Presentation Information
[G-O-8]Geological Features of Slope Disasters around Housaka Tunnel on National Route 249, Northern Coast of the Noto Peninsula
*Yoichi TABUCHI1, Yoshitarou TANAKA2, Cocoro MIZUNO3, Daisuke DEGUCHI1, Kyouhei NOUMURA1, Hitomi ITAHASHI1 (1. Muraochiken Co., Ltd., 2. Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism Hokuriku Regional Development Bureau Noto Reconstruction Office, 3. Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism Hokuriku Regional Development Bureau Toyama Office of River and National Highway)
Keywords:
Noto Peninsula Earthquake,Slope Disasters,Mountain Collapse,Rhyolite Volcaniclastic Rocks,Tunnel
はじめに 国道249号逢坂トンネルは珠洲市西端の沿岸山地を貫く延長632mの山岳トンネルである.令和6年能登半島地震ではトンネルの数km北方海域にある能登半島北岸断層帯が活動した.地震の影響は甚大であり輪島側坑口で地すべりが発生,珠洲側坑口を含む海岸道路沿いで斜面崩壊が多発し,トンネル全線と海岸道路の約2km区間が通行不能となった.輪島側坑口の復旧は現在も継続中であり,長大トンネルを新設する事業計画検討のための地質調査を行った.
地形地質の概要 トンネル周辺では沿岸と内陸側に2列の山地がある.沿岸山地(標高max200m超)と内陸側山地(標高max400m超)の稜線間距離は約1~1.5km,基盤はいずれも中新世の流紋岩火砕岩(粟蔵層)である.両山地の間は火砕岩起源の岩屑なだれに覆われた起伏の少ない緩斜面であり,沿岸山地南縁を限る西海断層を挟んで下位の高洲山層,東印内層,法住寺層が伏在している.火砕岩は火砕流堆積物が累重した凝灰角礫岩~火山礫凝灰岩~凝灰岩であり1),沿岸山地では下位~上位に向かい,L:火山礫凝灰岩優勢,M:凝灰岩優勢,H:緑色層状凝灰岩に層相変化する.岩石試験の結果,圧縮強度はL層<10,H層10~20 MN/m2,密度はL層<1.9,H層>2.0 Mg/m3であり,一般的堆積軟岩と比べるとL層はやや低く,H層は同程度であった.
斜面災害の特徴 沿岸山地は火砕岩の構造(内陸側=南側に緩傾斜)を反映し明瞭なケスタ地形を呈する.斜面崩壊は海側急斜面(受け盤)で多発したが,南側緩斜面(流れ盤)では山地端部の輪島側坑口斜面を除き明瞭な崩壊は発生しなかった.
海側斜面では急崖の断続的崩壊に加え①尾根状斜面の岩盤崩壊,②岩屑なだれの再滑動,③深層崩壊前面の斜面崩壊がありこれらの崩土が海岸道路に厚く堆積した.①では海側に大きく張り出した尾根状斜面(勾配は低位のL~M層>45°,高位のH層<30°)の急崖部L~M層が大規模崩壊した.②では内陸側の古期山体崩壊で沿岸山地を乗り越え海側に厚く堆積していた岩屑なだれの下部が大規模に滑動した.③では深層崩壊を暗示する二重山稜の前方急斜面(緩み岩盤主体)が広範囲に崩壊,加えて最前面の崩積土塊が大規模に滑動した.
輪島側坑口ではH層起源の岩塊主体の崩積土が大規模に(末端部の幅約250m)再滑動した.南側斜面で当該斜面だけが大規模に崩壊した理由としては,広い緩斜面の中で岩屑なだれの上に緩みの大きい厚い崩積土が載る(滑りやすい)唯一の地点であることが想定される.また,山地を横切る渓流両岸の急斜面では顕著な崩壊が無く,P波速度から推定される緩み層厚が山地の両側斜面より小さいことと整合しており,堆積面と大きく斜交する斜面の崩壊危険度は相対的に小さい可能性がある.
古期の山体崩壊 内陸側山地の海側斜面は古期山体崩壊により形成された比高約150mの滑落崖状の急崖であり今回の地震では広く表層崩壊が発生したが大きな被害はなかった.急崖の海側には広範囲に岩屑なだれが分布している.層厚は沿岸山地の稜線部においても10~20mを示しており,山体崩壊が巨大であったこと,岩屑なだれが沿岸山地を乗り越えたことがわかる.海岸に到達した岩屑なだれの大半は消失し,現在は海岸道路の被災②の範囲にまとまった形で残っている.
岩屑なだれは二次的に流動したものが多い.輪島側坑口南側で実施した調査ボーリングでは上位より,地すべり土塊,二次流動した軟弱な岩屑なだれ(N値10程度),半固結状の岩屑なだれ(N値10~>50)が確認された.岩屑なだれ中位に含まれていた炭化木片の14C年代は6505-6396calBP(2σ89.3%)である.地震調査委員会による能登半島北岸断層帯の平均活動間隔は2千年2)であり,木片の14C年代は2~3回前の大規模な地震により山体崩壊が発生したことを示している可能性がある.
まとめ 逢坂トンネル周辺で発生した斜面災害は,流紋岩火砕岩単一の分布にも関わらず多様な特徴を持っていることがわかった.災害の発生機構は,地表で確認できる地形地質的特性に加え地下の岩盤物性や過去の災害履歴を強く反映したものであり,ボーリング等で得られる地下の情報は,災害復旧だけではなく災害予防においても有効であると考えられる.また,能登半島地震のように海域の活断層を震源とする地震の発生年代については,地表地震断層のように直接的調査を行うことが困難であり,過去の斜面災害等の年代データが間接的ながら重要な参考値になると思われる.
