Presentation Information
[T4-O-6]Metamorphic processes of Jadeite-Quartz Metatonalite in the Kamuikotan Belt, Hokkaido, Japan, inferred from field survey and microstructures -First outcrop report-★2026年度学生優秀発表賞受賞★
*Masaki NAKANO1, Hayato UEDA1 (1. Niigata University)
【ハイライト講演】ヒスイは日本の国石である.ヒスイは宝石として人々を魅了したのみならず,その学術的重要性から変成岩学者も魅了している.本講演では,北海道で採取されたヒスイ輝石ー石英岩から,地球のダイナミックな歴史を解読した結果が報告される. ※ハイライト講演とは...
Keywords:
Jadeite,kamuikotan belt,High pressure metamorphism,Subduction zone,Glaucophane,Hokkaido
ひすい輝石と石英の共生関係が低温高圧条件を特徴づけることは古くから知られているが,曹長石が分解しひすい輝石と石英を生じる変成反応を残す組織はほとんど報告されていない.本研究では,そのような曹長石が直接ひすい輝石と石英に分解したと考えられる組織を,神居古潭帯に産するひすい輝石–石英岩から確認した.また,これらのひすい輝石–石英岩には,しばしば片理を持たない藍閃石岩が直接する.この藍閃石岩は,蛇紋岩とひすい輝石–石英岩間の交代作用にて形成された可能性がある.
ひすい輝石-石英岩の一部は,トーナル岩質の等粒状組織を残す.このひすい輝石-石英変トーナル岩(以下,単に変トーナル岩)は従来転石のみで知られ,おおよその形成条件が推測されているものの,露頭は見つかっていなかった.(Takayama, 1986. JMPS; Osada, 2007.Jour. Metamorph Geol).また,変成反応組織の解析は充分には行われていない.本発表では変トーナル岩の産状,同岩石や随伴する藍閃石岩の形成プロセスの議論,および本調査地域の地質の再検討の経過を報告する.
本研究の野外調査により,変トーナル岩の露頭が初めて確認された.露頭は常盤山北側の納内幌内川右岸側の尾根上にあり,変トーナル岩は泥質片岩に挟在する蛇紋岩中に,幅約50 mにわたって分布する.また,常盤山南側の江丹別第八線川にも最大径4 mに達する転石が30個確認された.同流域にて露頭は未確認であるが,転石の分布から変トーナル岩は上下を泥質片岩に挟まれた蛇紋岩帯から供給されていると推定される.両流域とも変トーナル岩は塊状で片理を持たず,ひすい輝石化した淡緑色の斜長石部と粗粒な石英から構成される等粒状の残存組織が肉眼で確認される.江丹別第八線川に産する30個中20個の転石では,変トーナル岩に藍閃石岩が付着していた.これらの藍閃石岩は塊状で片理をもたず,変トーナル岩を被膜状に覆うほか,しばしば脈状にも産する.
変トーナル岩中の斜長石仮像は,ひすい輝石とローソン石の集合体で構成される.ひすい輝石の結晶は,汚濁した内部とこれを囲む清澄な周縁部から構成される.汚濁部では,端成分に近いひすい輝石の単結晶とおびただしい量の微細な石英包有物がシンプレクタイト状の組織を示す.同様の微細な石英包有物は,共存するローソン石中にもみられる.ひすい輝石周縁の清澄部は石英の包有物を含まず,普通輝石成分やエジル輝石成分を含む不純なひすい輝石から構成される.汚濁部の組織は溶解・沈殿ではなく固相反応として斜長石中の元素がほとんど移動せずその場で曹長石成分→ひすい輝石+石英の反応が起きたことを示す.同時に,灰長石成分+水→ローソン石の反応がおきたことが,ローソン石中にも石英の包有物が含まれる理由だと考えられる. ひすい輝石汚濁部の端成分に近い組成は,斜長石内部の局所全岩組成の下で形成されたと考えられ,拡散が進行しないうちに反応が進行したことを示唆する.一方,それをとりまく清澄部の不純なひすい輝石は,遅れておこった元素拡散によって斜長石仮像の外部から透輝石成分やエジル輝石成分が浸透してきたと同時にシリカが外部へ散逸したこと示唆する.
変トーナル岩の内部や藍閃石岩との接触部では,藍閃石がひすい輝石を侵食して成長した組織が普遍的にみられる.当岩石中にはひすい輝石→藍閃石の変化に必要な苦鉄質成分の給源となる相がないため,系の外(恐らく蛇紋岩)から苦鉄質成分が供給されたと考えられる.同じ理由で,藍閃石岩は変トーナル岩と蛇紋石の接触部において,前者の一部を交代して形成されたと推測される.
一部の変トーナル岩には,ひすい輝石-石英からなる組織や,藍閃石岩との境界をまたいで切る,汚濁したひすい輝石-ローソン石脈が確認される.この脈を構成するひすい輝石やローソン石もまた,石英の微細包有物により汚濁していることから,形成時には斜長石脈だった可能性が高い.この産状は,トーナル岩がひすい輝石-石英岩となり蛇紋岩と接触して藍閃石岩の反応縁が生じた後,斜長石脈が入り,その斜長石がさらにローソン石+ひすい輝石+石英に分解したことを示している.そのため,一度変トーナル岩が減圧して斜長石脈を形成した後,ひすい輝石+石英の安定領域まで再度昇圧したと推測される.
これら結果をまとめると,変トーナル岩の形成プロセスは以下のように推測される.まず,海洋プレートに含まれていたトーナル岩体が沈み込みにより低温高圧型変成作用を受けひすい輝石-石英岩を形成した.その後蛇紋岩に取り込まれ,交代反応による反応縁として藍閃石岩を形成した.また,減圧環境にて斜長石脈が形成された.そして再度深部へ沈み込み,斜長石がひすい輝石とローソン石へ再結晶したと考えられる.以上の考察で推定される昇圧と減圧の繰り返しは,蛇紋岩メランジで構成される沈み込みチャネル内に生じた誘導流による循環運動を記録している可能性がある.
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