Presentation Information
[G-O-1]Spatial distribution and stratigraphic controls on iodine concentrations in the Kazusa Group, Boso Peninsula
*Kosuke TSUTSUI1, Tomoyuki Sekine1 (1. INPEX Corporation)
ヨウ素は、医療用造影剤や電子材料分野に不可欠な資源であり、近年その需要および価格は増加傾向にある。世界的な重要性が増す一方で、ヨウ素は生産地の偏在性が高い資源として知られ、その生産量の大半はチリと日本により占められている。なかでも千葉県は全世界生産量の20%以上を担う一大産地である(金子, 2005; 海宝, 2016)。房総半島に広域に分布する上総層群(鮮新世-更新世)に胚胎する地層水(かん水)は、水溶性天然ガスとともに高濃度のヨウ素を含有し、その濃度は海水の約2,000倍に達する(福田, 1982; 亀井, 2001)。このヨウ素は、天然ガス生産時に地下から随伴するかん水より分離・回収され、年間約8,000トンが生産されている(浅倉, 2020)。
一方で、ヨウ素は天然ガスの副産物として扱われてきた経緯から、同地域におけるヨウ素鉱床成立メカニズムに関する地質学的検討は必ずしも充分とは言い難い。特に、上総層群が高濃度のヨウ素を含有する要因は不明な点が多く、ヨウ素の起源、堆積盆地内での移動プロセスおよび濃集機構については、依然として統一的な見解に至っていない。そこで本研究では、上総層群におけるヨウ素鉱床の理解の第一歩として、ヨウ素イオン濃度の詳細な空間分布と地質学的特性との関連性を評価した。千葉県山武市成東地域において、生産中の25坑および廃坑した39坑の生産区間におけるヨウ素イオン濃度データを整理し、その空間的・時間的変化を解析した。さらにその結果を、各坑井で取得された電気検層データから解釈した上総層群の各層準の分布および地質構造と対比した。加えて、層準内の細かな濃度変化を評価するため、新掘井において追加データの取得を行った。掘削過程においてかん水が泥水中に取り込まれる点に着目し、掘削泥水を深度50 m間隔で採取し、イオンクロマトグラフによりヨウ素イオンおよび塩素イオン濃度を測定した。塩素イオン濃度からかん水の混合割合を推定し、かん水本来のヨウ素イオン濃度を求めた。
その結果、ヨウ素濃度は深度に応じた単調変化ではなく、特定の層準において顕著な高濃度帯を形成することが明らかとなった。この高濃度層準は成東地域内に限らず、周辺地域においても概ね同一層位に認められ(亀井, 2001; 三田ほか, 2006)、地域差や埋没深度に依存しない特徴を示す。これらの結果は、ヨウ素の分布が層準依存的であることを示しており、堆積相や堆積過程がヨウ素の起源あるいは濃集プロセスに関与している可能性を示唆する。また、特定層準に濃集傾向が認められることから、ヨウ素を鉛直方向に均質化するような流体移動の影響は限定的であると考えられる。今後は、かん水の放射年代測定を通じて流体の起源や移動履歴を検証し、ヨウ素鉱床成立メカニズムのさらなる解明を図る予定である。
本研究は、房総半島上総層群におけるヨウ素資源の詳細分布およびその規制要因の理解を進め、鉱床成立メカニズム解明の基盤を提供するものである。また、同地域における資源開発の効率化に資するのみならず、類似堆積盆地における探鉱指針にも貢献する。さらに、堆積盆地における物質循環および流体挙動の解明に対して重要な制約条件を与える点で、房総半島の発達史を理解する上でも重要な意義を有する。
・浅倉聡, 2020, 日本の地下に眠る天然資源ヨウ素. 日本海水学会誌, 74(1), 20-26.
・福田理・永田松三, 1982, 日本の水溶型ヨウ素鉱床. 石油技術協会誌, 47(3), 168-185.
・海宝龍夫, 2016, 日本が資源大国? それはヨウ素. 化学と教育, 64(5), 234-237.
