Presentation Information
[T6-O-10]Origin of fluids around the 2011 Tohoku-Oki Earthquake fault : Carbon isotopes of methane and dissolved inorganic carbon
*Shoma SHIMIZU1, Akira IJIRI1, Tsuyoshi ISHIKAWA2 (1. Graduate School of Maritime Sciences, KOBE UNIVERSITY, 2. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)
Keywords:
2011 Tohoku-Oki Earthquake,Anaerobic Oxidation of Methane,Fluid Migration
2011年、東北地方太平洋沖地震が三陸沖で発生した。2024年には、地震から13年後の断層固着回復過程の解明などを目的として、地球深部探査船「ちきゅう」により日本海溝の2地点で掘削が行われた。サイトC0019は、日本海溝軸の陸側約6 kmに位置する太平洋プレート沈み込み帯の前縁部である。プレート境界断層を貫き、海底下876 m(mbsf)の基盤の玄武岩までコア試料が回収され、約800 mbsfのプレート境界断層と610 mbsfの断層帯が確認された。さらに、海溝の約8 km沖合に位置する沈み込む前の太平洋プレート上のインプットサイトC0026では、玄武岩直上のチャートに達する290 mbsfまでコア試料が回収された。本研究では、メタンと溶存無機炭素(DIC)の炭素同位体(δ13C-CH4、δ13C-DIC)分析から、断層周辺の流体移動の有無と微生物活動との関係を検討する。C0019では、船上で測定された間隙水のSO42−濃度は表層37 mbsfで1 mM以下まで減少し、硫酸還元によりSO42−が消費され枯渇したことを示す。また37 mbsf以深ではメタン濃度が2 mM以上に急増することから、37 mbsf付近が硫酸還元帯からメタン生成帯に移行する硫酸-メタン移行帯(SMTZ)と考えられる。SMTZでは硫酸還元を伴うメタンの嫌気的酸化(AOM)が卓越すると考えられている。一般に、半遠洋性堆積物中のSO42−は海水由来で海底表層から供給され、浅部で微生物により消費される。SMTZより深部ではSO42−は枯渇し、嫌気的環境下でメタン生成が進行する。しかし、C0019では610 mbsf断層上部の502〜550 mbsfとプレート境界断層周辺でSO42−濃度の増加とメタン濃度の低下が見られた。SMTZ以深(44~445 mbsf)ではSO42−濃度が5 mM以下、メタン濃度は0.2〜4 mMと高い。502〜550 mbsfではSO42−濃度が9 mMまで増加し、メタンはほぼ検出されなかった。560 mbsf以深からプレート境界断層にかけてはSO42−濃度が4 mM以下、メタン濃度が最大4 mMと高い。プレート境界断層以深ではSO42−は24 mMと海水の値(28mM)を示し、メタンはほぼ検出されなかった。502~550 mbsfとプレート境界断層以深におけるSO42−の増加とメタンの不検出は、硫酸還元の影響を受けていない海水に近い濃度のSO42−を含む酸化的流体が断層周辺に供給されている可能性を示す。メタン濃度が高い深度のδ13C-CH4は−78〜−60‰と微生物起源の値を示し、微生物によるメタン生成が卓越していると考えられる。同深度でDIC濃度は14 mM以上、δ13C-DICは+3‰以上であり、δ13C-DICとδ13C-CH4はいずれも微生物によるメタン生成帯の特徴を示した。SMTZ直下38 mbsfから123 mbsfでは、δ13C-CH4が−84‰から−70‰に増加した。−84‰と低いδ13C値はAOMの影響が大きいSMTZ付近で生成するメタンのδ13C値の特徴である。また、SO42−濃度が増加しメタン濃度が低下する区間460〜502 mbsf、550〜580 mbsfとプレート境界断層直上(約800 mbsf)でも、δ13C-CH4は−96〜−79‰と低く、SMTZ付近で生成するメタンのδ13C値の特徴を示した。このことから、C0019ではSO42−を含む流体の供給により、3区間でAOMが起こり、SMTZが複数形成されたことが示唆される。プレート境界断層以深に供給される海水に近い濃度のSO42−を含む流体は、太平洋プレート基盤岩直上約120 mの流体である可能性がある。C0026では、海底表層から280 mbsfまでのSO42−濃度は23~29 mMで海水と同程度か数mM低く、海底下では硫酸還元がほぼ進んでいない酸化的環境であることが示唆される。また基盤岩近くの262~278 mbsfではSO42−濃度27~28 mM、DIC濃度2 mM、δ13C-DIC−4~−2‰であり、これらはC0019のプレート境界断層以深の値とほぼ一致した。このことから、C0026の基盤岩近くの硫酸還元の影響をほぼ受けていない流体がプレート境界断層周辺へ供給されたことが示唆される。一方、502~550 mbsfではDIC濃度はプレート境界断層以深より0.1 mM以上高く、δ13C-DICは約10‰低かった。この深度の流体はプレート境界以深の流体よりAOMや硫酸還元の影響を一部受けた可能性がある。以上より、硫酸に富むインプットサイトの太平洋プレート基盤岩直上の流体が、プレート境界断層周辺と502~550 mbsfに供給され、メタンの嫌気的酸化を促進した可能性が示された。
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