Presentation Information
[T16-P-15]U-Pb ages of conglomerate layers on Kuroshima Island, off the coast of Koza in the southern Kii Peninsula
Seisuke USHIRO1, *Toshiya YAMAMOTO2, Takanori BESSHO3, Tetsuya OGURA4, Yutaka WADA5 (1. Wakayama University, 2. Wakayama Prefectural Tanabe High School, 3. Osaka Museum of Natural History, 4. Osaka City Board of Education, 5. Nara University of Education)
Keywords:
U-Pb ages,Kii Peninsula,Kumano,Kuroshima Island
1.はじめに
九龍島(くろしま)は,和歌山県串本町の古座川河口から沖合約1 kmに位置する周囲約800 mの島で,主に礫岩層からなる.この島に分布する礫岩層を九龍島礫岩層と仮称する.
九龍島礫岩層は,広川・水野(1965)で熊野層群の“敷屋淤泥岩層”に属する地層と推定された."敷屋淤泥岩層"は久富(1981)の敷屋累層に相当すると考えられる.九龍島礫岩層には珪長質火山岩類の巨礫が含まれる.この火山岩礫が熊野層群近隣の潮岬複合火成岩類(三宅, 1981)もしくは熊野酸性岩類(荒牧・羽田,1965)に由来するものであるなら,九龍島礫岩層は熊野層群の堆積時から紀伊半島の中期中新世火成活動に至る過渡期の環境変化を推定する上で,重要な情報を含むことになる.しかし,九龍島礫岩層については化石等の年代を示す情報が知られておらず堆積年代は未詳である.
そこで,我々は許可を得た上で試料採取を行い,九龍島礫岩層に挟在する礫質砂岩層に含まれる砕屑性ジルコン粒子からU-Pb年代を測定した.その結果について報告する.
2.九龍島礫岩層の産状と珪長質火山岩礫
九龍島礫岩層は層厚40 m以上(後,2009)で,走向・傾斜がN50°W,14°Sである.礫岩層を構成する礫は細礫から大礫を主とし,下部には径1 mに達する巨礫が含まれる.基質は極粗粒砂である.露頭観察では基質支持もしくは礫支持の両方が見られる.堆積構造としてトラフ型斜交層理やインブリケーションが発達する層準がある.U-Pb年代の測定に先立ち,九龍島礫岩層に含まれる黒色泥岩の巨礫,黒色泥岩およびチャートの中礫から微化石の検出を試みたが,保存不良の放散虫化石が見いだされたのみで年代決定に至らなかった.
下部に含まれる巨礫の礫種は火山岩や泥岩,砂岩泥岩互層のブロックである.それらのうち火山岩礫は鏡下において流紋岩質火砕岩および流紋岩である.火砕岩にはフィアンメが含まれユータキシティック組織を確認できる一方,流紋岩には微花崗岩質の石基に径2 mmを超える斑晶(石英・黒雲母・カリ長石)が含まれるものと,流理組織の発達したガラス質の黒曜岩からなるものがある.いずれも熊野酸性岩類に見られる岩相と酷似する.
3.礫質砂岩層の砕屑性ジルコンU-Pb年代
U-Pb年代測定のため,九龍島礫岩層に挟在する礫質砂岩層の一枚から試料を採取した.この砂岩層は厚さが最大35 cm,水平方向の長さは約1 mである.U-Pb年代測定については,粒子の抽出から年代測定までを(株)京都フィッション・トラックに依頼した.
測定の結果,分析した60個のジルコンのうち,57粒子がコンコーダントと判定された.これら粒子のうち,2500 Ma台~1800 Ma台を示すものが10粒子,360 Ma台~130 Ma台が8粒子,110 Ma台~60 Ma台が28粒子, 30 Ma台~14 Maが11粒子である.最若粒子は14.4±0.4 Maで,この粒子を含め誤差1σで重複する粒子が3粒子存在し,これらの加重平均14.9±0.6 Maが最若粒子集団年代である.この年代は中新世ランギアンに相当し,熊野層群敷屋累層の堆積年代(浮遊性有孔虫のN8帯上部:中期中新世:池辺ほか, 1975)と誤差の範囲で重なる.
4.考察とまとめ
広川・水野(1965)は九龍島礫岩層が熊野層群敷屋累層に相当すると推定したが,九龍島礫岩層は熊野酸性岩類由来と考えられる礫を含み,潮岬北西部の敷屋累層に含まれている礫岩層の特徴とは異なる.一方,久富(1981)は敷屋累層の上位にあたる三津野累層には熊野酸性岩が貫入することを記載したが,敷屋累層と熊野酸性岩の関係については言及がない.今回得た九龍島礫岩層の砕屑性ジルコンU-Pb年代値は14.9±0.6 Maであり,熊野酸性岩類のジルコンU-Pb年代(15.51±0.41 Ma~14.48±0.19 Ma:Shinjoe et al., 2021)と重なる.熊野酸性岩類由来の礫が含まれることを踏まえれば,九龍島礫岩層は敷屋累層よりも上位の層準に相当するとするのが妥当である.すなわち,九龍島礫岩層は敷屋累層より新しい時代の地層で,熊野酸性岩類と同時期,あるいはそれ以降のものであることを強く示唆する.
【引用文献】
荒牧・羽田(1965)地質雑, 71, 494-512.
広川・水野(1965)串本図幅, 地調.
