Presentation Information
[G-P-4]Characteristics of coastal mud belts near the Hoyo Islands, northern part of Iyo-nada sea, Seto Inland sea, western Japan
*Takashi OGAMI1, Tomoyuki SATO1, Yukari MIYASHITA1, Satoshi GOTO2, Takashi HOSOYA2, Masayoshi SATO3, Moeko TAKAHATA3 (1. AIST/GSJ, 2. Chuo Kaihatsu Corp., 3. Sogo Geophysical Exploration Co., Ltd)
Keywords:
Coastal mud belt,High-resolution seismic reflection survey,Offshore drilling survey,Holocene,Offshore active fault survey,Hoyo Islands Fault Zone
瀬戸内海伊予灘北部を対象とした海底活断層調査の一環で取得された高分解能な音波探査記録(例えば、大上ほか,2025)によれば、防予諸島周辺海域には後氷期以降に形成されたと考えられる堆積体が断片的に分布している。これらの堆積体の詳細な分布は必ずしも明らかではないものの、河口等の砕屑物の供給源からは隔離して分布しているとみられる。こうした堆積体は大陸棚上の浅海域に分布することが報告されており、mud belt, coastal mud belt, mud wedge等と呼ばれている(例えば、Plint, 2010; Shan et al., 2023)。本稿ではShan et al. (2023)に倣い、これらの堆積体をcoastal mud belt (CMB)と呼ぶ。CMBは浅海域における細粒砕屑物の堆積中心であり、その特徴を理解することは、現成の沿岸海域の堆積環境を把握したり、沖積層に代表される沿岸海域の地層から過去の堆積環境を復元したりする上で重要であると考えられる。しかしながら、CMBの特徴・形成過程等を具体的に記載・検討した調査研究は限られており、さらなる研究事例の蓄積が求められる状況にある。
前述のように、瀬戸内海伊予灘北部の防予諸島周辺海域(水深30〜50m)には、CMBと考えられる堆積体が分布している。我々は、海底活断層調査の一環として高分解能反射法音波探査を実施し、CMBを横断する高品質なマイグレーション断面を取得した(大上ほか,2025)。また、海底活断層の活動履歴を検討する目的で海上ボーリング調査を実施し、CMBを貫く柱状地質試料を取得した(Ogami et al., 2026)。ここでは、これらの海底活断層調査(高分解能反射法音波探査および海上ボーリング調査)の結果にもとづき、防予諸島周辺海域に分布するCMBの特徴を報告する。
防予諸島周辺海域において実施した高分解能反射法音波探査(大上ほか,2025)によれば、屋代島(山口県周防大島町)、平郡島(山口県柳井市)、室津半島および長島(山口県上関町)に囲まれた海域には、水深50〜60mの平坦面(平坦面上には谷状地形が発達)を覆うように、上に凸状の断面形を呈するCMBが分布している(図)。CMBは地形的な高まりを形成しており、その起伏の大きさは海域によって変化するものの、概ね10〜20mの比高を有している。CMBの内部反射面は比較的明瞭な成層構造を呈し、下位の平坦面をゆるやかにダウンラップしながら上方に累重していることが確認できる。このことは、CMBが上方および側方に成長しながら形成されたことを示している。海上ボーリング調査については、長島(山口県上関町)の沖合に分布するCMB(比高10 m程度、海底活断層によって変位を受ける)を対象として実施し、水深44.3mの地点(CMBの頂部)において掘削長18 mの柱状地質試料を取得した(Ogami et al., 2026)。この地点においては、CMBを構成する堆積物(層厚:7.80 m)はシルト〜砂質シルトを主体とし、全体に貝化石を含み、サンドパイプ等の生痕化石の発達が認められる。CMBに含まれる貝化石および植物化石(コア深度0.92〜6.30 mまでの12層準から採取)の放射性炭素年代は1.15〜8.64 cal kBPを示し、逆転した年代値(下位から上位に向けて年代が新しくなるトレンドから外れた年代値)はほとんど認められなかった。また、コア深度3.70〜4.00 mの層準は火山ガラス(K-Ah)を大量に含んでいるが、その上下の層準で得られた放射性炭素年代(火山ガラスの下位:7.34 cal kBP, 上位:6.84 cal kBP)はK-Ahの噴出年代と調和的である。これらのことは、CMBが後氷期の海水準上昇期に形成されはじめ、現在に至る高海面期においても成長を続けてきた堆積体であることを示している。すなわち、海水準上昇時に当時の海面付近に形成された沿岸洲等が単に水没した堆積体ではなく、また、高海面期において堆積システムが前進することで形成された堆積体でもない。さらに、CMBから産出した貝化石・植物化石・火山灰には大きな年代の逆転が生じていないことから、大規模な再移動プロセスの影響下で形成された堆積体ではないと推察される。
謝辞:本研究には産総研「防災・減災のための高精度デジタル地質情報の整備事業」の一環で実施した海底活断層調査の成果を使用しました。現地調査にあたって、山口県・海上保安庁をはじめとする関係機関、漁業関係者をはじめとする地元の方々にご協力いただきました。記して感謝いたします。
引用文献:Plint (2010) In Facies Models 4. Shan et al. (2023) Sedimentology. 大上ほか(2025)JpGU 2025. Ogami et al. (2026) JpGU-AGU 2026.
