Presentation Information
[T6-P-3]Sr Isotope Stratigraphy of Fish Teeth from Pelagic Clay at IODP Exp. 405 Site C0026
*Masao Iwai1, Tsuyoshi Ishikawa2,1, Minori Hagino3, Exp.405 Scientists IODP (1. Kochi University, 2. JAMSTEC, 3. Yamagata University)
Keywords:
pelagic clay,Eocene-Oligocene Boundary,Fish teeth,Sr isotop age,North west Pacific
Site C0019は日本海溝前縁部に位置し、2011年東北地方太平洋沖地震時に巨大浅部すべりが発生したプレート境界デコルマ面を、IODP Exp.343/JFASTおよびExp.405/JTRACKによって直接掘削したサイトである。Kirkpatrick et al. (2025) は、海溝近傍における巨大浅部すべりの主要因として、遠洋性粘土層境界に沿って発達した極めて局在化したプレート境界断層の存在を明らかにし、入力堆積物の層序・岩相が断層の形成位置や力学特性を規定することを示した。 Site C0026は日本海溝海溝軸東方約8 kmの太平洋プレート上に位置するインプットサイトであり、沈み込み前の堆積物および海洋地殻セクションの復元を目的として掘削された。これまで珪藻・放散虫化石層序および古地磁気層序に基づく暫定的な年代モデルが構築されているが、巨大浅部すべりとの関連が注目される遠洋性粘土層では微化石の産出が乏しく、年代制約が不十分であった。
そこで本研究では、IODP Exp.405 Hole C0026BのCore 20K–29K(Unit 2)を対象に魚歯化石を用いたSr同位体年代測定を実施した。試料には、Section C0026B-26K-1Wの2層準から回収された大型魚歯化石2試料と、放散虫分析用コアキャッチャー残渣から回収した微小魚歯化石を用いた。試料は超音波洗浄および蒸留水による洗浄後、5%酢酸で処理し、ICP-MSによるSr濃度測定、Srレジンを用いたイオン交換クロマトグラフィーによる精製を行った。Sr同位体比(87Sr/86Sr)は高知コアセンターのTIMSで測定し、NIST SRM 987で補正した。得られた同位体比を全球Sr同位体年代較正曲線(McArthur et al., 2020)と比較して年代を推定した。 その結果、Unit 2最上部(20K-CC;247 mbsf)のSr同位体年代は約22 Maで、既存の微化石年代モデルと整合した。一方、21K~26K(250–269 mbsf)では約33–34 Maの年代がほぼ一定して得られ、始新世–漸新世境界(33.9 Ma)付近に相当した。さらにUnit 2最下部(29K-CC;279 mbsf)では少なくとも約86 Maを示し、上部白亜系放散虫化石群集から推定される年代と調和的であった。 遠洋性粘土はCCD以深の深海底に広く分布し、生物起源粒子の供給が少ない環境で風成塵や自生鉱物の蓄積によって形成される。従来、その堆積速度は一般に0.1–1 cm/kyr程度、北太平洋中央部では0.1–0.25 cm/kyr以下と考えられてきた(Costa et al., 2024)。近年の230Th年代学に基づく研究では、太平洋の遠洋性粘土の中央値として0.28 cm/kyrが報告されている(Costa et al., 2025)。 今回得られたSr同位体年代に基づくと、Unit 2中部では33–34 Maの層準が約20 mにわたって発達しており、見かけ上の堆積速度は約2 cm/kyrに達する。この値は従来報告されている遠洋性粘土の堆積速度を大きく上回り、日本海溝へ流入する遠洋性粘土の形成過程や堆積環境について再検討が必要であることを示唆する。
References
Kirkpatrick et al. (2025) Science, 391, 489–493.
McArthur et al. (2020) Chapter 7, Strontium Isotope Stratigraphy, in Geologic Time Scale 2020.
Costa et al. (2024) Geochimica et Cosmochimica Acta, 369, 126–140.
Costa et al. (2025) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 26, e2024GC011717.
そこで本研究では、IODP Exp.405 Hole C0026BのCore 20K–29K(Unit 2)を対象に魚歯化石を用いたSr同位体年代測定を実施した。試料には、Section C0026B-26K-1Wの2層準から回収された大型魚歯化石2試料と、放散虫分析用コアキャッチャー残渣から回収した微小魚歯化石を用いた。試料は超音波洗浄および蒸留水による洗浄後、5%酢酸で処理し、ICP-MSによるSr濃度測定、Srレジンを用いたイオン交換クロマトグラフィーによる精製を行った。Sr同位体比(87Sr/86Sr)は高知コアセンターのTIMSで測定し、NIST SRM 987で補正した。得られた同位体比を全球Sr同位体年代較正曲線(McArthur et al., 2020)と比較して年代を推定した。 その結果、Unit 2最上部(20K-CC;247 mbsf)のSr同位体年代は約22 Maで、既存の微化石年代モデルと整合した。一方、21K~26K(250–269 mbsf)では約33–34 Maの年代がほぼ一定して得られ、始新世–漸新世境界(33.9 Ma)付近に相当した。さらにUnit 2最下部(29K-CC;279 mbsf)では少なくとも約86 Maを示し、上部白亜系放散虫化石群集から推定される年代と調和的であった。 遠洋性粘土はCCD以深の深海底に広く分布し、生物起源粒子の供給が少ない環境で風成塵や自生鉱物の蓄積によって形成される。従来、その堆積速度は一般に0.1–1 cm/kyr程度、北太平洋中央部では0.1–0.25 cm/kyr以下と考えられてきた(Costa et al., 2024)。近年の230Th年代学に基づく研究では、太平洋の遠洋性粘土の中央値として0.28 cm/kyrが報告されている(Costa et al., 2025)。 今回得られたSr同位体年代に基づくと、Unit 2中部では33–34 Maの層準が約20 mにわたって発達しており、見かけ上の堆積速度は約2 cm/kyrに達する。この値は従来報告されている遠洋性粘土の堆積速度を大きく上回り、日本海溝へ流入する遠洋性粘土の形成過程や堆積環境について再検討が必要であることを示唆する。
References
Kirkpatrick et al. (2025) Science, 391, 489–493.
McArthur et al. (2020) Chapter 7, Strontium Isotope Stratigraphy, in Geologic Time Scale 2020.
Costa et al. (2024) Geochimica et Cosmochimica Acta, 369, 126–140.
Costa et al. (2025) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 26, e2024GC011717.
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