Presentation Information
[T11-O-5]Changes in flow direction due to changes in groundwater level in the paddy soil layer in Doyatsu small valley in Shimousa upland, Boso Peninsula, Southern Kanto Area, Central Japan: From Hydro-geological survey on Feb. 2021 – Jun 2026
*Osamu Kazaoka1,6, Koichi Saito2, Naoto Ito3, Takahiro Kojima4,6, Shoichi Shiozaki5 (1. Chiba Prefectural Environment Foundation, 2. NPO Balance 21, 3. Groundwater pollution control room of Water Quality Conservation Division, Environmental Living Department, Chiba Prefecture Government, 4. Research Institute of Energy, Environment and Geology, HRO, 5. Disaster information room of Disaster Prevention Division, Disaster Prevention Equipment Management Department, Chiba Prefecture government, 6. Former Research Institute of Environmental Geology, Chiba)
Keywords:
change of groundwater flow,paddy field soil layer,Shimousa upland,perched groundwater,spring
はじめに:
南関東地域の房総半島北部下総台地には氷期に刻まれた谷津が多数存在し,古くから水田耕作が行われている.その一つである千葉市若葉区谷当町の堂谷津周辺では,湧水量が多く江戸時代以前から水田耕作が行われてきたが,1990年代中頃からは休耕田部分が増えていった.2012年からはNPOバランス21により,その一部で水田耕作が再生され,谷津奥からの湧水を利用した無農薬・冬期湛水不耕起による栽培が行われている(NPOバランス21,2023).しかし,2019年には降水量が少なく湧水量が減少し用水不足となったため,谷津上流部の休耕田となっていた部分において,旧水田土壌層の水がめとしての機能の可能性に着目し,土水路を設置しこの旧水田土壌層に湧水を涵養させることにし,この土壌層内の地下水の賦存状況に関する調査を実施することとした(斎藤ほか,2020).このため,筆者らは水文地質構造の調査を行い,土水路を設置した周辺において旧水田土壌層中にスクリーンを持つ深度約1mの観測井(G-1, G-1.5, G-2, G-3, G-4, M-0a, M-1, M-2, M-3, S)と沖積層内の深度約3mに挟まれる砂層にスクリーンを持つ深度約3.8mの井戸(M-0b)を設置し観測を行っている.
調査地の水文地質構造の概要:
堂谷津とその周辺に分布する地層は,風岡ほか(2023)・小島ほか(2020)・斎藤ほか(2019)によれば,下位より台地を構成する後期更新統の木下層上部砂層(層厚7m以上,貝殻混じりの中粒砂層主体の透水層.),木下層上部泥層(層厚2.5~3.0m,暗灰色の粘土質シルト層主体の難透水層.生痕化石が見られ風化面はpH5程度の酸性である),常総層(層厚約5.0m,斜交総理が見られやや緩い細粒砂混じりの中粒砂層主体の透水層),関東ローム層(層厚約5.0m,赤褐色の風化した火山灰層で,根の痕と思われる直径0.5mm程度の孔が無数に見られる透水層.)から構成される.さらに,これら地層を大きく削り込んだ谷津田の中に,沖積層(最大層厚7.4m,厚さ数十cmの砂層を挟む泥炭層と泥炭質泥層との互層主体の難透水層)とこの上位の水田土壌層(層厚約1.0mの砂を含み有機質な泥層で,直径0.5mm程度の根の痕と思われる細長い孔が多数見られるアクイタード層)が分布する.
水田土壌層の地下水の流動状況:
2021年2月から2023年4月までの観測の結果,降雨が多く地下水位が高い時には地下水の流動方向は概ね南東への流れとなっており,降雨が少なく地下水位が低下しているときにはその流向は概ね北東への流れとなっていること.特に,地下水の水位と流動方向との関係はM-2観測井において比較的明瞭となっており,地下水位の標高が19.70m以上では概ね南東へ,地下水位の標高が19.60m以下では概ね北東への流れとなっていることが明らかとなった(風岡ほか,2023).しかし,これらの地下水の流動方向の変化は2回確認されているが,その再現性は不明であるため,観測を続けることとした.
2023年4月以降は2026年6月までに,降雨が多い時期と少ない時期が5回繰り返しており,いずれも同様な結果となり,再現性がある現象であることが確認された.また,少雨傾向となり地下水位が標高19.70mから徐々に19.60mへと低下する場合は,流動方向は南東→東南東→東→東北東→北東と徐々に変化していく傾向が見られた.しかし,少雨傾向が続いている最中に一時的に水位が上昇する場合は,同じ水位でも南東向きの成分が強く表れるものの,すぐに北東向きの流動方向に戻ることも明らかとなってきた.
まとめと今後の方向性:
下総台地に刻まれた谷津の中の沖積層上の水田土壌層の地下水の流動方向を調べた結果,地下水位の変化とともに地下水の流動方向が約90度も変化する現象が見られた.この現象は降雨傾向が変わり地下水位が上下する中,複数回同様に見られる再現性の高い現象であることが確認された.今後は,その原因を明らかにするため,周囲の台地部の本水地下水も含めた調査を進めていく.
引用文献:
風岡 修・伊藤直人・小島隆宏・潮﨑翔一,2023,社会地質学会誌,19巻,10-20.