前述のように、瀬戸内海伊予灘北部の防予諸島周辺海域(水深30〜50m)には、CMBと考えられる堆積体が分布している。我々は、海底活断層調査の一環として高分解能反射法音波探査を実施し、CMBを横断する高品質なマイグレーション断面を取得した(大上ほか,2025)。また、海底活断層の活動履歴を検討する目的で海上ボーリング調査を実施し、CMBを貫く柱状地質試料を取得した(Ogami et al., 2026)。ここでは、これらの海底活断層調査(高分解能反射法音波探査および海上ボーリング調査)の結果にもとづき、防予諸島周辺海域に分布するCMBの特徴を報告する。
防予諸島周辺海域において実施した高分解能反射法音波探査(大上ほか,2025)によれば、屋代島(山口県周防大島町)、平郡島(山口県柳井市)、室津半島および長島(山口県上関町)に囲まれた海域には、水深50〜60mの平坦面(平坦面上には谷状地形が発達)を覆うように、上に凸状の断面形を呈するCMBが分布している(図)。CMBは地形的な高まりを形成しており、その起伏の大きさは海域によって変化するものの、概ね10〜20mの比高を有している。CMBの内部反射面は比較的明瞭な成層構造を呈し、下位の平坦面をゆるやかにダウンラップしながら上方に累重していることが確認できる。このことは、CMBが上方および側方に成長しながら形成されたことを示している。海上ボーリング調査については、長島(山口県上関町)の沖合に分布するCMB(比高10 m程度、海底活断層によって変位を受ける)を対象として実施し、水深44.3mの地点(CMBの頂部)において掘削長18 mの柱状地質試料を取得した(Ogami et al., 2026)。この地点においては、CMBを構成する堆積物(層厚:7.80 m)はシルト〜砂質シルトを主体とし、全体に貝化石を含み、サンドパイプ等の生痕化石の発達が認められる。CMBに含まれる貝化石および植物化石(コア深度0.92〜6.30 mまでの12層準から採取)の放射性炭素年代は1.15〜8.64 cal kBPを示し、逆転した年代値(下位から上位に向けて年代が新しくなるトレンドから外れた年代値)はほとんど認められなかった。また、コア深度3.70〜4.00 mの層準は火山ガラス(K-Ah)を大量に含んでいるが、その上下の層準で得られた放射性炭素年代(火山ガラスの下位:7.34 cal kBP, 上位:6.84 cal kBP)はK-Ahの噴出年代と調和的である。これらのことは、CMBが後氷期の海水準上昇期に形成されはじめ、現在に至る高海面期においても成長を続けてきた堆積体であることを示している。すなわち、海水準上昇時に当時の海面付近に形成された沿岸洲等が単に水没した堆積体ではなく、また、高海面期において堆積システムが前進することで形成された堆積体でもない。さらに、CMBから産出した貝化石・植物化石・火山灰には大きな年代の逆転が生じていないことから、大規模な再移動プロセスの影響下で形成された堆積体ではないと推察される。
謝辞:本研究には産総研「防災・減災のための高精度デジタル地質情報の整備事業」の一環で実施した海底活断層調査の成果を使用しました。現地調査にあたって、山口県・海上保安庁をはじめとする関係機関、漁業関係者をはじめとする地元の方々にご協力いただきました。記して感謝いたします。
引用文献:Plint (2010) In Facies Models 4. Shan et al. (2023) Sedimentology. 大上ほか(2025)JpGU 2025. Ogami et al. (2026) JpGU-AGU 2026.
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