Presentation Information
[T9-O-5](Invited) Exploring the Long-Term Stability of geological disposal systems through Microbial Genomics
*Yuki Amano1 (1. Japan Atomic Energy Agency)
【ハイライト講演】地下には,私たちの知らない微生物の世界が広がっています.天野氏は,日本の地下研究施設で微生物の「設計図」であるゲノムを調べ,地下で微生物がどのように働いているのかを研究しています.岩石によって微生物の種類は異なりますが,共通する働きもあります.こうした研究は,地下環境が長い間どのように保たれてきたのかを知り,放射性廃棄物の地層処分など,地下空間を利用するためにも役立ちます. ※ハイライト講演とは...
Keywords:
Geological disposal,Microorganisms,Deep subsurface,Metagenome
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、ガラス固化体、金属製処分容器、ベントナイト緩衝材からなる人工バリアと、周辺母岩からなる天然バリアによる多重バリアシステムにより、放射性物質の移行を抑制し、数万年以上にわたり人間とその生活環境を放射性物質から隔離することを基本概念としている。そのためには地下空間の安定性が重要であり、地質環境が長期にわたり安定であることを科学的・技術的根拠に基づいて示すことが重要である。
一方、地下深部は酸素に乏しい暗黒環境にもかかわらず豊富な微生物が生息しており、地球上の微生物バイオマスの大部分は地下生命圏に存在すると推定されている1)。これらの微生物は、処分場閉鎖後の酸化還元状態の回復、地球化学環境の形成に関与するだけでなく、処分容器の腐食や放射性核種との相互作用を通じて、地層処分システムの安全機能に影響を及ぼす可能性がある。そのため、地下微生物の代謝機能を理解し、その影響を適切に評価することが重要である。
日本原子力研究開発機構では、日本に広く分布する花崗岩や堆積岩を対象に地下研究施設を建設し、地層科学研究や地層処分技術の研究開発を実施してきた。これらの地下研究施設や地下試料採取・モニタリング技術を活用し、地下微生物の代謝機能解明と地層処分システムへの影響評価に関わる研究を進めている。近年では、環境中のDNAを直接解析するメタゲノム解析の発展により、培養が困難な微生物を含めた群集構造や代謝機能、生態系における役割を推定できるようになり、大部分が未知微生物で構成されている地下微生物生態系の理解が大きく進展した。
これまでの研究から、花崗岩と堆積岩では微生物群集の構成は大きく異なるものの、いずれの岩盤でも水素、二酸化炭素、硫黄、鉄、窒素、メタンなどを利用した代謝反応によって生命活動が維持されていることが明らかになっている2, 3)。特に幌延の堆積岩では、硫黄代謝、鉄代謝、メタン代謝および炭酸固定が活発であることが示されている。これらのうち、硫黄代謝や鉄代謝は、硫化水素生成や鉄還元反応を介して処分容器の腐食に影響を及ぼす可能性があり、安全評価上重要な代謝反応である。幌延の堆積岩中では、地下水中の硫酸イオンおよび硫化物濃度が極めて低いにもかかわらず、硫化水素生成などの硫黄循環に関与する微生物が高い割合で存在することが明らかになっている。この理由として、複数の微生物の共生により生成・消費が速やかに進む「隠れた物質循環」が形成されている可能性がある。このような微生物の代謝反応や循環システムは、水質組成などの地球化学特性から推測することは困難である。
鉄代謝についても、従来報告されている鉄還元菌に加え、嫌気的メタン酸化と鉄還元を共役させる古細菌や、水素を電子供与体としてFe(III)を還元する未知系統の微生物が検出されており、多様な微生物の鉄循環への関与が明らかになった。これらの微生物は金属腐食を促進する可能性がある一方、放射性核種を還元・固定化して移行を遅延させる可能性もあり、地層処分の長期安全性への影響を多面的に評価する必要がある。
さらに、幌延の低透水性堆積岩では、深度の異なる地点から採取した微生物の約3割がほぼ同一のゲノムを保持することが示されている。通常、ゲノムには生物の増殖過程で変異が蓄積するため、この高い保存性は微生物が極めて低い代謝活性状態のまま長期間地下環境に存在したことを示唆する。この要因として、最終氷期もしくはそれ以前の氷期に、海水準低下に伴って地表水が地下深部まで侵入しやすくなり、現在よりも地下水が流れやすい環境であったことが考えられる。この時期に地表から地下に侵入、あるいは地中を移動して、微生物が地下深くまで分散した後、最終氷期終了以降の地形の変化などで地下水の流れが緩慢になり、地下深部に長期間閉じ込められたと推察される。このようなゲノムの保存性は、地下環境が長期間にわたり地球化学的に安定していることを示すものであり、微生物のゲノム情報は、地下環境の長期的安定性を評価する有効な指標となり得る。
このような地下微生物の代謝機能やゲノム情報は、地下深部の物質循環や地球化学環境の長期的な変遷を理解するための有力な情報となる。これらの知見は、地層処分システムにおける核種移行モデルの妥当性を検証するナチュラルアナログとして活用することができ、長期安全評価の信頼性向上に貢献することが期待される。
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和5~8年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)【地層処分安全評価確証技術開発(核種移行総合評価技術開発)】」の成果の一部である。
参考文献
1) Bar-On et al., (2018) Proc. Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 115, 6506-6511
2) Hernsdorf et al., (2017) The ISME J. 11, 1915-1929
3) Amano et al., (2024) Environmental Microbiome, 19, 105
Comment
To browse or post comments, you must log in.Log in