小島隆宏・風岡 修・伊藤直人・斎藤幸一,2020,第30回環境地質学シンポジウム論文集,社会地質学会,9-12.
NPO法人バランス21,2023,動植物の保護・保全.谷当里山計画の10年編集委員会「未来はここから 堂谷津の里 谷当里山計画の10年」,NPO法人バランス21,32-36.
斉藤幸一・NPOバランス21・風岡 修,2019,29回環境地質学シンポジウム論文集,社会地質学会,63-66.
南関東地域の房総半島北部下総台地には氷期に刻まれた谷津が多数存在し,古くから水田耕作が行われている.その一つである千葉市若葉区谷当町の堂谷津周辺では,湧水量が多く江戸時代以前から水田耕作が行われてきたが,1990年代中頃からは休耕田部分が増えていった.2012年からはNPOバランス21により,その一部で水田耕作が再生され,谷津奥からの湧水を利用した無農薬・冬期湛水不耕起による栽培が行われている(NPOバランス21,2023).しかし,2019年には降水量が少なく湧水量が減少し用水不足となったため,谷津上流部の休耕田となっていた部分において,旧水田土壌層の水がめとしての機能の可能性に着目し,土水路を設置しこの旧水田土壌層に湧水を涵養させることにし,この土壌層内の地下水の賦存状況に関する調査を実施することとした(斎藤ほか,2020).このため,筆者らは水文地質構造の調査を行い,土水路を設置した周辺において旧水田土壌層中にスクリーンを持つ深度約1mの観測井(G-1, G-1.5, G-2, G-3, G-4, M-0a, M-1, M-2, M-3, S)と沖積層内の深度約3mに挟まれる砂層にスクリーンを持つ深度約3.8mの井戸(M-0b)を設置し観測を行っている.
調査地の水文地質構造の概要:
堂谷津とその周辺に分布する地層は,風岡ほか(2023)・小島ほか(2020)・斎藤ほか(2019)によれば,下位より台地を構成する後期更新統の木下層上部砂層(層厚7m以上,貝殻混じりの中粒砂層主体の透水層.),木下層上部泥層(層厚2.5~3.0m,暗灰色の粘土質シルト層主体の難透水層.生痕化石が見られ風化面はpH5程度の酸性である),常総層(層厚約5.0m,斜交総理が見られやや緩い細粒砂混じりの中粒砂層主体の透水層),関東ローム層(層厚約5.0m,赤褐色の風化した火山灰層で,根の痕と思われる直径0.5mm程度の孔が無数に見られる透水層.)から構成される.さらに,これら地層を大きく削り込んだ谷津田の中に,沖積層(最大層厚7.4m,厚さ数十cmの砂層を挟む泥炭層と泥炭質泥層との互層主体の難透水層)とこの上位の水田土壌層(層厚約1.0mの砂を含み有機質な泥層で,直径0.5mm程度の根の痕と思われる細長い孔が多数見られるアクイタード層)が分布する.
水田土壌層の地下水の流動状況:
2021年2月から2023年4月までの観測の結果,降雨が多く地下水位が高い時には地下水の流動方向は概ね南東への流れとなっており,降雨が少なく地下水位が低下しているときにはその流向は概ね北東への流れとなっていること.特に,地下水の水位と流動方向との関係はM-2観測井において比較的明瞭となっており,地下水位の標高が19.70m以上では概ね南東へ,地下水位の標高が19.60m以下では概ね北東への流れとなっていることが明らかとなった(風岡ほか,2023).しかし,これらの地下水の流動方向の変化は2回確認されているが,その再現性は不明であるため,観測を続けることとした.
2023年4月以降は2026年6月までに,降雨が多い時期と少ない時期が5回繰り返しており,いずれも同様な結果となり,再現性がある現象であることが確認された.また,少雨傾向となり地下水位が標高19.70mから徐々に19.60mへと低下する場合は,流動方向は南東→東南東→東→東北東→北東と徐々に変化していく傾向が見られた.しかし,少雨傾向が続いている最中に一時的に水位が上昇する場合は,同じ水位でも南東向きの成分が強く表れるものの,すぐに北東向きの流動方向に戻ることも明らかとなってきた.
まとめと今後の方向性:
下総台地に刻まれた谷津の中の沖積層上の水田土壌層の地下水の流動方向を調べた結果,地下水位の変化とともに地下水の流動方向が約90度も変化する現象が見られた.この現象は降雨傾向が変わり地下水位が上下する中,複数回同様に見られる再現性の高い現象であることが確認された.今後は,その原因を明らかにするため,周囲の台地部の本水地下水も含めた調査を進めていく.
引用文献:
風岡 修・伊藤直人・小島隆宏・潮﨑翔一,2023,社会地質学会誌,19巻,10-20.
小島隆宏・風岡 修・伊藤直人・斎藤幸一,2020,第30回環境地質学シンポジウム論文集,社会地質学会,9-12.
NPO法人バランス21,2023,動植物の保護・保全.谷当里山計画の10年編集委員会「未来はここから 堂谷津の里 谷当里山計画の10年」,NPO法人バランス21,32-36.
斉藤幸一・NPOバランス21・風岡 修,2019,29回環境地質学シンポジウム論文集,社会地質学会,63-66.
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