Presentation Information
[T14-O-6]The relationship between fish distribution/fishing ground formation, and seafloor geology/topography – A case study off the coast of Wajima City –.
*Ryuji HAYASAKA1, Shiori ARIMA1, Yuriko IIDUKA1, Yoshihisa SATO2 (1. PASCO Corporation, 2. Kanazawa Univ.)
Keywords:
off the coast of Wajima City,fish distribution,fishing ground formation,fishing method,seafloor geology,origin of landforms
1.背景・目的
地球温暖化抑制効果が期待される洋上風力発電事業など,資源・エネルギーをめぐる海洋の高度利用は今後ますます加速していくものとみられる。事業のスムーズな導入を図るうえで,先行利用者である漁業者との合意形成は重要である。従来のトレードオフ型(補償型)の解決ではなく同時解決型(漁業との空間共有,デメリット→メリット変換発想による漁業振興)の選択が必要とされる。
漁業と事業との空間共有や水産資源保護の観点からの空間デザインの可能性を,海洋生態系や漁業実態,漁業継続を前提としたニーズ等の把握を通して,合意を形成していく必要があるが,知見が乏しく,データに基づく議論がほとんど行えていないのが実情である。そもそも生業としての漁業,漁獲対象種の分布・生態系,これに関与する条件…といった根本的な事項をまず理解することが重要である。
このためまず,石川県輪島市沖を対象に,魚類の分布と操業実態について把握・整理した。森野(2024)は底質と漁業との関係について山形県鶴岡市由良沖の例を報告しているが,輪島市沖においても魚類の分布と漁場の形成に海底地質・地形が深く関与していることが推察された。それは,あたかも陸上生態系の成立に明瞭にみられるものと酷似している。
謝辞:本報告の内容は,環境省事業(漁業関係者等の理解醸成に資する海洋生態系観測システム実証事業)にて得られた成果の一部である。技術アドバイザーの伊藤靖博士(漁村総研)には漁業・漁場,漁獲対象種の生態等に関しご助言を賜った。荒井晃作博士(産総研(当時))・井上卓彦博士(産総研)には当該海域の海底地質,音波探査記録の解釈等についてご助言を賜った。記してお礼申し上げます。
2.地域概況;輪島市沖
調査対象海域の輪島市沖は,日本海のほぼ中央部に突き出した能登半島の先端に位置する,水深約150mまでの範囲で,陸域に連なる比較的水深の浅い海域である。東北東-西南西方向の断層・褶曲軸によって平坦面が区切られ,七ツ島・嫁礁(よめぐり),舳倉島等,一部が海面上に現れ島しょを形成する。島しょ部の地質は安山岩質溶岩から成る。海底は一部火山岩質の岩盤が露出するか,広く砂泥が覆う。
3.輪島市沖の漁業
調査対象海域での主な操業は刺し網・かご・延べ縄・こぎ刺し・釣り・底曳き・まき網等である。最も操業者の多い刺し網漁ではヒラメ・マダイ・ブリ類(フクラギ・ガンド含む)・ウスメバル等が漁獲される。また延べ縄漁ではフグ,底曳き網漁ではマダイ・フグ・アマダイ・ヒラメ等,まき網漁ではブリ類・アジ等,釣りではウスメバル・アラ・マグロ・ブリ類等である。輪島のブランド魚の一つであるアマダイは水深50~130mの砂泥海域でとりわけこぎ刺し網にて周年操業される(旬は6~9月)。また近年,輪島市沖は「ヒラマサ釣り」(遊漁)でも有名となっている。国の重要無形民俗文化財に指定されている海女漁も,主な漁場は能登半島沖の舳倉島や七ツ島・嫁礁(よめぐり)等であり,「磯」が多い地質的な条件が海女漁ルーツの背景にあると推察される。
4.漁船漁業の操業実態
上記主要な漁法の従事者にアンケート調査を行って,操業実態を把握した。その結果,操業の多い海域が,海底地形の斜面や起伏の多い場所にほぼ一致していた。
5.海底地形の成因;輪島市沖の海底地質
井上・岡村(2010)などによると,調査対象海域の海底地質は上位(海底面)から完新統門前沖層,更新統輪島沖層群上部,上部中心統~鮮新統輪島沖層群下部,中部~上部中新統南志見沖層群が堆積するとみられ,その下位は音響基盤となっている。音波探査の結果によれば,中新統南志見沖層群及び音響基盤は断層・褶曲による構造が顕著にみられるのに対し,これより上位は整然と累重している。褶曲や多くの断層群は,井上・岡村(2010)によると“中新世に南北から北北西-南南東の圧縮によって発達したと考えられる”が,より南側にはこれより前の時代の,日本海拡大期のものとみられる正断層系の陥没地形がみられ,輪島沖層群の厚い堆積により埋積されている。これらの構造運動により,東北東-西南西方向に発達する谷・尾根(または台地)の繰り返しが複雑な海底地形を形成している。特に七ツ島と嫁礁を結ぶ区域は規模の大きな隆起帯で,その縁辺は複雑な斜面となっており「漁場となっている」。一方隆起帯上の平坦面は広く砂底となっており漁獲対象種の蝟集が乏しいため砂地特有の魚種(アマダイ漁等)を除いて主要な「漁場となっていない」。