逢坂トンネル周辺については,軟弱な岩屑なだれの分布など当該エリアの斜面災害の発生履歴を踏まえた地質調査結果をもとに検討が進められ,一日も早い本復旧完成に向けて工事が行われている.
【引用文献】1)吉川ほか(2002)5万分の1地質図幅「珠洲岬,能登飯田及び宝立山」,産総研.
2)地震調査委員会(2025)日本海中南部の海域活断層の長期評価(第一版),地震調査研究推進本部.
地形地質の概要 トンネル周辺では沿岸と内陸側に2列の山地がある.沿岸山地(標高max200m超)と内陸側山地(標高max400m超)の稜線間距離は約1~1.5km,基盤はいずれも中新世の流紋岩火砕岩(粟蔵層)である.両山地の間は火砕岩起源の岩屑なだれに覆われた起伏の少ない緩斜面であり,沿岸山地南縁を限る西海断層を挟んで下位の高洲山層,東印内層,法住寺層が伏在している.火砕岩は火砕流堆積物が累重した凝灰角礫岩~火山礫凝灰岩~凝灰岩であり1),沿岸山地では下位~上位に向かい,L:火山礫凝灰岩優勢,M:凝灰岩優勢,H:緑色層状凝灰岩に層相変化する.岩石試験の結果,圧縮強度はL層<10,H層10~20 MN/m2,密度はL層<1.9,H層>2.0 Mg/m3であり,一般的堆積軟岩と比べるとL層はやや低く,H層は同程度であった.
斜面災害の特徴 沿岸山地は火砕岩の構造(内陸側=南側に緩傾斜)を反映し明瞭なケスタ地形を呈する.斜面崩壊は海側急斜面(受け盤)で多発したが,南側緩斜面(流れ盤)では山地端部の輪島側坑口斜面を除き明瞭な崩壊は発生しなかった.
海側斜面では急崖の断続的崩壊に加え①尾根状斜面の岩盤崩壊,②岩屑なだれの再滑動,③深層崩壊前面の斜面崩壊がありこれらの崩土が海岸道路に厚く堆積した.①では海側に大きく張り出した尾根状斜面(勾配は低位のL~M層>45°,高位のH層<30°)の急崖部L~M層が大規模崩壊した.②では内陸側の古期山体崩壊で沿岸山地を乗り越え海側に厚く堆積していた岩屑なだれの下部が大規模に滑動した.③では深層崩壊を暗示する二重山稜の前方急斜面(緩み岩盤主体)が広範囲に崩壊,加えて最前面の崩積土塊が大規模に滑動した.
輪島側坑口ではH層起源の岩塊主体の崩積土が大規模に(末端部の幅約250m)再滑動した.南側斜面で当該斜面だけが大規模に崩壊した理由としては,広い緩斜面の中で岩屑なだれの上に緩みの大きい厚い崩積土が載る(滑りやすい)唯一の地点であることが想定される.また,山地を横切る渓流両岸の急斜面では顕著な崩壊が無く,P波速度から推定される緩み層厚が山地の両側斜面より小さいことと整合しており,堆積面と大きく斜交する斜面の崩壊危険度は相対的に小さい可能性がある.
古期の山体崩壊 内陸側山地の海側斜面は古期山体崩壊により形成された比高約150mの滑落崖状の急崖であり今回の地震では広く表層崩壊が発生したが大きな被害はなかった.急崖の海側には広範囲に岩屑なだれが分布している.層厚は沿岸山地の稜線部においても10~20mを示しており,山体崩壊が巨大であったこと,岩屑なだれが沿岸山地を乗り越えたことがわかる.海岸に到達した岩屑なだれの大半は消失し,現在は海岸道路の被災②の範囲にまとまった形で残っている.
岩屑なだれは二次的に流動したものが多い.輪島側坑口南側で実施した調査ボーリングでは上位より,地すべり土塊,二次流動した軟弱な岩屑なだれ(N値10程度),半固結状の岩屑なだれ(N値10~>50)が確認された.岩屑なだれ中位に含まれていた炭化木片の14C年代は6505-6396calBP(2σ89.3%)である.地震調査委員会による能登半島北岸断層帯の平均活動間隔は2千年2)であり,木片の14C年代は2~3回前の大規模な地震により山体崩壊が発生したことを示している可能性がある.
まとめ 逢坂トンネル周辺で発生した斜面災害は,流紋岩火砕岩単一の分布にも関わらず多様な特徴を持っていることがわかった.災害の発生機構は,地表で確認できる地形地質的特性に加え地下の岩盤物性や過去の災害履歴を強く反映したものであり,ボーリング等で得られる地下の情報は,災害復旧だけではなく災害予防においても有効であると考えられる.また,能登半島地震のように海域の活断層を震源とする地震の発生年代については,地表地震断層のように直接的調査を行うことが困難であり,過去の斜面災害等の年代データが間接的ながら重要な参考値になると思われる.
逢坂トンネル周辺については,軟弱な岩屑なだれの分布など当該エリアの斜面災害の発生履歴を踏まえた地質調査結果をもとに検討が進められ,一日も早い本復旧完成に向けて工事が行われている.
【引用文献】1)吉川ほか(2002)5万分の1地質図幅「珠洲岬,能登飯田及び宝立山」,産総研.
2)地震調査委員会(2025)日本海中南部の海域活断層の長期評価(第一版),地震調査研究推進本部.
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