Presentation Information
[T4-O-1]Examining the shuffled-cards structure model proposed for the Sanbagawa Belt in the Kanto Mountains, Japan: Comparison between Raman carbonaceous material geothermometry and graphitization degree indicators
*Yui KOUKETSU1, Ichiko SHIMIZU2 (1. Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University, 2. of Earth and Planetary Sciences, Graduate School of Science, Kyoto University)
Keywords:
Sanbagawa Belt,Kanto Mountains,Raman carbonaceous material geothermometry,Graphitization degree
関東山地三波川帯では、橋本ほか(1992)[1]や矢野&田切(1998)[2]によって、X線回折(XRD) 法による炭質物の結晶構造解析に基づいた石墨化度(Graphitization Degree: GD)の空間的変化から、変成度を3つのゾーン(Zone I〜III)に区分するとともに、同じ温度の層が繰り返し出現する「シャッフルカード構造」が提唱された。一方、宮下(1998)[3]による岩石学的な指標(分配係数)との対比や、長瀞地域の露頭におけるUmeda & Enami (2014)[4]によるラマン分光分析との比較では、この構造の存在には疑問が提示され、一貫した支持が得られていない。
本研究では、鮎川–三波川地域を対象として、XRDから得られる炭質物パラメーター(d002, Lc, 及びGD)と、炭質物ラマン温度計を用いて見積もられた変成温度(TCM)を比較し、シャッフルカード構造を再検討した。また、XRDとラマンのパラメーターの関係の検証においては、日高変成帯の断層帯において報告されているNakamura et al. (2015)[5]のデータも参考として用いた。XRDパラメーター(d002とLc)とラマン温度(TCM)の関係を検証したところ、TCMが450–500℃の範囲でXRDパラメーターのトレンドが変化することが確認された。この温度領域は、GD値に基づくZone IIとZone IIIの境界に相当する。また、四国三波川帯におけるGarnet zoneとBiotite zoneの境界温度域と整合的である。
ラマン温度とGD値の比較から、Zone IはTCM < 400℃、Zone IIは400–450℃、Zone IIIは450℃以上に対応することが示された。このうちZone IIの温度幅は400–450℃と狭いが、鮎川–三波川地域ではTCM = 400–500℃の試料が広く分布している。このため、GDに基づくゾーン分けを行うと、境界付近の試料が連続的に出現しやすいと考えられる。また、XRD用粉末試料の準備過程において、粉砕の影響や砕屑粒子の混入の影響が考えられるため、測定誤差の影響で、小規模な「シャッフルカード」状のパターンに見えた可能性が考えられる。
ラマン温度計によるTCMの空間分布を参照すると、橋本ほか(1992)[1]や矢野&田切(1998)[2]が提唱したような大規模なシャッフルカード構造を支持する証拠は得られず、GDの境界温度の狭さと測定上の要因によって生じる見かけの繰り返し構造として解釈する方が合理的であると考えられる。ただし、御荷鉾帯に近い南側領域には、TCM < 400℃を示す低温サンプルが分布しており、この領域には低温ユニットが存在する可能性がある。これは、局所的な構造境界や異なるテクトニックユニットの存在を示唆するものであり、今後の地質構造解析において重要な手がかりとなると考えられる。
引用文献:
[1] 橋本光男、田切美智雄、日下部和宏、増田一稔、矢野徳也 (1992) “関東山地児玉−長瀞町三波川変成域における層状体の構造的累積による地質構造” 地質学雑誌 vol. 98, 953–965.
[2] 矢野徳也、田切美智雄 (1998) “関東山地三波川-鮎川地域,三波川変成帯の地質構造と温度構造” 地質学雑誌 vol. 104, 442–453.
[3] 宮下 敦 (1998) “関東山地三波川変成岩類の「層状体の構造的累積による地質構造」の再検討” 地質学雑誌 vol. 104, 731–746.
[4] Umeda Hayato, and Masaki Enami (2014) “Testing for robustness on estimation of graphitization degree by Raman spectroscopy.” Journal of Mineralogical and Petrological Sciences vol. 109, 279–285.
[5] Nakamura, Yoshihiro, Kiyokazu Oohashi, Tsuyoshi Toyoshima, Madhusoodhan Satish-Kumar, and Junji Akai. (2015) “Strain-induced amorphization of graphite in fault zones of the Hidaka Metamorphic Belt, Hokkaido, Japan.” Journal of Structural Geology vol. 72, 142–161.
本研究では、鮎川–三波川地域を対象として、XRDから得られる炭質物パラメーター(d002, Lc, 及びGD)と、炭質物ラマン温度計を用いて見積もられた変成温度(TCM)を比較し、シャッフルカード構造を再検討した。また、XRDとラマンのパラメーターの関係の検証においては、日高変成帯の断層帯において報告されているNakamura et al. (2015)[5]のデータも参考として用いた。XRDパラメーター(d002とLc)とラマン温度(TCM)の関係を検証したところ、TCMが450–500℃の範囲でXRDパラメーターのトレンドが変化することが確認された。この温度領域は、GD値に基づくZone IIとZone IIIの境界に相当する。また、四国三波川帯におけるGarnet zoneとBiotite zoneの境界温度域と整合的である。
ラマン温度とGD値の比較から、Zone IはTCM < 400℃、Zone IIは400–450℃、Zone IIIは450℃以上に対応することが示された。このうちZone IIの温度幅は400–450℃と狭いが、鮎川–三波川地域ではTCM = 400–500℃の試料が広く分布している。このため、GDに基づくゾーン分けを行うと、境界付近の試料が連続的に出現しやすいと考えられる。また、XRD用粉末試料の準備過程において、粉砕の影響や砕屑粒子の混入の影響が考えられるため、測定誤差の影響で、小規模な「シャッフルカード」状のパターンに見えた可能性が考えられる。
ラマン温度計によるTCMの空間分布を参照すると、橋本ほか(1992)[1]や矢野&田切(1998)[2]が提唱したような大規模なシャッフルカード構造を支持する証拠は得られず、GDの境界温度の狭さと測定上の要因によって生じる見かけの繰り返し構造として解釈する方が合理的であると考えられる。ただし、御荷鉾帯に近い南側領域には、TCM < 400℃を示す低温サンプルが分布しており、この領域には低温ユニットが存在する可能性がある。これは、局所的な構造境界や異なるテクトニックユニットの存在を示唆するものであり、今後の地質構造解析において重要な手がかりとなると考えられる。
引用文献:
[1] 橋本光男、田切美智雄、日下部和宏、増田一稔、矢野徳也 (1992) “関東山地児玉−長瀞町三波川変成域における層状体の構造的累積による地質構造” 地質学雑誌 vol. 98, 953–965.
[2] 矢野徳也、田切美智雄 (1998) “関東山地三波川-鮎川地域,三波川変成帯の地質構造と温度構造” 地質学雑誌 vol. 104, 442–453.
[3] 宮下 敦 (1998) “関東山地三波川変成岩類の「層状体の構造的累積による地質構造」の再検討” 地質学雑誌 vol. 104, 731–746.
[4] Umeda Hayato, and Masaki Enami (2014) “Testing for robustness on estimation of graphitization degree by Raman spectroscopy.” Journal of Mineralogical and Petrological Sciences vol. 109, 279–285.
[5] Nakamura, Yoshihiro, Kiyokazu Oohashi, Tsuyoshi Toyoshima, Madhusoodhan Satish-Kumar, and Junji Akai. (2015) “Strain-induced amorphization of graphite in fault zones of the Hidaka Metamorphic Belt, Hokkaido, Japan.” Journal of Structural Geology vol. 72, 142–161.
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