・亀井玄人, 2001, 茂原ガス田の地下水に含まれるヨウ素の起源と挙動. 資源地質, 51(2), 145-151.
・金子信行, 2005, 千葉県の天然ガス・ヨウ素資源. 地質ニュース/産業技術総合研究所地質調査総合センター 編, (605), 33-35.
・三田勲, 樋口康則, 樋口朋之, 2006, ヨウ素を含有するかん水の濃集機構. 日本海水学会誌, 60(2), 91-97.
一方で、ヨウ素は天然ガスの副産物として扱われてきた経緯から、同地域におけるヨウ素鉱床成立メカニズムに関する地質学的検討は必ずしも充分とは言い難い。特に、上総層群が高濃度のヨウ素を含有する要因は不明な点が多く、ヨウ素の起源、堆積盆地内での移動プロセスおよび濃集機構については、依然として統一的な見解に至っていない。そこで本研究では、上総層群におけるヨウ素鉱床の理解の第一歩として、ヨウ素イオン濃度の詳細な空間分布と地質学的特性との関連性を評価した。千葉県山武市成東地域において、生産中の25坑および廃坑した39坑の生産区間におけるヨウ素イオン濃度データを整理し、その空間的・時間的変化を解析した。さらにその結果を、各坑井で取得された電気検層データから解釈した上総層群の各層準の分布および地質構造と対比した。加えて、層準内の細かな濃度変化を評価するため、新掘井において追加データの取得を行った。掘削過程においてかん水が泥水中に取り込まれる点に着目し、掘削泥水を深度50 m間隔で採取し、イオンクロマトグラフによりヨウ素イオンおよび塩素イオン濃度を測定した。塩素イオン濃度からかん水の混合割合を推定し、かん水本来のヨウ素イオン濃度を求めた。
その結果、ヨウ素濃度は深度に応じた単調変化ではなく、特定の層準において顕著な高濃度帯を形成することが明らかとなった。この高濃度層準は成東地域内に限らず、周辺地域においても概ね同一層位に認められ(亀井, 2001; 三田ほか, 2006)、地域差や埋没深度に依存しない特徴を示す。これらの結果は、ヨウ素の分布が層準依存的であることを示しており、堆積相や堆積過程がヨウ素の起源あるいは濃集プロセスに関与している可能性を示唆する。また、特定層準に濃集傾向が認められることから、ヨウ素を鉛直方向に均質化するような流体移動の影響は限定的であると考えられる。今後は、かん水の放射年代測定を通じて流体の起源や移動履歴を検証し、ヨウ素鉱床成立メカニズムのさらなる解明を図る予定である。
本研究は、房総半島上総層群におけるヨウ素資源の詳細分布およびその規制要因の理解を進め、鉱床成立メカニズム解明の基盤を提供するものである。また、同地域における資源開発の効率化に資するのみならず、類似堆積盆地における探鉱指針にも貢献する。さらに、堆積盆地における物質循環および流体挙動の解明に対して重要な制約条件を与える点で、房総半島の発達史を理解する上でも重要な意義を有する。
・浅倉聡, 2020, 日本の地下に眠る天然資源ヨウ素. 日本海水学会誌, 74(1), 20-26.
・福田理・永田松三, 1982, 日本の水溶型ヨウ素鉱床. 石油技術協会誌, 47(3), 168-185.
・海宝龍夫, 2016, 日本が資源大国? それはヨウ素. 化学と教育, 64(5), 234-237.
・亀井玄人, 2001, 茂原ガス田の地下水に含まれるヨウ素の起源と挙動. 資源地質, 51(2), 145-151.
・金子信行, 2005, 千葉県の天然ガス・ヨウ素資源. 地質ニュース/産業技術総合研究所地質調査総合センター 編, (605), 33-35.
・三田勲, 樋口康則, 樋口朋之, 2006, ヨウ素を含有するかん水の濃集機構. 日本海水学会誌, 60(2), 91-97.
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