIRA5 (1. Graduate School of Oceanography, Tokai University, 2. School of Marine Science and Technology, Tokai University, 3. HRCG, 4. PALYNOSURVEY CO., LTD, 5. Institute of Oceanic Research and Development, Tokai University)
Keywords:
Event deposit,Flood-induced deposit,Diatom,Suruga Bay,Fuji River
駿河湾では,湾奥部の富士川により,台風などによる大雨後に砕屑物を含む河川水が供給されることが知られている.富士川沖には,富士川から供給される砕屑物による富士川海底扇状地が発達し,富士川が海底に与える影響は大きいと推察される.また,富士川沖に設置された海底地震計の移動から,台風後には洪水起源混濁流が発生したことが報告されている(馬塲ほか,2021).他にも,実際の堆積物試料から台風前後で富士川沖堆積物が変化することが確認されている.したがって,富士川沖では大雨の後に洪水による海底への影響が多いことが示唆される.そこで本研究では,駿河湾富士川沖で採取されたコア試料を対象に,岩相,粒度分布および珪藻遺骸群集から,洪水起源堆積物の特徴を把握し,洪水時に沿岸域から深海底へ砕屑物が運搬・堆積する過程を明らかにすることを目的とした.
試料は,2024年10月10日に,東海大学望星丸BO24-12航海において,富士川河口から約18 km沖,水深約1500 mにてグラビティコアラーで採取したG01コア(長さ94 cm)を用いた.本試料は,岩相記載,レーザー回折散乱法による粒度分析(0.5 cm間隔)および珪藻分析を行った.珪藻分析では,栄養細胞殻を対象に各試料200個体を算定し,海水生種,汽水生種,淡水生種などの塩分区分および環境指標種群に基づき群集組成を比較した.また,浮遊性海水生種には,環境悪化時に休眠胞子となり,生息に適した環境に戻るまで堆積物中にて活動を休止する属種がいることが知られている.休眠胞子は栄養細胞とは形態・生態的な意義が異なることから,栄養細胞200個体の算定時に,別途計数した.
G01は,主に細粒砂からシルトへの級化構造の繰り返しからなり,砂層では植物片および雲母片を含む.粒度変化に伴い,色もオリーブ色(主にシルト層)と黒色(植物片を含む砂層)を繰り返すことが確認され,黒色層では下位と明瞭な境界が認められた.したがって,岩相特徴および明瞭な境界面により,Unit 1~7に区分した.そのうち,5つのUnit(Unit 1~3,5,6)では,各Unitの基底部に植物片や雲母を含む砂質堆積物が認められ,正級化構造,平行ラミナが発達する特徴が確認された.これらの特徴から,Unit 4以外はイベント堆積物であると推定した.また,富士川沖では大雨の前後で海底堆積物が変化すること,および各Unit基底部に植物片を含むことなどから,これらは洪水起源堆積物と推定した.一方,Unit 4は他と異なり,無構造の黒色シルト(層厚約8 cm)からなり,粒度変化が認められず(最頻値:約6.4 φ),Unit上下は明瞭な境界で区分された.これらの特徴は,高濃度細粒懸濁粒子による洪水流によって形成されるFluid mudの特徴(西田・伊藤,2009)と一致することから,Unit 4はFluid mudと推定した.
洪水堆積物(Unit 1~3,5,6)での珪藻遺骸群集は,基底部の植物片を含む砂質堆積物で淡水生種が優勢し,最上部の泥質堆積物に向かうにつれて海水生種が増加する傾向がみられた.また,粒度変化に対応して海水生種と淡水生種の割合が変化した.産出した珪藻遺骸は,淡水生種では流水域に生息する付着性種が,海水生種では外洋域に多産するT. nitzschioidesや,沿岸域に多産するS. costatumおよびChaetoceros属などの浮遊性海水生種が多くみられた.以上のことから,G01の洪水堆積物は洪水初期または洪水流の営力が強い段階に河川由来粒子が多く運搬され,その後,河川水の流入が弱まるにつれて細粒堆積物および海水生種の寄与が相対的に大きくなったことを示すと考えられる.
一方,Unit 4の珪藻遺骸群集では,海水生種および海水~汽水生種合わせて98 %で,淡水生種は僅かとなった.属種では,Chaetoceros属が全体の70 %を占め,別途計数したChaetoceros属の休眠胞子も多量に産出した.また,Chaetoceros属と同様に比較的薄い殻をもつ浮遊性海水生種が破損の少ない状態で認められた.しかし,他Unitで多産したT. nitzschioidesは約2 %と低率であった.休眠胞子の多産は,大量に取り込まれたChaetoceros属が洪水に伴う濁度上昇や塩分・栄養塩環境の変化を受け,休眠胞子を形成した可能性が示唆された.
