Presentation Information
[T16-P-9]Petrology of “Maguro-ishi” from Amakusa, Japan as a Natural Ceramics Formed by Sintering of Mudstone
*Yasutaka HAYASAKA1, Junichi ANDO2, Kaushik DAS2, Takehiro HIROSE3, Kenta KAWAGUCHI2 (1. Amakusa Museum of Goshoura Dinosaur Island, 2. Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University, 3. Kochi Institute for Core Sample Research, JAMSTEC)
Keywords:
Maguro-ishi,pelitic hornfels,sintered rock,natural ceramics,Amakusa
はじめに 熊本県の天草諸島の海岸の所々には「まぐろ石」と呼ばれる暗黒色で硬く、表面が滑らかで光沢のある泥質の円〜亜円礫が転石として存在している。「まぐろ」は真黒の意味で、見かけは三重県熊野市産の那智黒石に類似し、かつては碁石に加工されていた。特に、天草市有明町の赤崎海岸に多産し、ここでは最大長径40 cmに達する。赤崎海岸のまぐろ石は周囲に分布する古第三系教良木層の泥岩がホルンフェルス化して硬くなったものと考えられてきたが、薄片を偏光顕微鏡で観察しても変成鉱物がほとんど形成されていないのはやや不思議に思え、供給源地も不明であったため、その起源について研究を行い、以下の結果を得た。
供給源 まぐろ石がホルンフェルスであるとしたら、熱源として相応しいのは、赤崎海岸から南南東へ4.4 kmの位置にある老嶽(おいたけ)山頂の北西斜面に露出する花こう閃緑岩体であろうと考えて調査を行った。その結果、老嶽から赤崎海岸へ流れ下る2本の川(東迫川、西迫川)の河原に多数のまぐろ石を認め、花こう閃緑岩体から100 m程度離れた位置に露出する泥岩がホルンフェルス化していることがわかった。この貫入岩体の周囲はカルデラのような地形をなして、直径1 km弱のリング状に高くなっている所はホルンフェルス化して硬くなった部分と考えられる。なお、既に文献1が、赤崎海岸のまぐろ石の供給現地を老嶽と予想していたことを事後に知った。
鏡下観察 まぐろ石を偏光顕微鏡で観察しても明らかな変成鉱物は確認されず、非変成の泥岩とほとんど違いがないが、ダイヤモンドペーストを用いて研磨した試料をデジタル顕微鏡の高倍率反射光で観察すると石英などの粒子の焼結作用が生じていることが確認された。花こう閃緑岩体から100 m程離れた位置から採取した泥質ホルンフェルスには焼結作用のほか、黒雲母などの微細な変成鉱物のオーバープリントも認められる。
全岩化学組成 広島大学設置のXRF(リガクzsxーPRIMUS II)を用いて、まぐろ石、老嶽のホルンフェルス、教良木層の非変成泥岩の全岩化学組成を測定した。その結果、これら三者は、元素毎に多少のばらつきはあるものの、SiO2が70%前後の似た組成を示すことがわかった。当初、まぐろ石が硬くなっている理由として珪化作用やコンクリーションの可能性も候補に入れていたが、これらの可能性は否定される。
変成温度の推定 高知コア研究所設置のレーザーラマン分光装置:OXFORD instruments WITec alpha300を用いて、まぐろ石と老嶽の泥質ホルンフェルスの変成温度を見積もった。測定は文献2に従い、文献3の方法で解析を行った結果、まぐろ石の最高到達温度は340℃と見積もられた。泥質ホルンフェルスについては炭質物が少ないためにデータの品質が悪く解析ができなかったが、ラマンスペクトルの形状、および微細な黒雲母が形成されていることから推定すると、これより若干高い温度に達したと思われる。
考察と結論 以上の結果から、赤崎海岸産のまぐろ石は、古第三系教良木層の泥岩が340℃程度の温度で焼結したホルンフェルスの一種(焼結岩)であることがわかった。変成鉱物がほとんど形成されていないのは、変成温度が低かったことと、熱源となった老嶽の花こう閃緑岩が直径700 m程度の小岩体であったために熱容量が小さく、高温の持続時間が短かったために焼結作用だけで終わったからであろう。すなわちまぐろ石は、粘土サイズの粒子が焼結してできた天然のセラミックスである。実際にまぐろ石は、大変硬く堅牢で、短冊状〜棒状に加工したものを叩くと金属音を出して良く響鳴し、研磨によって鏡面に仕上げることができ、割れ口は貝殻状断口を示す等、いずれも工業的に製造されたファインセラミックスと同様の性質を示す。形成条件は限られてはいるが、決して特殊なものではなく、至る所に存在している筈である。今後、まぐろ石をその典型例として、破壊強度、空隙率、弾性波速度等の測定を行い、物性の全体像を明らかにしたい。
引用文献
1)長谷義隆編著『海にうかぶ博物館 天草ジオパーク』、一般社団法人天草ジオパークサポート発行、マニュアルハウス発売
2)Beyssac, et al., 2003, Spectrochimica Acta Part A 59: 2267–2276.