6.文献
井上卓彦・岡村行信,2010,能登半島北部周辺20万分の1 海域地質図及び同説明書.産業技術総合研究所
森野善広,2024,山形県鶴岡市由良沖の底質と漁業との関係.日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T3-O-13
地球温暖化抑制効果が期待される洋上風力発電事業など,資源・エネルギーをめぐる海洋の高度利用は今後ますます加速していくものとみられる。事業のスムーズな導入を図るうえで,先行利用者である漁業者との合意形成は重要である。従来のトレードオフ型(補償型)の解決ではなく同時解決型(漁業との空間共有,デメリット→メリット変換発想による漁業振興)の選択が必要とされる。
漁業と事業との空間共有や水産資源保護の観点からの空間デザインの可能性を,海洋生態系や漁業実態,漁業継続を前提としたニーズ等の把握を通して,合意を形成していく必要があるが,知見が乏しく,データに基づく議論がほとんど行えていないのが実情である。そもそも生業としての漁業,漁獲対象種の分布・生態系,これに関与する条件…といった根本的な事項をまず理解することが重要である。
このためまず,石川県輪島市沖を対象に,魚類の分布と操業実態について把握・整理した。森野(2024)は底質と漁業との関係について山形県鶴岡市由良沖の例を報告しているが,輪島市沖においても魚類の分布と漁場の形成に海底地質・地形が深く関与していることが推察された。それは,あたかも陸上生態系の成立に明瞭にみられるものと酷似している。
謝辞:本報告の内容は,環境省事業(漁業関係者等の理解醸成に資する海洋生態系観測システム実証事業)にて得られた成果の一部である。技術アドバイザーの伊藤靖博士(漁村総研)には漁業・漁場,漁獲対象種の生態等に関しご助言を賜った。荒井晃作博士(産総研(当時))・井上卓彦博士(産総研)には当該海域の海底地質,音波探査記録の解釈等についてご助言を賜った。記してお礼申し上げます。
2.地域概況;輪島市沖
調査対象海域の輪島市沖は,日本海のほぼ中央部に突き出した能登半島の先端に位置する,水深約150mまでの範囲で,陸域に連なる比較的水深の浅い海域である。東北東-西南西方向の断層・褶曲軸によって平坦面が区切られ,七ツ島・嫁礁(よめぐり),舳倉島等,一部が海面上に現れ島しょを形成する。島しょ部の地質は安山岩質溶岩から成る。海底は一部火山岩質の岩盤が露出するか,広く砂泥が覆う。
3.輪島市沖の漁業
調査対象海域での主な操業は刺し網・かご・延べ縄・こぎ刺し・釣り・底曳き・まき網等である。最も操業者の多い刺し網漁ではヒラメ・マダイ・ブリ類(フクラギ・ガンド含む)・ウスメバル等が漁獲される。また延べ縄漁ではフグ,底曳き網漁ではマダイ・フグ・アマダイ・ヒラメ等,まき網漁ではブリ類・アジ等,釣りではウスメバル・アラ・マグロ・ブリ類等である。輪島のブランド魚の一つであるアマダイは水深50~130mの砂泥海域でとりわけこぎ刺し網にて周年操業される(旬は6~9月)。また近年,輪島市沖は「ヒラマサ釣り」(遊漁)でも有名となっている。国の重要無形民俗文化財に指定されている海女漁も,主な漁場は能登半島沖の舳倉島や七ツ島・嫁礁(よめぐり)等であり,「磯」が多い地質的な条件が海女漁ルーツの背景にあると推察される。
4.漁船漁業の操業実態
上記主要な漁法の従事者にアンケート調査を行って,操業実態を把握した。その結果,操業の多い海域が,海底地形の斜面や起伏の多い場所にほぼ一致していた。
5.海底地形の成因;輪島市沖の海底地質
井上・岡村(2010)などによると,調査対象海域の海底地質は上位(海底面)から完新統門前沖層,更新統輪島沖層群上部,上部中心統~鮮新統輪島沖層群下部,中部~上部中新統南志見沖層群が堆積するとみられ,その下位は音響基盤となっている。音波探査の結果によれば,中新統南志見沖層群及び音響基盤は断層・褶曲による構造が顕著にみられるのに対し,これより上位は整然と累重している。褶曲や多くの断層群は,井上・岡村(2010)によると“中新世に南北から北北西-南南東の圧縮によって発達したと考えられる”が,より南側にはこれより前の時代の,日本海拡大期のものとみられる正断層系の陥没地形がみられ,輪島沖層群の厚い堆積により埋積されている。これらの構造運動により,東北東-西南西方向に発達する谷・尾根(または台地)の繰り返しが複雑な海底地形を形成している。特に七ツ島と嫁礁を結ぶ区域は規模の大きな隆起帯で,その縁辺は複雑な斜面となっており「漁場となっている」。一方隆起帯上の平坦面は広く砂底となっており漁獲対象種の蝟集が乏しいため砂地特有の魚種(アマダイ漁等)を除いて主要な「漁場となっていない」。
6.文献
井上卓彦・岡村行信,2010,能登半島北部周辺20万分の1 海域地質図及び同説明書.産業技術総合研究所
森野善広,2024,山形県鶴岡市由良沖の底質と漁業との関係.日本地質学会第131年学術大会講演要旨,T3-O-13
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