久富(1981)地質雑, 87, 157-174.
池辺・他(1975)大阪自然史博研報, 29, 81-89.
三宅(1981)地質雑, 87, 383-403.
Shinjoe et al. (2021) Geol.Mag, 158, 1-25.
後(2009)三青, 37, 8-10.
九龍島(くろしま)は,和歌山県串本町の古座川河口から沖合約1 kmに位置する周囲約800 mの島で,主に礫岩層からなる.この島に分布する礫岩層を九龍島礫岩層と仮称する.
九龍島礫岩層は,広川・水野(1965)で熊野層群の“敷屋淤泥岩層”に属する地層と推定された."敷屋淤泥岩層"は久富(1981)の敷屋累層に相当すると考えられる.九龍島礫岩層には珪長質火山岩類の巨礫が含まれる.この火山岩礫が熊野層群近隣の潮岬複合火成岩類(三宅, 1981)もしくは熊野酸性岩類(荒牧・羽田,1965)に由来するものであるなら,九龍島礫岩層は熊野層群の堆積時から紀伊半島の中期中新世火成活動に至る過渡期の環境変化を推定する上で,重要な情報を含むことになる.しかし,九龍島礫岩層については化石等の年代を示す情報が知られておらず堆積年代は未詳である.
そこで,我々は許可を得た上で試料採取を行い,九龍島礫岩層に挟在する礫質砂岩層に含まれる砕屑性ジルコン粒子からU-Pb年代を測定した.その結果について報告する.
2.九龍島礫岩層の産状と珪長質火山岩礫
九龍島礫岩層は層厚40 m以上(後,2009)で,走向・傾斜がN50°W,14°Sである.礫岩層を構成する礫は細礫から大礫を主とし,下部には径1 mに達する巨礫が含まれる.基質は極粗粒砂である.露頭観察では基質支持もしくは礫支持の両方が見られる.堆積構造としてトラフ型斜交層理やインブリケーションが発達する層準がある.U-Pb年代の測定に先立ち,九龍島礫岩層に含まれる黒色泥岩の巨礫,黒色泥岩およびチャートの中礫から微化石の検出を試みたが,保存不良の放散虫化石が見いだされたのみで年代決定に至らなかった.
下部に含まれる巨礫の礫種は火山岩や泥岩,砂岩泥岩互層のブロックである.それらのうち火山岩礫は鏡下において流紋岩質火砕岩および流紋岩である.火砕岩にはフィアンメが含まれユータキシティック組織を確認できる一方,流紋岩には微花崗岩質の石基に径2 mmを超える斑晶(石英・黒雲母・カリ長石)が含まれるものと,流理組織の発達したガラス質の黒曜岩からなるものがある.いずれも熊野酸性岩類に見られる岩相と酷似する.
3.礫質砂岩層の砕屑性ジルコンU-Pb年代
U-Pb年代測定のため,九龍島礫岩層に挟在する礫質砂岩層の一枚から試料を採取した.この砂岩層は厚さが最大35 cm,水平方向の長さは約1 mである.U-Pb年代測定については,粒子の抽出から年代測定までを(株)京都フィッション・トラックに依頼した.
測定の結果,分析した60個のジルコンのうち,57粒子がコンコーダントと判定された.これら粒子のうち,2500 Ma台~1800 Ma台を示すものが10粒子,360 Ma台~130 Ma台が8粒子,110 Ma台~60 Ma台が28粒子, 30 Ma台~14 Maが11粒子である.最若粒子は14.4±0.4 Maで,この粒子を含め誤差1σで重複する粒子が3粒子存在し,これらの加重平均14.9±0.6 Maが最若粒子集団年代である.この年代は中新世ランギアンに相当し,熊野層群敷屋累層の堆積年代(浮遊性有孔虫のN8帯上部:中期中新世:池辺ほか, 1975)と誤差の範囲で重なる.
4.考察とまとめ
広川・水野(1965)は九龍島礫岩層が熊野層群敷屋累層に相当すると推定したが,九龍島礫岩層は熊野酸性岩類由来と考えられる礫を含み,潮岬北西部の敷屋累層に含まれている礫岩層の特徴とは異なる.一方,久富(1981)は敷屋累層の上位にあたる三津野累層には熊野酸性岩が貫入することを記載したが,敷屋累層と熊野酸性岩の関係については言及がない.今回得た九龍島礫岩層の砕屑性ジルコンU-Pb年代値は14.9±0.6 Maであり,熊野酸性岩類のジルコンU-Pb年代(15.51±0.41 Ma~14.48±0.19 Ma:Shinjoe et al., 2021)と重なる.熊野酸性岩類由来の礫が含まれることを踏まえれば,九龍島礫岩層は敷屋累層よりも上位の層準に相当するとするのが妥当である.すなわち,九龍島礫岩層は敷屋累層より新しい時代の地層で,熊野酸性岩類と同時期,あるいはそれ以降のものであることを強く示唆する.
【引用文献】
荒牧・羽田(1965)地質雑, 71, 494-512.
広川・水野(1965)串本図幅, 地調.
久富(1981)地質雑, 87, 157-174.
池辺・他(1975)大阪自然史博研報, 29, 81-89.
三宅(1981)地質雑, 87, 383-403.
Shinjoe et al. (2021) Geol.Mag, 158, 1-25.
後(2009)三青, 37, 8-10.
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