Presentation Information
[T16-P-22]Origin and Transport of Beach Sand at Shirahama Beach in Shimoda, Izu Peninsula
*Jun KATO1, Izumi Sakamoto2 (1. Graduate School of Science and Technology, 2. School of Marine Science and Technology, Tokai University)
Keywords:
Shirahama Group,Harada Formation,Calcareous clastic rock,Longshore sediment transport,Northeast winter monsoon / "Narai" wind
静岡県下田市に位置する白浜海岸は、本州の一般的な海岸と比較して極めて明度(白さ)が高い砂浜として知られている。本邦の多くの砂浜は、背後の山地から河川を通じて供給される石英や長石、泥岩片などの陸源砕屑物から構成されるが、白浜海岸における砂の具体的な供給源や、季節風および沿岸流に伴う砂の移動メカニズム、現世における砂の供給・消失バランスについての検証は十分に成されていない。本研究では、白浜海岸周辺の漂砂の起源を特定し、地域特有の風況特性と連動した現世の砂の移動・流出動態を明らかにすることを目的とした。調査地域である伊豆半島南部は、フィリピン海プレート上の海底火山群および火山島が本州へ衝突・隆起したことで形成された地質構造を持つ。下田市白浜周辺の地質的骨格をなすのは、鮮新世前期(約500万年前〜300万年前)にかけて堆積した白浜層群原田層である(茨木, 1976; 松本ほか,1985)。原田層の分布範囲は、下田市周辺から東部の白浜・原田地区を中心とした伊豆半島南部に広がる。本層の岩相は、主に白色から淡黄緑色の火山礫凝灰岩、凝灰角礫岩、および石灰質砂岩から構成される。特に白浜海岸周辺の露頭では激しい潮流や波浪環境を示す顕著な斜交層理が観察され、大型有孔虫のLepidocyclinaなどのほか、貝類、サンゴ、ウニなどの生物殻化石片を含む点が特徴である。本研究の調査対象地は、北端を板戸地区梶浦から南端を板見港とする沿岸域とした。砂の起源および移動特性を特性するため、白浜海岸を中心に海域へ接続する流入河川、海岸に隣接する岩場、砂浜の数ヶ所において地質サンプル(主に砂質堆積物)を採取し、これらの試料について薄片観察による300個体の粒子組成カウントを実施した。また、地域特有の風向・風速特性を把握するため、白浜神社から西南西約300mの高台(標高約37m)に風況観測機を設置し、1年間にわたる連続気象データを取得することで、風が砂の動態にもたらす影響を検証した。さらに、沿岸における供給源の広がりを確認するため、海岸線に沿って地質踏査を行い、石灰質岩片の露頭分布の連続性を追跡した。粒子組成分析の結果、すべてのサンプリング地点において、有孔虫や貝殻片などの生物起源の石灰質殻片が多く含まれていることが確認された。また、海岸へ流入する河川の河口付近で採取された試料と、それ以外の海岸地点で採取された試料との比較において、鉱物・粒子組成に顕著な差異は認められなかった。海岸線の地質踏査においては、海浜砂の主たる供給源と目される原田層石灰質岩片の露頭は、白浜神社から北へ約1kmの地点においてその分布が板戸安山岩類に移行していることが確認された。これらの事実は、当該エリアの海浜堆積物が河川からの土砂供給によるものではなく、海岸付近に局所的に露出している火山岩片や鉱物片を含む石灰質砕屑岩類が、波蝕によって細粒化されることで砂浜を構成していることを示しており、その供給量はごくわずかだと考えられる。白浜海岸の南側約500mに隣接する板見港周辺には土砂を供給する流入河川が存在せず、また背後の地質的にも、砂の供給源となる石灰岩が分布していないが、板見港の砂と白浜海岸各地の砂の粒子組成が一致することが判明した。また、高台に設置した風速計のデータからは、年間を通じて北東方向の風が卓越しており、特に春と秋にその傾向が顕著であることが分かった。 気象観測データから明らかになった北東の季節風(地域で「ならいの風」と呼ばれる卓越風)は、東〜南東に開いた白浜海岸の地形において、沿岸漂砂量が最大となる入射角35°〜45°の条件を高い頻度で満たしている。さらに、板見港の港口(開口部)が北向きに開いているため、この北東風と沿岸流によって北から南へと移動(南下)してきた砂を効率的に捕捉しやすい構造となっている。 以上のことから、白浜海岸の砂は板戸〜白浜神社地区に分布する原田層が波食により形成され、卓越する北東の季節風とそれによる沿岸流によって「北から南へと移動」しており、本来は限定的な供給量で維持されている海岸の砂の一部が、南側へ流出及び捕捉されている可能性が示された。今後も風況変化が海岸地形に与える影響や堆積物移動の解明に向けた調査を多角的に継続していく予定である。 【引用文献】茨木雅子(1976):伊豆・白浜層群原田層の浮遊性有孔虫について.静岡大学地球科学研究報告2,1-7松本 良・片山 哲哉・飯島 東(1985): 伊豆半島南部下田周辺の地質の再検討 —堆積盆の変遷,火成活動と熱水変質作用. 地質学雑誌91, 43–63
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