したがって,洪水堆積物層では岩相・粒度変化と淡水・海水生種の変化がよく一致し,洪水の営力変化をよく反映したものと考えられた.しかし,Unit 4では,それらの変化は認められず,休眠胞子および浮遊性海水生種の多産と薄殻な属の良好な保存状態が確認された.今後,コア全体の珪藻遺骸群集の変化と岩相・粒度との対応関係の検討,および岩相・粒度が比較的均質なUnit 4における珪藻遺骸群集の層内変化も明らかにし,洪水起源堆積物の形成過程の検討を行っていく.
【引用文献】馬塲ほか(2021)地震,73,197-207.西田・伊藤(2009)地質学雑誌,115,4,149-167.
試料は,2024年10月10日に,東海大学望星丸BO24-12航海において,富士川河口から約18 km沖,水深約1500 mにてグラビティコアラーで採取したG01コア(長さ94 cm)を用いた.本試料は,岩相記載,レーザー回折散乱法による粒度分析(0.5 cm間隔)および珪藻分析を行った.珪藻分析では,栄養細胞殻を対象に各試料200個体を算定し,海水生種,汽水生種,淡水生種などの塩分区分および環境指標種群に基づき群集組成を比較した.また,浮遊性海水生種には,環境悪化時に休眠胞子となり,生息に適した環境に戻るまで堆積物中にて活動を休止する属種がいることが知られている.休眠胞子は栄養細胞とは形態・生態的な意義が異なることから,栄養細胞200個体の算定時に,別途計数した.
G01は,主に細粒砂からシルトへの級化構造の繰り返しからなり,砂層では植物片および雲母片を含む.粒度変化に伴い,色もオリーブ色(主にシルト層)と黒色(植物片を含む砂層)を繰り返すことが確認され,黒色層では下位と明瞭な境界が認められた.したがって,岩相特徴および明瞭な境界面により,Unit 1~7に区分した.そのうち,5つのUnit(Unit 1~3,5,6)では,各Unitの基底部に植物片や雲母を含む砂質堆積物が認められ,正級化構造,平行ラミナが発達する特徴が確認された.これらの特徴から,Unit 4以外はイベント堆積物であると推定した.また,富士川沖では大雨の前後で海底堆積物が変化すること,および各Unit基底部に植物片を含むことなどから,これらは洪水起源堆積物と推定した.一方,Unit 4は他と異なり,無構造の黒色シルト(層厚約8 cm)からなり,粒度変化が認められず(最頻値:約6.4 φ),Unit上下は明瞭な境界で区分された.これらの特徴は,高濃度細粒懸濁粒子による洪水流によって形成されるFluid mudの特徴(西田・伊藤,2009)と一致することから,Unit 4はFluid mudと推定した.
洪水堆積物(Unit 1~3,5,6)での珪藻遺骸群集は,基底部の植物片を含む砂質堆積物で淡水生種が優勢し,最上部の泥質堆積物に向かうにつれて海水生種が増加する傾向がみられた.また,粒度変化に対応して海水生種と淡水生種の割合が変化した.産出した珪藻遺骸は,淡水生種では流水域に生息する付着性種が,海水生種では外洋域に多産するT. nitzschioidesや,沿岸域に多産するS. costatumおよびChaetoceros属などの浮遊性海水生種が多くみられた.以上のことから,G01の洪水堆積物は洪水初期または洪水流の営力が強い段階に河川由来粒子が多く運搬され,その後,河川水の流入が弱まるにつれて細粒堆積物および海水生種の寄与が相対的に大きくなったことを示すと考えられる.
一方,Unit 4の珪藻遺骸群集では,海水生種および海水~汽水生種合わせて98 %で,淡水生種は僅かとなった.属種では,Chaetoceros属が全体の70 %を占め,別途計数したChaetoceros属の休眠胞子も多量に産出した.また,Chaetoceros属と同様に比較的薄い殻をもつ浮遊性海水生種が破損の少ない状態で認められた.しかし,他Unitで多産したT. nitzschioidesは約2 %と低率であった.休眠胞子の多産は,大量に取り込まれたChaetoceros属が洪水に伴う濁度上昇や塩分・栄養塩環境の変化を受け,休眠胞子を形成した可能性が示唆された.
したがって,洪水堆積物層では岩相・粒度変化と淡水・海水生種の変化がよく一致し,洪水の営力変化をよく反映したものと考えられた.しかし,Unit 4では,それらの変化は認められず,休眠胞子および浮遊性海水生種の多産と薄殻な属の良好な保存状態が確認された.今後,コア全体の珪藻遺骸群集の変化と岩相・粒度との対応関係の検討,および岩相・粒度が比較的均質なUnit 4における珪藻遺骸群集の層内変化も明らかにし,洪水起源堆積物の形成過程の検討を行っていく.
【引用文献】馬塲ほか(2021)地震,73,197-207.西田・伊藤(2009)地質学雑誌,115,4,149-167.
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