Presentation Information

[T14-P-5]Petrological Characteristics of "Aoi-ishi" from the Takeno Area, Toyooka City, Hyogo Prefecture, and Its Use and Historical Transition in Shrine Stone Structures during the Early Modern and Modern Periods

*Yukari KONDO1, Norihito KAWAMURA1 (1. UNIVERSITY OF HYOGO)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Stone material,Aoi-ishi stone,Tuff,The early modern and modern periods,Toyooka City,Hyogo Prefecture


 本研究の意義は、近世・近代の石造文化の価値を見直す点にある。坂井(2019)は、近世・近代の石造文化は地域社会で特色ある文化を生み出し、大きな役割を果たしてきたと述べている。さらに、今後はその存在を調査して記録化を進め、歴史や文化財としての価値を検討し、必要な物については保存を図る必要性があるとも指摘している。 
本研究の対象である石材「青井石」は、兵庫県豊岡市竹野町の通称「青井浜」周辺を中心に採掘され、平成13年(2001年)に最後の採石場が閉山した。青井石は、安政6年(1859年)の『但馬国新図』の中では「浜切石」と記載されている。その名称が、青井石として用いられ始めた時期は史料からは特定できないが、『竹野町史』(竹野町史編纂委員会編、1990 )等で通称名として使われている。青井石は土木建築資材や生活用具、さらには神社仏閣の石造物にいたるまで、幅広く利用されてきた。しかし、近世から近代にかけて隆盛を極めた青井石は、詳細な学術的記録がなされないまま、代替建材の普及などに伴い産出終了を迎えた。そのため本研究では、これまで曖昧なまま呼称されてきた青井石を特定し、自然科学的アプローチによってその岩石学的特性を解明するとともに、人文学的アプローチから地域社会における産業的・文化的役割を明らかにすることを目的とする。
本研究の対象地域は、山陰海岸国立公園中央部の竹野町東部海岸付近である。竹野地域の地質は、新第三紀中新世の北但層群豊岡累層であり、主に礫岩、砂岩、および両者の互層からなり、凝灰岩が挟在する(弘原海・松本、1958)。
本研究の調査方法は以下の通りである。まず、かつて石材が切り出された石切場を特定するために、文献調査、聞き取り調査、および現地踏査をおこなった。次に、この調査によって特定された石切場のうち最も採掘が盛んだったと思われる石切場から採取した試料に対して肉眼観察、岩石薄片の顕微鏡観察、および粉末X線回折(XRD)分析により、岩石学的特徴と構成鉱物を明らかにした。さらに、人文学的調査として、竹野町とその周辺地域(竹野川流域)に所在する神社の石造物を対象に、奉納年代の判読および岩石種の特定を行った。
その結果、本研究では青井石は、竹野町竹野の5ヶ所の石切場で採石された火山礫凝灰岩および凝灰角礫岩からなる石材とする。さらに、石材の色調は黄灰色、緑灰色を呈し、最も大きい礫で約10cm、最も小さい礫で約0.5cmの亜角礫〜角礫がみられる。含まれる礫の種類は、安山岩、緑色凝灰岩、軽石片、砂岩、頁岩である。また、偏光顕微鏡による観察では、全体的に変質を被っているものの、鏡下で石英や斜長石がみられる。XRD分析においては、石英や斜長石が検出されたほか、粘土鉱物として緑泥石、スメクタイト、沸石類としては斜プチロル沸石、輝沸石が認められた。また、竹野川流域における神社の石造物調査の結果、地理的分布として同川の河口から離れるにつれて青井石製の石造物の割合が減少する傾向にある。さらに、時間的変化としては、江戸後期から昭和初期にかけて、時代の経過とともに石材が青井石から砂岩である来待石や花崗岩へと移行する様相も捉えられ、青井石製石造物が衰退していく過程が明らかとなった。 
今後は、今回のデータに加えて、近世・近代の竹野の産業を支えた要素である石工の人数や運搬船である通称「石船」の数に関するデータを拡充する。さらに、神社境内の石造物が来待石や花崗岩へと変遷していった背景や要因について分析を進める。これらの考察を通じ、最終的には地域限定の資源にとどまざるを得なかった青井石について、多角的な視点から明らかにしていくことが課題である。
なお、本研究を進めるにあたり、貴重な岩石資料を提供していただいた東石材店の東均氏に深く感謝の意を表する。
 
引用文献
坂井秀也,2019,終章 文化財としての近世・近代の石造文化―現状と課題.産業発展ー,戎光祥出版,264-272
竹野町史編纂委員会編,1990,竹野町史 通史編,竹野町,995p.
弘原海 清・松本 隆,1958,兵庫県北部(北但)の中新統について,地質学雑誌,第64巻
第759号,625-637

Comment

To browse or post comments, you must log in.Log in