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[T14-O-8]Geological environment and mining culture at the Matsukura Gold Mine, one of the seven Etchu gold mines: Insights from electrum mode of occurrence, smelting slag, and LiDAR tunnel survey

*Masaki SATO1 (1. Uozu buried forest museum)
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Keywords:

mine,Toyama,slag,LiDAR,gold mine

1. はじめに
富山県魚津市の松倉金山は,近世加賀藩の財政を支えた「越中七金山」の一つで,金・銀・銅を複合産出した重要拠点である.従来,文献史学や考古学的研究(金挽臼など)は蓄積されてきたが,基盤たる「地質環境」そのものへの着目や,自然科学的視点からの調査・文献再検討は近年ほとんど行われてこなかった. 本研究は,地質データと歴史記述を融合させる「文化地質学」の観点から,鉱石・製錬スラグの近代機器分析,およびスマートフォンを用いた坑道調査を実施し,近世技術者の地質認識と技術的適応を解明することを目的とする.
2. 歴史的文書にみる鉱山文化と地学的解釈
近世の技術者が用いた「山言葉」は,地域の地質構造を写し出す鍵である.『越中鉱山雑誌』(寛永年中)には,松倉の鉱石として金銀合金を指す「青金」の記載があり,肉眼で品位や鉱物種を識別していた文化水準の高さを示している. また,住友家の記録『年々帳一番(1707年)』には,銀脈が銅鉱へ変化した記述とともに「是上うすみかつきニて,立之方へ鏈筋割込たる山と相見へ候」とある.「うすみかつき」の「うすみ」は斜面が低くなる(谷側)方向,「かつき」は鉱脈が潜り込む(傾斜する)ことを意味する.東に山,西に谷が位置する松倉の地勢に照らすと,当時の技術者は「鉱脈が西側(谷側)へ傾斜して盤の中に分岐・潜り込んでいる」という正確な三次元的地質構造認識を共有していたと判明した.
3. 鉱石・スラグの自然科学分析
採集した鉱石および製錬スラグの機器分析(HHXRF,SEM-EDX,EPMA等)を行った. 鉱石からは最大3mm超の「糸金」状の粗粒なエレクトラム(金銀合金)が発見された.SEM-EDX観察の結果,これは水酸化鉄(褐鉄鉱)の細脈中に点在する特異な産状を示した.明瞭な石英脈を伴わず,水酸化鉄主体の変質帯に金が偏在する地質環境であった.また,大型の針銀鉱(Ag₂S)結晶も検出された.これらは風化に強く比重分離しやすいため,当時の技術者は灰吹法だけでなく,鉱石をすりつぶして水中で比重選鉱(椀掛け)するという,地域の地質に最適化された「選鉱文化」を発展させ得たと推察される. 初検出の製錬スラグは,全体分析でAu 4 g/t,Ag 200 g/tの高い品位を示し,鉛(Pb)やリン(P)も検出された.これは鉛を用いる「灰吹法」による銀製錬スラグの特徴と一致する.古文書にある「道草金を灰吹して買い取ってもらった」との記述通り,松倉金山が「金山」から「銀山」へと稼行対象を変化させていった操業シフトを,科学的データが裏付ける結果となった.
4. スマートフォンを用いた坑道調査
iPhone等のLiDAR技術を活用し,坑内を精密に三次元測定した.解析の結果,松倉地区では鉱脈を追った「露頭掘り(竪穴掘り)」のすり鉢状遺構がみられたのに対し,隣接する虎谷地区では鉱脈を不規則に追尾した「ひ追い掘り」や,直線的な「坑道掘り(水平坑)」が確認された.またスキャンにより,不規則な「採鉱場(石室)」と,直線的な「普請坑(通路・排水路)」の構造的差異が明瞭に可視化された. 採鉱場から続く鉱脈の連続性を解析したところ,走向 N50°E,傾斜はほぼ垂直(鉛直)であった.これは本地域が低硫化型浅熱水性金鉱床である特徴を裏付けると同時に,近世の坑夫が垂直な薄い鉱脈に対して的確にアプローチしていた技術文化の証明である.坑内には江戸時代の掘削管理を示す「のみ角」と近代の「鑿岩機跡」が併存し,人間活動が形成した「文化的景観」の価値が浮き彫りになった.
5. おわりに
本研究は,松倉金山を対象に「文化」と「地質」の側面を自然科学分析とデジタル計測によって統合した. その結果,①水酸化鉄を伴う粗粒エレクトラムの存在が近世の「すりつぶし・椀掛け」という選鉱文化を育んだ可能性,②山言葉「うすみかつき」に代表される空間認識文化,③スラグ分析が証明した「金から銀・銅へ」の製錬文化の変遷,④LiDARが可視化した垂直な鉱脈構造とそれに応じた採掘遺構の形成,が明らかとなった. 松倉金山は,グリーンタフ変動がもたらした地質の恵みに対し,人間が技術文化を適応させてきた優れたフィールドである.今後は周辺の七金山との広域的な比較を進め,歴史文化形成に与えた影響をより深く考究したい.

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