3)Aoya, et al., 2010, Journal of Metamorphic Geology, 28, 895–914.
供給源 まぐろ石がホルンフェルスであるとしたら、熱源として相応しいのは、赤崎海岸から南南東へ4.4 kmの位置にある老嶽(おいたけ)山頂の北西斜面に露出する花こう閃緑岩体であろうと考えて調査を行った。その結果、老嶽から赤崎海岸へ流れ下る2本の川(東迫川、西迫川)の河原に多数のまぐろ石を認め、花こう閃緑岩体から100 m程度離れた位置に露出する泥岩がホルンフェルス化していることがわかった。この貫入岩体の周囲はカルデラのような地形をなして、直径1 km弱のリング状に高くなっている所はホルンフェルス化して硬くなった部分と考えられる。なお、既に文献1が、赤崎海岸のまぐろ石の供給現地を老嶽と予想していたことを事後に知った。
鏡下観察 まぐろ石を偏光顕微鏡で観察しても明らかな変成鉱物は確認されず、非変成の泥岩とほとんど違いがないが、ダイヤモンドペーストを用いて研磨した試料をデジタル顕微鏡の高倍率反射光で観察すると石英などの粒子の焼結作用が生じていることが確認された。花こう閃緑岩体から100 m程離れた位置から採取した泥質ホルンフェルスには焼結作用のほか、黒雲母などの微細な変成鉱物のオーバープリントも認められる。
全岩化学組成 広島大学設置のXRF(リガクzsxーPRIMUS II)を用いて、まぐろ石、老嶽のホルンフェルス、教良木層の非変成泥岩の全岩化学組成を測定した。その結果、これら三者は、元素毎に多少のばらつきはあるものの、SiO2が70%前後の似た組成を示すことがわかった。当初、まぐろ石が硬くなっている理由として珪化作用やコンクリーションの可能性も候補に入れていたが、これらの可能性は否定される。
変成温度の推定 高知コア研究所設置のレーザーラマン分光装置:OXFORD instruments WITec alpha300を用いて、まぐろ石と老嶽の泥質ホルンフェルスの変成温度を見積もった。測定は文献2に従い、文献3の方法で解析を行った結果、まぐろ石の最高到達温度は340℃と見積もられた。泥質ホルンフェルスについては炭質物が少ないためにデータの品質が悪く解析ができなかったが、ラマンスペクトルの形状、および微細な黒雲母が形成されていることから推定すると、これより若干高い温度に達したと思われる。
考察と結論 以上の結果から、赤崎海岸産のまぐろ石は、古第三系教良木層の泥岩が340℃程度の温度で焼結したホルンフェルスの一種(焼結岩)であることがわかった。変成鉱物がほとんど形成されていないのは、変成温度が低かったことと、熱源となった老嶽の花こう閃緑岩が直径700 m程度の小岩体であったために熱容量が小さく、高温の持続時間が短かったために焼結作用だけで終わったからであろう。すなわちまぐろ石は、粘土サイズの粒子が焼結してできた天然のセラミックスである。実際にまぐろ石は、大変硬く堅牢で、短冊状〜棒状に加工したものを叩くと金属音を出して良く響鳴し、研磨によって鏡面に仕上げることができ、割れ口は貝殻状断口を示す等、いずれも工業的に製造されたファインセラミックスと同様の性質を示す。形成条件は限られてはいるが、決して特殊なものではなく、至る所に存在している筈である。今後、まぐろ石をその典型例として、破壊強度、空隙率、弾性波速度等の測定を行い、物性の全体像を明らかにしたい。
引用文献
1)長谷義隆編著『海にうかぶ博物館 天草ジオパーク』、一般社団法人天草ジオパークサポート発行、マニュアルハウス発売
2)Beyssac, et al., 2003, Spectrochimica Acta Part A 59: 2267–2276.
3)Aoya, et al., 2010, Journal of Metamorphic Geology, 28, 895–914.
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